合流、レンジョウ兄妹!

「遅くなってごめん。待たせちゃったね」


「別にそんな待ってねえよ。小さいこと気にすんなって!」


「おはよう、兄さん。今日は一緒に社会科見学に来れて、嬉しいよ!」


「ユーゴさん、おはようございます。今日はよろしくお願いしますね」


「おう、おはよう! しっかり挨拶できて偉い、偉い!」


 合流したリュウガたちとそんな会話を繰り広げたユーゴが快活に笑う。

 そうした後、彼は相棒に初対面の仲間たちを紹介していった。


「リュウガ、紹介するよ。こっちの不機嫌そうな奴がマルコスで、作業着を着てる赤髪がアンヘルだ。二人とも、メルトに負けないくらい頼りになる俺のダチなんだぜ」


「そうなんだね。はじめまして。僕はリュウガ・レンジョウ。こっちは妹のユイです。これからどうぞよろしくお願いします」


「ふんっ……! まあ、私は心が広いからな。ユーゴの最大の友であり好敵手として、貴様を歓迎しよう。これからよろしく頼むぞ、リュウガ!」


「アンヘル・アンバーだ。アンって呼んでくれ。アタシは他の奴らと違って工業科の生徒だから、関わりはその分少なくなっちまうだろうが……まあ、よろしくってことで」


 お互いに自己紹介を終えた後、握手を交わすリュウガたち。

 雰囲気としてはなかなかいい感じであることを見て取ったユーゴが安堵する中、リュウガが彼へとこんなことを言う。


「そうだ、ユーゴ。報告しなくちゃいけないことがあったんだ。フィーくんにはさっき話したんだが、ユイの面倒を見る役目を彼に任せたいと思っていてね。僕たちがチームを組んだように、二人にもできるだけ一緒にいてもらおうと思うんだ」


「フィーを、ユイちゃんに? いいのか? そういうのって女の子同士の方が色々と楽なんじゃ……?」


「そうでもないさ。女の子同士っていうのは、意外とドロドロしてるものなんだよ。フィーくんならそういった心配はないし、ユイも賛成してくれてる。兄弟同士だから情報伝達もスムーズにいくだろうし、いいことづくめだと思うんだけどな」


 そう言いながら自分に同意を求めてくるリュウガに対して、ユーゴは特に反対もせず頷いてみせた。

 兄であるリュウガと張本人である二人が賛成しているのなら、自分が口を出す必要もない。自慢の弟であるフィーならユイを悲しませることもないだろうし、悪い話ではないはずだ。


「ユーゴさん、フィー、お二人には兄妹揃ってお世話になります。特にユーゴさんには、お兄様がご迷惑をおかけすることも多々あると思いますが……どうぞよろしくお願いしますね」


「おいおい、僕はお転婆なお前がフィーくんに迷惑をかけるんじゃないか心配してるっていうのに、よくもまあそんなことが言えたもんだな?」


「まあ! お兄様ったら、かわいい妹のことを信用していませんのね? 私、とても傷付いてしまいましたわ!」


 クスクスと笑みを浮かべながらおどけてみせたユイの言葉に、全員がどっと笑い声をあげる。

 兄であるリュウガの言う通り、物静かなように見えて意外とお転婆な彼女の世話役を務めるのは大変そうだと思いながらも、ユーゴたちはその役目を任されたフィーへと激励の言葉を送った。


「リュウガ直々のご使命だけど、そんなに気負う必要はないからな。友達として、普通にユイちゃんと仲良く楽しく過ごすことを第一にな」


「う、うん。僕、頑張ってみるよ!」


「いや~、それにしてもフィーにもついに青春が訪れちゃったか~! お姉さんとしては、これまでみたいに気軽にからかえなくなって残念だよ」


「……アン、お前、大丈夫だよな? マルコスじゃねえけど、嫉妬に狂ってユイちゃんに手を出したりしねえよな?」


「おい、アタシをなんだと思ってるんだ!? そんな真似するはずがないだろうが!!」


「いや~……これまでのお前のフィーに対するあれこれを見てると、小さい男の子に手を出す危ない女としか思えないっていうか……」


「ほ~う? ユーゴはアタシのことをそんなふうに思ってたんだな? 上等だ。だったら今すぐお前をアタシの魅惑の谷間にご招待して、汗だくつなぎ服の女にしか興奮できない体にしてやる!!」


「おいやめろ!! 俺はそんな性癖を植え付けられたくねえし、ここにいる良い子たちに悪い影響が出るだろうが!!」


「そうだそうだ! ユーゴが変になりそうなことは止めろ~っ!!」


「ええい! 貴様ら、人に子供たちの前で醜態を見せるなとか言っておきながら、なんだその様は!? 私よりよっぽど問題のある行動をしているぞ!?」


「ふふふ……っ! ユーゴさんのお友達は面白い方たちばかりですね。魂の煌めきも、とっても素敵です!」


 普通に聞いていると笑える話ではないのだが、ユイにとってはこのやり取りも面白おかしく思えるもののようだ。

 微笑みながらユーゴたち一人一人の顔を見つめた彼女は、自分が感じ取った印象を彼らへと伝えていく。


「アンヘルさんはお茶目な方ですのね。マルコスさんは……気高さと誇りを感じます。最後のお一人は……お名前は伺ってませんが、もしかしてメルトさんでしょうか? ユーゴさんが恋人にするのもわかるくらい、魅力的なお方だというのが魂の輝きからわかります!」


「ほほう? なかなかの審美眼の持ち主だ! この私の高貴さに気付くとは、将来は立派な淑女になるだろうな!」


「きゃーっ! もう、ユイちゃんったら、お世辞が上手なんだから! 恋人にするのもわかるくらい魅力的って、きゃ~っ! きゃ~っ!」


 ユイに褒められてきゃっきゃと騒ぎ始めた仲間たちを見ながら、実に単純な奴らだと思うユーゴ。

 彼に言われたらおしまいな気がしなくもないが、そんなふうに騒ぐ一同へと近付いてくる二つの影があった。


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