爆弾回収作戦!
「爆弾を除去できれば、脱出できる可能性があるんですね?」
「ああ……しかし、今、この病院内のどこに、いくつの爆弾が生成されているのかもわからないんだ。除去のしようが――」
「大丈夫です。爆弾の個数と位置なら、調べられますから」
そう言った後、ライハが病院の床に手を当てる。
右手の掌を床に置き、瞳を閉じたライハが深く息を吐いた瞬間、ユーゴはピリッとした痺れを感じ、体を震わせた。
「今のは……?」
「病院内に微弱な電気を走らせて、内部の状況を確認しているのよ。この混乱した状況だとそこまで詳細な状況はわからないかもしれないけど、魔力が凝縮されている場所くらいなら調べられるはずよ」
ライハが何をしているかを察したセツナがユーゴの呟きに反応して説明を行う。
電気を使ったレーダーのようなものかと、セツナの解説を受けて何となく理解したユーゴが頷く中、目を開けたライハが確認した情報を全員へと共有した。
「爆弾の数は十個。その内一つは回収してあるので、残りは九個です」
「位置は? 特定できたのか?」
「はい。式神を用意して、爆弾がある地点まで案内させます」
そう言いながら、制服の内側に手を入れたライハが、人の形をした紙を数枚取り出した。
彼女がその紙に魔力を込めれば、命令を与えられた彼らはパタパタと手足を動かし始める。
「よし、爆弾は残り九個っすね? じゃあ、俺が回収してきますよ」
「ユーゴさんお一人では負担が多過ぎます。私も同行させてください」
「いや、ウツセミさんにはここに残ってもらって、避難する人たちを守ってもらいたいんです。さっき戦った茨の魔鎧獣がここに来ないとも限りませんし……」
避難する人々の護衛をライハに任せて単独での爆弾回収に向かおうとするユーゴであったが、彼女はたった一人で行動しようとする彼のことを心配しているようだ。
しかし、この状況では他に方法は……とユーゴが考える中、二人に向かって声が響く。
「ちょっと待て! 動ける奴なら、他にもいるぜ!!」
「ん? お前らは……?」
その声がした方にユーゴたちが顔を向ければ、ルミナス学園の制服を着た大柄な男子と目付きの鋭い女子の二人組が目に映った。
声をかけてきたと思わしき男子は、ユーゴたちへと近付きながら話を続ける。
「あんたと同じルミナス学園の一年生、ヴェルダだ。こっちはピーウィー、同じくルミナス学園の一年だ」
「おお、どっかで見たことがあったと思ったら、学園の生徒か!」
「あなたが活躍した昆虫館の事件で私たちも怪我を負ってね、入院中だったのよ。他にもルミナス学園の生徒たちは何人かいるわ」
「俺たちは病み上がりだが戦えないわけじゃねえ。爆弾の回収、手伝わさせてもらうぜ」
「本当か!? 助かるぜ!!」
助力を申し出てくれたヴェルダとピーウィーに感謝しつつ、破顔するユーゴ。
彼らの他にも入院中だった生徒がいるという話を聞いた一同は、十分な人員を確保した上で作戦を話し合っていく。
「人員を複数のグループに分けて、爆弾の回収に向かいましょう。道中、できる限りの戦闘は避けた方がいいわね」
「さっきみたいに顔面に爆弾が埋め込まれてる奴がいたら俺を呼んでくれ、相手をするぜ」
「回収した爆弾はここに持ってくるってことにして……ここにも護衛として何人か残しておいた方がいいよな?」
「式神に通信の機能も付与しておきます。何かあったら、この子たちに話しかけてください」
迅速に、そして的確に話し合いを進め、準備を進めていく一同。
彼らの会議を聞いていたジンバもまた、最終的な目標を伝えていく。
「爆弾の回収が終わったら、氷属性の魔法で巨大花の魔鎧獣を凍結させる! このサイズだと時間がかかるだろうが、活動を停止させれば救助も行えるはずだ!」
「了解だ、ジンバさん。あと、仮でいいからこの魔鎧獣の名前を決めておきましょうよ。花の魔鎧獣、だと中にいる小さいのと区別がつかないんで」
「ふむ、なら……この花の魔鎧獣はギガントローズ、小さな個体はフラワーモンスということでどうだ?」
「オッケー! その名前で区別をつけることにしようぜ!」
全ての準備が終えた一同が爆弾回収と病院からの脱出を目的に行動を始める。
移動を開始する寸前、待機班であるライハへと振り向いたユーゴは、彼女を真っ直ぐに見つめながら口を開いた。
「ウツセミさん、俺が離れている間、フィーとユイちゃんのことを頼みます」
「任せてください。それと……敬語は使わなくて結構です。名前も呼び捨てにしてください。こういう時は、簡潔に呼べた方がいいと思いますから」
「は……じゃなくて、おう。じゃあ、みんなのことは任せたぜ、ライハ!」
「はい!」
「兄さん、気を付けてね!!」
自分を見送るフィーたちに向けて、サムズアップを返すユーゴ。
式神に導かれながら、彼らはギガントローズが生み出した爆弾の実を回収するために動き始めるのであった。
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