(特訓)後はお風呂でのんびり~と!

「いや~! やはり、訓練の後の湯浴みは染みるでござるな~!!」


「サクラ、その発言、年寄り臭いわよ」


「ちぇ~! 思いっきり暴れて気分すっきりって顔しちゃって~! いいな~!! 私もユーゴと勝負したかったな~!!」


 その日の夕方、訓練を終えた女性陣は揃ってバスタイムに興じていた。

 湯船に浸かりながらのサクラの発言にセツナとメルトがツッコミを入れる中、ネリエスは周囲に気圧されて膝を抱えている。


 できる限り存在を感知されないように体を丸まらせ、湯船の端っこで意気を潜めている彼女がこんなふうになっている理由は単純明快、の差だった。

 このサイズというのは身長という意味ではない。確かにネリエスは女子の中でも小さい方だが、今回彼女が警戒しているのは、また別の部分であった。


(みんな、大き過ぎません……? 何を食べたらあんなふうになるの……?)


 サクラも、セツナも、メルトも、みんな。体の一部分(あるいは上と下の二か所)が非常に大きい。

 いや、メルトが大きいのはわかっていたし、サクラも近くで見ていたから大きいこともわかっていた。

 しかし、脱いだ時の迫力というか、破壊力がこれほどのものになるだなんてのは想定外だ。


 想定外といえばセツナもだ。彼女はの人間だと思っていたのに、脱いだら大きくなるってどういうことなのだろうか?

 自分と同等のレベルのピーウィーも反対側で死んだ目になりながら何も言わずにいるし……思うことは一緒なのだろう。


 と、そんなことを考えるネリエスの前に、最大級の破壊力を持つ女が姿を現す。


「あ~、くっそ。体がバキバキだよ。こっちのデカい風呂でのんびり体を休ませてもらうとするかねぇ……」


「おぅふ……!?」


 そう言いながら首を回すアンヘルを見たネリエスの口から、何とも言えない呻きが漏れる。

 上も下も十分に大きいメルトたちよりもさらに大きい彼女のプロポーションは、音にするとドカンッ! ギュッ! ドッカン! だ。


 そりゃあ、そんな大きなものをお持ちならば肩も凝るでしょうね……と口から出掛かった言葉を必死で飲み込むネリエスの前で、アンヘルが気持ち良さそうに湯船に浸かる。


「はぁ~……♥ 極楽、極楽ぅ……♥」


「……なんだか不思議とサクラより色っぽいわね」


「普段の言動はアンの方が男っぽい感じがするのにね」


「おい、聞こえてるぞ。喧嘩を売ってるなら買ってやろうか? あぁ?」


「何気に拙者も刺してないでござるか? 二対二の団体戦で勝負するでござるか? ん?」


 大きなおっぱいってお湯に浮くんだなとか、大きいとやっぱり揺れるんだなとか、そんなことを目の前の光景から学ぶネリエス。

 ここまで見事な面々が揃っていると、これも全部ユーゴの趣味なのかなとか思ってしまう。


 女癖が悪いと評判のユーゴのことだし、彼女たちにも既に手を出しているのだろうか?

 いやしかし、今日、彼は自分にもミザリーにもそんな素振りを見せなかったし、あの評判も何かの間違いだということなのだろうか?


 ……あるいは、自分もミザリーもだから、彼の守備範囲から外れているだけなのかも……と悲しいことを考えるネリエスへと、静かに近寄ってきたライハが声をかける。


「あの、ネリエスさん……少し、よろしいですか?」


「はっ!? あっ、はい……!? な、なんでしょう……?」


 いきなり声をかけられてまず驚き、戦巫女に名前を呼ばれたことで重ねて驚き、ライハの胸を見て三度驚く。

 なんでこの人、自分より背が低いはずなのに胸は大きいんだろうと、小さいのに大きいって不平等じゃないかと、そう神を呪いかけたネリエスへと、ライハが言う。


「こんなことを急に言われても戸惑うだけかもしれませんが……あまり、リュウガさんのことを怖がらないであげてくださいね。扉を壊したのも、色々と考えがあってのことですし、ネリエスさんに悪いと思っているみたいですから……」


「あ、はい……」


 昨日、自室の扉を綺麗に四等分にしてくれたリュウガのことを思い出しながら、ライハの言葉に頷くネリエス。

 本音を言えば、何を考えているかわからなくて結構怖いのだが……VIPである彼女の頼みを拒むわけにもいかないネリエスは、少し怯えながらも了承すると共に、ライハへと質問を投げかける。。


「あの、つかぬことをお聞きしますが……ウツセミさんとレンジョウさんは、許嫁かなにかなのでしょうか……?」


「え? ……いえ、そんな関係ではありませんよ。私にはリュウガさんに一生かけても返しきれないくらいに大きな借りがある……ただ、それだけなんです」


 笑うとも困るともいえない、複雑な表情を浮かべてそう答えるライハ。

 もしかしなくともこの話題は地雷だったと、不用意な質問をしてしまったことに一気に緊張するネリエスであったが、そんな彼女をフォローする助け船が現れた。


「そんなに気にしないでください。お兄様も、ライハさんの存在に救われている部分があると思いますから」


「ユイさん……」


 気分を沈ませるライハへとそう言ったのは、上級生の寮に遊びに来たユイだ。

 目を閉じたままの彼女にも色々な事情があるのだなと、そう思うネリエスの前で、彼女はライハへと話を続ける。


「お兄様はただ、ライハさんにどう接すればいいのかがわかっていないだけなんです。今まで本心を隠して生きてきたから……本音を出すのが苦手なんですよ。私を相手にしてる時だってなかなか本音を出さないんですもの。唯一の例外はユーゴさんくらいですしね」


「………」


 なんとなくではあるが、この二人の間にも複雑な関係があることがわかった。

 部外者の自分が割って入るような話題ではないなと感じ取ったネリエスは、静かにライハとユイから離れていく。


 そうして逃げた先にかつルームメイトのミザリーの姿を見て取ったネリエスへと、彼女が声をかけてきた。

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