数日後、結果発表
「試験の結果を発表する。ネリエス・セレイン……合格だ。ただし、登校しなかった期間分の補習は受けてもらう。いいな?」
「はいっ! ありがとうございます!!」
実技試験から数日後、試験結果発表の日を迎えたネリエスは、ウノから合格を伝えられて笑顔で彼へと頭を下げていた。
無事に退学を回避できたことを喜ぶ彼女へと、ユーゴたちも拍手と共に賞賛の言葉を贈る。
「やったな、ネリエス!」
「ありがとうございます! ユーゴさんたちが力を貸してくださったお陰です!」
「それ以上に、ネリエスさん自身の努力が実った結果だと思います。今日までの頑張りが報われて、本当に良かったです」
拍手をしながらネリエスを褒め称えるユーゴとミザリーへと、満面の笑みを向けるネリエス。
そんな彼女の肩を叩きながら、ヴェルダとピーウィーが口を開く。
「あんたにはまた世話になっちまったな。こっちのゴタゴタに巻き込んじまったし、ありがたいやら申し訳ねえやらでなんて言ったらいいかわかんねえや」
「ネリエスの説得から特訓まで、力になってくれてありがとう。本当に感謝しているわ」
「気にしないでくれよ。困ってる人に手を貸すのはヒーローとして当たり前のことだし……助け合うのが
バチーン、と慣れないウインクをしつつ、サムズアップするユーゴ。
本気なのかおどけているのかわからない彼の反応を笑った後、ネリエスが口を開く。
「ユーゴさん……本当にありがとうございました。あなたがいなかったら、私は退学になっていたと思います。無事に学園に残れるようになったのも、全部あなたのお陰です」
「そんなことねえよ。ミザリーも言ってたけど、ネリエス自身の努力の結果だって! その証拠に、最高の魔法を習得できたじゃねえか!」
「えっ……? 魔法、ですか……?」
ユーゴの言葉に、きょとんとした表情を浮かべるネリエス。
確かに訓練は頑張ってきたが、新しく魔法を習得した覚えなんてないような……と考える彼女に対して、笑顔を浮かべたユーゴがその答えを告げる。
「お前はちゃんと覚えたよ、勇気っていう最高の魔法をな」
「勇気……?」
「そうだ! ネリエスが勇気を出して囮になってくれたからこそ、魔鎧獣に勝つことができた。他にも沢山、勇気を出して一歩踏み出したことがあっただろ?」
ユーゴにそう言われ、ここしばらくのことを振り返ったネリエスが小さく頷く。
弱音を吐き出したことも、引きこもっていた部屋から外に踏み出したのも、ミザリーとこの先のことを約束したのも……確かに、勇気を出したからそうなったのかもしれない。
その一つ一つの出来事が自分の力になり、この結果を引き寄せてくれた。そう考えたネリエスは、ユーゴの言っていることの意味がわかったような気がした。
「怖くても、一歩踏み出す勇気を持つ……これ、滅茶苦茶大変なことなんだぜ。マージ・マジ・マジーデ! その大変なことができたネリエスは立派なヒーローだ! 格好良かったぜ!」
「はいっ! その……本当にありがとうございました!!」
深々と頭を下げて感謝の気持ちを言葉にして叫んだネリエスを見つめながら、ユーゴも思う。
自分が変われば世界が変わる……そんな言葉を残したヒーローがいた。
その言葉の通り、殻を打ち破って自分自身を変えたネリエスは、その変化を以て自身を取り巻く世界を変えてみせた。
きっとこれから、彼女は自分の道を歩いていくのだろう。
信じられる仲間と共に天の道を進んでいく彼女の未来に思いを馳せながら、絶対にその未来は明るいものになると確信しながら、大きく頷いたユーゴは、そこではたとあることを思い出す。
「あの、キャッスル先生。ちょっといいっすか?」
視線をネリエスからウノに向け、少し躊躇いがちに声をかけるユーゴ。
こちらを見やるウノへと、気になっていたことを質問する。
「シアンの奴はどうなったんですか? 処分とかなんとか、先生も言ってたでしょう?」
「ああ。フェイルならつい先日、正式に退学処分が決まった。警備隊の作戦を妨害し、犯罪者たちの手助けとも取れる行動をしたことに関して、かなり温情のある処分を受けたというのに、その騒動の余波が残っている内にこの始末だ。もはや、庇いようもないだろう」
元パーティメンバーたちへの復讐心を燃え上がらせ、ネリエスを陥れるために妨害行為を働いたシアンは、退学処分を下されたようだ。
ネリエスを退学にするつもりが、あべこべに自分が学園を追い出される羽目になった彼に対しては、因果応報という言葉を送るしかないだろう。
当然としか言いようのないシアンへの処分を聞いた戦巫女たちが、神妙な表情を浮かべながらそのことについて感想を述べる。
「エゴスに続いて、二人目でござるな。英雄候補と呼ばれる生徒が学園から放逐されるのは」
「ユイやフィーを傷付けたり、ライハを手籠めにしようとしたエゴスも大概だけど、今回のシアンと比べるとまだマシって思えるところに闇があるわね……」
「少し前の事件の時にはシアンさんの他にも男子が一緒にいた覚えがありますし、あの二人だけが変……ってだけで片付けられる状態じゃないですよね……?」
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