大変!パパたちが来た!!

大変!学園に鎧武者!?

「兄さんが無事に退院できて本当に安心したよ。一時はどうなるかって、心配だったからさ……」


「ごめんな、フィー。流石に今回は無茶し過ぎた、反省してるよ」


 ザラキとの戦いから暫しの時が流れ、学園に平穏が戻ってきた頃、ユーゴはフィーと中庭のテラスで軽食を取りながら話をしていた。

 驚異的な回復力を見せた彼は医者たちが想定日を大きく早めて全快し、後遺症もなく元気いっぱいに日々を過ごしている。


 ただまあ、それはあくまで結果論。そもそもフィーたちを悲しませるようなことをすべきではなかったとユーゴは反省している。

 『誰も悲しませないヒーローになる』という目標から外れた行動だったし、仕方がなかったとはいえ、無茶は禁物だなと考える彼へと、フィーが言った。


「あとはリュウガさんだね。順調に回復しているとはいえ、まだ退院まで時間がかかりそうだし……」


「まあな。でも、大丈夫だよ。俺もそうだったけど、あいつも大概化物みたいな回復力してるからさ」


 ユーゴよりも重傷だったリュウガに関しては、まだ少し治療が必要とのことだ。

 ただ、彼もユーゴ同様にどうしてあの体で動けていたんだと医者から言われるレベルで頑丈というか、ユーゴほどではないが信じられない回復力をしており、「君たちはどういう体をしているんだ?」と医者からも疑問を呈される始末である。


 そう時間をかけず、彼も退院するだろうと……相棒が戻ってくることを心待ちにしながら弟との会話を楽しんでいたユーゴであったが、その耳に生徒たちがざわつく声が響いた。


「ん? なんか騒がしいな……」


「どうしたんだろうね?」


 妙な騒がしさにフィーも気付いたらしい。兄同様、不思議そうな顔をしながら声のする方へと顔を向けている。

 そんなふうに兄弟が異変を察知する中、続いて大きな足音が遠くから響いてきた。


「おいおい、なんだ!? まさか、また事件か!?」


 徐々にこちらへと近付いてくる大きな足音は、どう考えても人間のものではない。

 まさか、また魔鎧獣が学園に侵入してきたのかと……嫌な予感を覚えたユーゴであったが、そんな彼の想像の斜め上をいく出来事が起きる。


「にっ、兄さん! あれを見て!!」


「えっ! ええ~っ!?」


 フィーが指差した先を見れば、そこには大きな馬に乗ってこちらへと迫る大柄な鎧武者の姿があるではないか。

 猛スピードで駆ける馬を悲鳴を上げながら避ける生徒たちには目もくれず、鎧武者はこちらへと突っ込んでくる。


「よよよ、鎧武者ぁ!? えっ!? そんなバナ、バナナ、バナナぁ!?」


「兄さん、冗談を言ってる場合じゃないって!!」


「確かに! 鎧武者ならバナナじゃなくてオレンジだな!」


「兄さん!? 本当になに言ってるの!?」


 全くもって何一つとして状況ができないユーゴの叫びに対して、慌てたフィーがツッコミを入れる。

 それでも錯乱し続けるユーゴであったが……次の瞬間、誰もが予想していなかった事態が発生した。


「その赤髪……貴様がユーゴ・クレイだな!! ようやく見つけたぞ……!!」 


「えっ? ええっ? お、俺ぇ!?」


 馬を止めた鎧武者が、ユーゴの方を向きながら大声で唸る。

 彼から名指しされたユーゴは、多いに困惑しながらも馬から降りてこちらへと近付いてくる鎧武者へと問いかけた。


「あの、どちら様でしょうか!? というより、俺に何かご用でしょうか!?」


「問答無用! 俺と立ち会え、ユーゴ・クレイ!!」


「うえええええええっ!?」


 そう言った鎧武者が背負っていた大太刀を引き抜き、上段から振るう。

 ユーゴがフィーを抱えて飛び退く中、二人の間にあったテーブルを一刀両断した彼は、ギロリと鋭い視線を向けながらなおも迫ってきた。


「フィー、下がってろ! どうやら話の通じる相手じゃなさそうだ!」


「わ、わかった! 気を付けてね、兄さん!」


 面頬で顔を隠しているが故に、鎧武者の表情から感情を読み取ることができない。

 どうして彼が自分に勝負を仕掛けてきたのかはわからないが、このままでは弟や他の生徒たちに被害が出る可能性があると考えたユーゴは、逃げることを止め、ブラスタに魔力を込めながら拳を握り締めた。


「変、身っ!!」


 強く拳を握り締めた後、大きく腕を振っての派手なポーズ。

 敢えて変身に時間をかけることで弟たちが避難する余裕を作ったユーゴは、黒鉄の鎧を纏うと共に近くにあったナイフを手に取ると、それを変化させた剣の切っ先を向けながら言う。


「同じ鎧使いってところに親近感を覚えなくもないが、流石にこのまま暴れられちゃ困るからな! 来いよ! ギリギリチャンバラ、相手してやるぜ!!」

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