2章・始動!ブラスタ改造計画!!
行ってみようよ工業科!
「う~ん……どうすっかなぁ……?」
住処であるルミナス学園中庭の片隅で腕を組み、ユーゴは悩んでいた。
視線の先にはこの一か月、共に激戦を潜り抜けてきた相棒である魔道具、ブラスタを展開するためのブレスレットがある。
実に難しい表情を浮かべている彼の左右にはフィーとメルトの姿もあり、二人も一緒に悩んでくれているようだ。
そんな二人の前で唸りを上げるユーゴは、改めてそれを手に取ると表情を変えぬまま口を開いた。
「今よりもっと強くなるためには俺自身の成長もそうだけど、ブラスタを改良していかなくちゃいけないっていうフィーの意見には俺も賛成だ。だけど、問題はそれをどうやるかだよな……」
「紫の鎧が発現したのも奇跡みたいな話だしね。これからもユーゴがブラスタを使い続けるとしたら、パワーアップは必須だって私も思うよ」
メルトの言葉に頷きを見せるユーゴ。
三人が悩んでいる理由、それは彼の魔道具であるブラスタの強化案についてだ。
少し前にラッシュが起こした事件。そこで魔鎧獣と化した彼と戦ったユーゴは、辛くも勝利を収めたわけだが……それは奇跡が起きた末のギリギリの勝利だった。
紫の鎧の発現がなければどうなっていたかわからない。そのことを考えると、やはり鎧の強化は必須と思えた。
「ラッシュを唆した黒幕の手掛かりはまだ何も掴めてねえ。いつ次の事件が起きるかもわからない状況だ。それに備えて、俺もブラスタもパワーアップしておかねえと……」
この街の裏ではまだ見ぬ悪が蠢いている。彼らはいつ動いてもおかしくないし、第二、第三のラッシュを生み出すべく行動している可能性だってある。
マルコスと交わした約束を守るためにも強くなる必要があると自覚しているユーゴであったが、その方法がいまいちわからずにいた。
「これ以上腕輪に内蔵する微粒子金属の量を増やしても大した強化にはならない。せいぜい修繕速度と剣を作る回数が強化されるくらいだ。性能を向上させる方法とは言い難いね……」
「フィーでもダメか。俺とメルトじゃあ魔道具の強化案なんて思いつかねえし、どうするかな……?」
自分たちの中で最も魔道具の改良に詳しいフィーですらその方法を思い付かないというのだから、これはもう完全にお手上げ状態だ。
だからといって諦めるわけにもいかないよなと考えるユーゴへと、ぽんと手を叩いたメルトが言う。
「よし! じゃあ、ここはその道のプロに相談しよう! 具体的には、工業科のみんなに会いに行こうよ!」
「工業科? そんなのがあるのか?」
「うん。僕もそれを提案しようと思ってたんだ。魔道具の強化や改造に関しては、工業科の生徒さんたちの得意分野だからね。専用の工房もあるし、僕なんかよりもずっとそういった知識に長けてる。兄さんが頼めば、力を貸してくれる人がいるかもしれないよ」
「専用の工房、魔道具の強化と改造だって……!? なんだそのワクワクが止まらないワードの連発はよぉ……!?」
メルトとフィーの話を聞くユーゴの脳内には、特撮ヒーローの変身アイテムや武器、専用マシンなんかを開発する工房の光景が広がっている。
子供のように目を輝かせる彼は、死ぬほどワクワクしていますと言わんばかりの表情を浮かべながら二人へと尋ねた。
「なあ! そこって巨大ロボとか作ってないか!? 合体ロボもいいと思うけど、個人的には単独変形型のロボも捨てがたいんだけどさ~!」
「いや、あの……兄さんが何を想像してるかはわからないけど、流石にそんなものは置いてないと思うよ……?」
「そうか……まあでも、乗り物とか武器とかすっげぇ物がいっぱいありそうだし、聞いてるだけで楽しくなってきたぜ! 心が躍るなぁ、フィー!!」
ちょっと悪役っぽい顔(そもそもが悪役フェイスなのでちょっとでも怖い顔をすると大変なことになる)をしながら、弟へと弾んだ声で語り掛けるユーゴ。
予想以上に期待に胸を膨らませているであろうその姿にフィーとメルトは困惑しているが、ユーゴはそんな二人の反応をよそに一人で盛り上がっている。
「よし! じゃあ、早速工房に行ってみようぜ! で、どこにあるんだ?」
「普通科のエリアにはないよ。隣の区域にあるから、少し歩くことになるけど……大丈夫?」
「当たり前だろ! まだ見ぬ素敵アイテムが俺を待っている! 楽しみで楽しみで仕方がないぜ!」
元気いっぱいのユーゴは工房を訪れる気満々のようだ。
まあ、最初からそのつもりだし、彼がやる気を見せてくれているのは嬉しいことなので構わないかと思いながら、フィーとメルトはユーゴを工業科の工房へと案内していく。
「あわよくばバイクとか作ってもらえねえかな……? やっぱ欲しいよな、移動用の乗り物。ああでも免許とか必要になるのか……?」
……その途中、何かぶつぶつと呟くユーゴがブラスタの強化という当初の目的を忘れているんじゃないかと不安になりながらも、二人はとりあえず彼を引き連れ、工房へと向かうのであった。
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