side:シアン(追放ざまぁ系を夢見ていた男の話)
「くそっ……! あいつら、なに楽しそうにはしゃいでやがる……!!」
こっそりと物陰に隠れながら、訓練を行うネリエスたちを見ているその人物は、先日彼女たちから絶縁を言い渡されたシアンだ。
自分を見捨ててパーティから脱退したメンバーが楽しそうにしている姿を恨みつらみを込めた目で見ている彼は、吐き捨てるように怨嗟の呟きを漏らす。
「ふざけやがって……!! よりにもよってあのクズとつるんで仲良くしてんじゃねえよ……!!」
折角、自分が目をかけてやったというのに、これまでいい思いをさせてきてやったというのに、その好意を無下にしてパーティを抜けたことだけでも、シアンとしては許し難い怒りを覚える。
それだけでも許せないというのに、これまで何度も自分の邪魔をしてきたユーゴと絡み、何か楽しそうにしているだなんていうのは、彼にとって裏切りを超えたより腹立たしい行いであった。
(主人公をパーティから追放した連中ってのは、後で自分たちの愚かさに気付いて後悔するのが王道のパターンだろうが! 何を俺抜きでも戦えるように訓練してやがるんだよ、あいつらは!?)
前世で好んで読んでいた異世界ものの作品、その中でも人気だった『追放ざまぁ』系の作品の内容を思い返しながら思うシアン。
そういった作品では、パーティの要として人知れず尽力していた主人公を他のパーティメンバーが追放し、その後で自分たちが軽んじていた主人公の力を理解して、後悔するというのが定番だった。
今の自分はそうやって追放された主人公の立場そのものだ。
あのパーティは、【ルミナス・ヒストリー】というゲームの知識を十全に持つ自分が指揮していたからこそ、実力を発揮できていたのだと……彼らがそのことを理解し、自分に戻ってきてほしいと懇願する日がくると、シアンは信じていた。
その時には、より強いパーティを組んだ自分がかつて読んでいた作品の中の主人公たちのように「もう遅い!」と言ってやるつもりだったのだが……今、状況は彼の予想を大きく外れた展開を見せている。
自分抜きじゃどうしようもないパーティが、自分を抜きにしても戦えるようになるための訓練を積んでいる様を見ていると、自分が本当に不要になったのだと言われているようで、惨めな気持ちになった。
ゲームのキャラであるネリエスたちを見下していたシアンであったが、今の自分が明らかに彼女たちよりも下に位置していることを自覚しそうになる度に、首を振ってその現実を認めることを拒み続けている。
「ふざけるな。お前らが、俺より上にいていいはずがねえんだ……!」
ネリエスだけじゃない、ユーゴだってそうだ。
あのクズは序盤で主人公に負けて、そこから転落していくだけの悪役。それがどうして、ヒロインたちに囲まれて楽しそうに過ごしている?
自分を追い出したパーティの連中共々、彼らは主人公あっての存在として踏み台にならなくてはならないはずだ。
ただのゲームキャラが、主人公である自分を無視して楽しく過ごすなど、絶対にあってはならないことだと……視線の先にいるユーゴたちを睨んだシアンは、怒りと憎しみを込めた声で彼らへと呟く。
「絶対に許さねえ。お前らみんな、不幸にしてやる……!」
このままネリエスが復活する未来なんて認めない。ユーゴだって、とっとと本来のように誰からも見捨てられて転落していく人生を送るべきだ。
主人公である自分だけが不幸になるなんて、自分が認めた展開以外のルートを進むなんて、絶対に認めない、許さない。
グツグツと煮え滾る怒りと、憎しみと、嫉妬の感情を心の内に秘めながら、シアンは仲間たちに囲まれるネリエスとユーゴを見やる。
絶対に……あいつらに思い知らせてやると、自分を蔑ろにした罪の重さを理解させてやると、主人公としてのちんけなプライドを奮わせながら、シアンは自分本位な想いを胸に、動き始めるのであった。
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この小説とは全く関係ないんですけど、先日「王様戦隊キングオージャー」が最終回を迎えましたね。
マジで面白かった……!スケールの大きさが歴代随一で、最終章は半端ない面白さでした。
プリキュアの新作も始まりましたし、ガッチャードも新フォームが出て大盛り上がりの最中。やっぱりニチアサヒーローは……最高やな!!
あと、自分の記憶が正しければ、本日【ニコニコ漫画】さんの方でコミカライズの第七話(後編)が更新されるはずです!(11時頃だったかな?)
いっぱいコメントが貰えて嬉しい!という気持ちで一緒に楽しんでおりますので、よろしければそちらのチェックもお願いします!
単行本一巻も大好評発売中なので、まだの人は買ってね!!(醜い宣伝)
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