side:シアン&エゴス(知識を基にろくでもない計画を立てた男たちの話)
「クソクソクソクソクソッ!! どうしてクズユーゴと巫女のフラグが立ってるんだよ!? っていうか、どうして俺らとフラグが立ってねえ!?」
「仕方がないだろう? ギガンテスを倒した奴は戦巫女たち全員からの高評価を得られるのはシアンくんだってわかってるはずだ。あいつがリュウガと一緒にギガンテスを倒しちゃったから、セツナの興味が向いちゃったんだと思うよ」
「でも、俺たちだって十分活躍して――」
「落ち着きなって。これはむしろ喜ぶべきところだろう? 俺たちの狙いはサクラとライハであって、セツナじゃあない。三人全員がユーゴに靡いたわけじゃなさそうだし、ランダムで一人選出されたのが俺たちが狙ってるキャラじゃなかったって部分はラッキーじゃないか」
それから暫くして、昆虫館の警備の仕事を始めたシアンは、先の一件についてエゴスに愚痴っていた。
セツナにフラれただけならまだしも、彼女がユーゴに興味を示しているという事実を受け入れられない彼に対して、エゴスはどこか達観した態度を取っている。
見た目の年齢は同じ高校生だが、中身が元ブラック企業所属のアラフォーである彼は、こういった時にも余裕があるのだろうなと……それにしては子供っぽくもあるエゴスの言葉にちっと舌打ちを鳴らしたシアンは、周囲を見回しながらこそこそと話を続けた。
「そう焦る必要はないって。俺の作戦が成功すれば、フィーが消える。そうなればユーゴも戦巫女たちとのデートどころじゃなくなるさ。フラグは、自然と折れる」
「まあ、そうだけどよ……その作戦、段取りは完璧なんだろうな?」
「ちゃんと説明したじゃないか。そんなに不安がる必要なんてどこにもないよ。上手くいくさ、絶対にね」
苛立ちから不安を抱くシアンを、能天気に励ますエゴス。
その軽い口調からは想像できないが、今から彼らは一人の少年を消そうとしているのである。
エゴスが発案したこの暗殺計画は、この昆虫館で起きるイベントを利用して行われるものだ。
転生者として、この先に何が起きるかを知っているからこそ立案できた計画だといえるだろう。
そして今現在、その作戦は上手くいっていた。
エゴスの言う通り、不安に思う要素がまるで見つからないほどに、だ。
今回の社会科見学自体の責任者は、本来高等部一年の主任であるウノが担当しているが……シアンたち警備のために派遣された生徒たちを取りまとめているのは、彼ではなくラミーであった。
これはこの社会科見学にユイだけでなく戦巫女の三人も参加していることが関係しており、その警備に関しては彼女が決定権を持っている。
そして……事前にこういう展開になることを知っていたシアンたちは、ラミーの好感度や信頼を稼ぐために動いてきたため、彼女に頼めば大体の要望は通るという状況を作り出すことに成功していた。
故に、それを上手く活用することで、シアンたちは自分たちが望む状況を作り上げているのだ。
初等部の生徒たちは幾つかのグループに分かれ、それぞれ引率の教師と数名の警備役の生徒を付けた状態で館内を見学している。
シアンとエゴスは、その中のフィーとユイがいるグループと一緒に動き、警備する役目を回してもらった。これで計画の第一段階は無事に完了だ。
戦巫女たちと共に行動できないのは残念だが、彼女たちとの仲は邪魔なユーゴを排除してからゆっくりと深めればいい。
そのユーゴたちもラミーに頼んでイベントが発生する地点から最も離れた位置に待機し、その近辺を見張る役目を押し付けておいた。
あとはただ、イベントの発生を待てばいい。そこからは、自分たちが思い描いた通りのステージの始まりだ。
何が起きるのかを事前に知っているからこそ、立てられる作戦がある……元ゲーマーが持つ、ゲーム知識という名の武器を存分に使うつもりのエゴスは、ニタリと笑うとシアンへと言った。
「そろそろ、話が動き出す頃かな? この後の展開が楽しみだね、シアンくん」
そんなエゴスの言葉に対して、シアンは何も答えない。
自分が言えたことではないのだろうが……どこまでも楽しそうにこの
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