side:悪役(ヒーローは、今日も笑顔を守ってる)
「……行っちゃったね。明日から寂しくなりそうだ」
「少しの間だけさ。必ず戻ってくるって言ってたしな……それまでに俺も、やるべきことをやっておかないと!」
「うんうん、そうだよね! 新しく発現したブラスタの形態を使いこなせるようにならなきゃだし、私との連携を深めるための特訓もしなくっちゃ! やることは山積みだよ、ユーゴ!」
マルコスを見送ったユーゴたちもまた、自分たちのすべきことをしようと話をしていた。
この街……いや、この世界にはユーゴの想像を超える闇が存在している。ラッシュを惑わせた黒幕は、これからも暗躍を続けていくのだろう。
その闇と相まみえた時に、人々を守れるだけの強さを身につけておかなければならない。
そのためには自身の力を高めることもそうだが、仲間を増やしたりこの世界についてもっとよく知らなくては。
フィーも、メルトも、これからの戦いへの備えに対して意欲を見せている。
ヒーローであるユーゴと一緒に前へと進んでいこうと考える二人が、彼の方へと顔を向けると――?
「……あ、あれ? 兄さん? 兄さん!?」
「いなくなってる~っ!? えっ!? どこどこ? どこに消えたの!?」
――ほんの数秒前まで自分たちの間にいたはずのユーゴが消えていることに驚いた二人が彼の姿を探せば、少し離れた先で泣きじゃくる女の子と話しているユーゴを見つけることができた。
どうやら少女は迷子のようだ。誰よりも早くに助けを求める彼女の声を聞きつけたユーゴのらしさに苦笑しながら二人が彼の下へと駆け寄れば、少女へと優しく話しかけるユーゴの声が耳に入ってくる。
「お嬢ちゃん、どうかしたのかな? お父さんとお母さんとはぐれちゃった?」
「ひぐっ、ぐすっ……! うん……!」
「よ~し! なら、お兄ちゃんが一緒に探してあげるよ! 見ての通り、目立つ頭とデカい体してるからな! 俺と一緒にいれば、お父さんもお母さんもすぐに君に気付くぜ!」
「うん……ありがとう、お兄ちゃん!」
「いいのいいの、気にしないで! 困ってる人は助ける、ヒーローとして当然のことだからさ! ……つーわけで悪いんだが、この子の両親を探すことになった。ちょっと付き合ってくれよ」
当たり前のように自分たちを巻き込んだユーゴの言葉に、顔を見合わせて笑うフィーとメルト。
女の子を肩車して歩き出した彼を左右から挟みながら、二人は言う。
「兄さんってば、本当にしょうがないんだから……! 早くご両親を見つけてあげて、学園に戻るよ! ブラスタの調整とか、やることはいっぱいあるんだからね!」
「私も付き合っちゃうぞ~! すいませ~ん! この子のお父さんとお母さん、いらっしゃいませんか~! ここに迷子の女の子がいますよ~!」
街の大通りを大声を出して歩きながら、少女の両親を探すユーゴたち。
ヒーローの本質は敵を倒すことでも、悪を打ち砕くことでもない。困っている人を助けるという、いわばお節介を焼くことだ。
これもまた立派な善行であり、ヒーローの仕事。泣いている女の子を笑顔にできるのだから、十分に誇らしい行為だ。
やがて、歩き続けて数分経ったところで少女の両親を見つけ出したユーゴは、彼女を親に引き渡しながら別れを告げる。
その際、感謝の言葉を述べた少女は、続いてこんな質問を投げかけてきた。
「ありがとう、お兄ちゃん。ねえ、お兄ちゃんは何者なの?」
「ん? 俺? 俺はね……」
明るく、ユーゴが笑みを浮かべる。決闘に敗れた後は落ちぶれていく一方である悪役に相応しい厳つい顔に人懐っこさと愛嬌を込めた笑顔を見せた彼は、おなじみのサムズアップと共に少女へとこう答えた。
「俺は通りすがりのヒーロー、覚えておいてね!」
いつだって、どんな時だって、たとえ住む世界が変わったとしても、ユーゴのすることは変わらない。
ニチアサのヒーローたちから学んだヒーローとしての魂を燃やし、人助けを続けるだけだ。
マルコスに続いて両親と共に去っていく少女を見送りながら、晴天の空を見上げながら……満面の笑みを浮かべた彼は、この世界でヒーローとして生きていくぞという決意を漲らせると共に、大きな声で叫んだ。
「これにて一件コンプリート! ルミナス学園は今日も晴れ! ってね!!」
―――――――――――――――
ここまでこの小説を読んでくださり、本当にありがとうございました。
【ニチアサオタク】第一章、これにて完結です。
およそ十日間で十数万文字という馬鹿みたいなハイペース投稿についてきてくださった皆さん、本当にありがとうございました!
趣味全振りで書いた小説なのですが、思っていた以上に反響があって驚いています。
仕込んだネタ(六話で出てくる蟹、523、その他諸々)に気付いてくださる方もいて、かなり喜んだり嬉しかったりな気持ちです。
やっぱりヒーローはみんなから愛されるものなんだな~……って強く実感しました!
さて、ここでとりあえず馬鹿みたいなハイペース投稿は終わりにして、ちょっとだけ書いた短編を投稿してからは少し間が空くと思われます。
毎日投稿したいんですけどね、仕事や他の小説の毎日投稿もやってるんで……すいません(よければそっちも読んで!!!あわよくば書籍で買って!!!)
ただ、この小説の形式上、本家特撮番組のように一話完結のお話が書きやすいので、時間が空いた時にサクッと書くみたいなこともできそうです。
次はどんな展開が待っているのかな~? とか思いつつ、まだ発見されてないネタとかを探しつつ、気長に待ってくださると嬉しいです。
沢山のブックマークと☆、そして感想を本当にありがとうございました。
受けるかどうか不安だったのですが、毎日のように面白い!って言っていただけてとても嬉しかったです。
改めまして、読者の皆さんに感謝を。そして、続きも楽しみにしていてください。
本当にありがとうございました!
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