第一戦VSアラクロ!
紅の光が大きく弾け、中からブラスタを纏ったユーゴが姿を現す。
その光景に怯むアラクロへと、変身を終えたユーゴは一気に攻めかかる……ことはせず、まずネリエスへと声をかけた。
「さあ、ネリエス。あいつらをどう料理する?」
「そうですね……」
これがネリエスの判断力や動きを見るための試験であると理解しているユーゴは、自分の動きを全て彼女に任せることにした。
ユーゴから問いかけられたネリエスは、アラクロたちが先の光景に警戒して動かずにいる様を見て、十分に考える時間があることを確認してから思考し始める。
今、この状況で、何よりも優先してすべきことは……と考えたネリエスは、まずユーゴへとこう質問した。
「ユーゴさん、力が入らないとか、動きが鈍いとか、体にそういう異常はありませんか?」
「特には感じねえな。普通……って感じだ」
「攻撃力と素早さに弱体化はかかってない。まだ魔法をかけられてないか、防御力が落ちてるパターンですね」
まずは仲間の状態を確認することが優先だ。作戦を立てるためにも、ユーゴにデバフがかかってないかを確かめ、その上で考えなければならない。
敵に気を取られ、そちらばかり気にしていたせいで仲間の異変を見逃すなんてのは言語道断だと……ここまでの訓練の中で、実戦においても冷静さを失わずにいることを学んだネリエスは、優先事項を間違えずに済んだ。
そんな彼女へとユーゴが自分の状態を答えれば、それを踏まえた解答をネリエスが出してみせる。
考えを声に出してコミュニケーションを取ることで、作戦を立てやすくした彼女は、杖を構えながらユーゴへと言った。
「攻撃力強化の魔法をかけます! あの程度の相手なら、ユーゴさんの敵じゃありません!」
「攻撃は最大の防御、ってことだな! わかった!」
訓練の中で戦い続けたユーゴの実力は、身に染みて理解している。
アラクロ程度、彼の敵ではない。ウノもそれを理解しているだろうし、ここは小手調べ程度の気持ちで彼らを召喚したはずだ。
ならば、無駄に魔力を使わず、最低限の強化だけで戦いを切り抜けた方がいい。
アラクロを倒した後も、あと二回の戦いが残っている。ここで全力を出すことは避けるべきだ。
そういった考えの下、アラクロを一撃で仕留め、相手からの攻撃を受けないことを前提とした立ち回りを決めたネリエスに同意したユーゴは、彼女からの援護を得て今度こそ敵の群れへと突っ込む。
「ブラスター・パァンチッ!!」
「ゴギャッ!?」
迷うことなく目の前の一体に魔力を込めた拳を叩き込むユーゴ。
強烈な一発をモロに喰らったアラクロは背後に吹き飛ぶと共に魔力の粒子となって砕け散る。
突然の事態に驚き、動けないでいる魔鎧獣たちに対して、続けて手刀とキックを繰り出したユーゴは、瞬く間にアラクロを殲滅してみせた。
「よしっ! 順調、順調!」
「ふっ……! アラクロの相手程度では、ユーゴにとっては肩慣らしにもなるまい。せめてもう少し数を出すべきだったな」
戦いを見守っている仲間たちもあまりにもあっさりとアラクロたちを倒した二人に声援を送っている。
危なげなく最初の戦いを制した二人を監督室から見守るウノは、頷きを見せると共に小さく呟く。
「やはり、この程度では相手にならないか。では、これならどうだ?」
管制室に指示を出し、次の相手を召喚させるウノ。
ややあって、演習場内に光が噴き出すと共に、それが魔鎧獣の形を作っていく。
たった一体だけだが、アラクロとは比べものにならないサイズ感。小型の魔物よりはるかに大きいそれが弾けた時、中から武骨な岩に覆われた牛の魔物が姿を現した。
「ブモオオオオオオオオオオオオッ!!」
「ブルゴーレム……! 一気に難易度が上がったな!!」
「見るからに力が強そうな魔鎧獣ね。とても大きい……!!」
「でも、兄さんならあの魔鎧獣にだって負けないよ!!」
二番目の相手はミノタウロスとゴーレムが合体して誕生した魔鎧獣、ブルゴーレム。
以前に一度戦ったことのある相手だが、そのパワーと防御力は驚異的だ。
それでも、ユーゴならば苦戦するような相手ではないと、そう考える一同であったが、ここで腕輪のハンデが発動する。
「うっ? おお……っ!?」
「ユーゴさん、どうかしましたか!?」
「体に力が入んねえ……! これが腕輪のデバフか……?」
握り締めた拳にも、それを振るう腕にも、妙に力が入らない。
腕輪を通じて弱体化の魔法がかけられたことを理解したユーゴの姿と、彼と相対するブルゴーレムを順番に見つめたネリエスは、背中に冷や汗を流しながら呻く。
「パワーと防御に優れたブルゴーレムを相手に、攻撃力が落ちたユーゴさんと戦わなくちゃいけない……結構、いやらしいことをしてきますね」
強靭な肉体を持つ上に、岩の鎧を身に纏ったブルゴーレムを、力が抜けたユーゴと戦わなくてはならない。
真っ向からの力比べは間違いなく不利。仮に攻撃を当てられたとして、今のユーゴの力ではあの硬い鎧を貫いて直接肉体にダメージを与えられるとは思えない。
なかなかに相性を考え、困難な状況を作り出してくれたなと考えるネリエスであったが、打開策がないわけではない。
即座にこの状況を打破する方法を思いついた彼女は、ユーゴへとその案を叫んだ。
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