ゲキゲキ!刺激的な俺流戦法!!
「はっ! 手も足も出せないくせに何を言っている!? どう足掻こうとも、お前の負けは決定的だ! 俺の剣技の前に沈めっ!」
叫び、かまいたちを繰り出す六人のラッシュたち。
しかし、ユーゴは焦らない。冷静に、最小限の動きでその攻撃を見切って、タイミングを待つ。
一つ、二つ、三つ、四つ、五つ……ラッシュたちが剣を振り、次の攻撃に備えて魔力を充填する様子を窺っていたユーゴは、六人目の攻撃がこちらへと飛んでくる前に動いた。
「ふっ……!!」
攻撃の威力を上昇させるのではなく、スタートダッシュを決めるための魔力操作。
六人目のラッシュが剣を振るのとユーゴが駆け出すのとはほぼ同時で、風の刃と入れ違いになるように突進したユーゴは次の攻撃の手番を迎えようとしている最初に攻撃を仕掛けてきたラッシュに急接近した。
「ふっ! 何をしてくるかと思えば、少しスピードを早くしただけか! そんなことをしても無駄だ! 残りの俺たちがお前を斬り裂く!!」
これからユーゴの攻撃を受けるラッシュが余裕たっぷりに叫ぶ。
この感じだと彼は分身なのだろうなと思いながらもそんなことはどうでもいいと思っているユーゴは、残る五人のラッシュたちが一斉にこちらへと攻撃を繰り出そうと動きを見せる中……小さく、鋭く、跳んだ。
「はっ……? がべっ!?」
多分、攻撃を受けたラッシュの分身は何が起きたかわからなかっただろう。
突きか蹴り、そのどちらもを防御するつもりで構えていた彼の意識は、ユーゴの一撃によって瞬間的に刈り取られてしまった。
「なっ!? 馬鹿なっ!?」
速かった。鋭かった。そして、強烈だった。
拳や足に魔力を溜める隙も見せず、ほんの一瞬で自分たちの中の一人を撃破したユーゴを迎撃すべく剣を振るラッシュたちであったが、それを見越していた彼は再び綺麗なスタートダッシュを見せてその攻撃を回避し、距離を取る。
ざわっと、数秒にも満たない攻防を目にした生徒たちの間にどよめきが広がっていく。
六人から五人へと数を減らしたラッシュたちが動揺を見せる中、小さく息を吐いたユーゴが彼らへと言う。
「悪いな。お前の言う通り手も足も出なかったからよ、膝を出させてもらったぜ」
「ぐっ……!」
ぽんぽんと自分の膝を叩きながら口を開いたユーゴの言葉に悔し気な呻きを漏らすラッシュ。
たった一発、それだけで分身の一体を粉砕した彼が放った攻撃は、跳び膝による一撃であった。
鋭く、素早く、疾走の勢いを殺さない短距離の跳躍で間合いを一気に詰め、相手の顔面へと膝を叩き込む。
鋼鉄の鎧に覆われた膝での一撃は想像を絶するレベルで、それでも多少手加減ならぬ足加減をしているユーゴは、残り五人に減ったラッシュたちを見回しながら申し訳なさそうに彼らへと言った。
「昔さ、お気に入りのヒーローの戦い方を格好良いなって思って、ベースになってた格闘術を習ったんだよ。ただまあ、本当にかじる程度だったし、絶対に喧嘩で使うなって言われてたから封印してたんだけどな。そもそも俺、喧嘩とかしないけどさ」
「なんだその格闘術は……!? そんな戦い方、見たことないぞ! どこの流派の武術だ!?」
「ん? 普通に習ったことをベースに色々とヒーロー要素を付け足してるから、敢えて言うとしたら……俺流だよ。さて、お喋りはここまでにして、続きいくか!」
「くっ、くそっ! 調子に乗るなああっ!!」
再びあの構えを見せたユーゴに対して、五人全員で風の刃を繰り出すラッシュであったが……それは完全な悪手であった。
一度に五人が攻撃したということは、全員が同時に次の攻撃の準備に入る必要があるということ。先ほどのように分身たちがお互いをカバーし合うことができなくなっているということだ。
ユーゴがその隙を見逃すはずもなく、再び瞬発力強化によって駆け出した彼は一気に間合いを詰めると、ラッシュの一人へと挑みかかっていく。
「同じ手が二度と通用するか! 跳び膝を食らわなければ……がふっ!?」
一瞬で繰り出される鋭い跳び膝蹴りを警戒して防御するラッシュであったが、ユーゴは今度は跳躍せず、顔面に意識がいっているが故に無防備になっていた腹部へと軽い前蹴りを叩き込んでやった。
それで体勢が崩れた相手へと肘のカチ上げを食らわせ、見事な連撃で二人目のラッシュを撃破した彼は、そのまま次々と分身を叩きのめしていく。
「オラオラオラオラッ! まだまだ行くぞっ!!」
「なんだ、こいつ……? なんなんだっ!?」
自分の分身が瞬く間に倒される悪夢のような光景を目の当たりにしたラッシュの叫びが響く。
何故、重量のある全身鎧を着た状態でここまで機敏な動きを見せられるのか? 宝剣頼りの戦いを繰り広げていたはずの彼がどうしてここまで見事に格闘術を使いこなせているのか?
意味がわからない、理解が及ばないと青ざめたラッシュは、あっという間に自分の分身たちを倒してしまったユーゴへと胸の内の疑問をぶつけるように叫んだ。
「なんなんだ、お前はっ!? どうしてそんな重い鎧を着て、そんな動きができる!?」
「どうしてって聞かれてもな……悪いんだけど俺、こいつを重いと思ったことねえんだよ。むしろ、着てる方が身軽に動けるくらいなんだけどさ、こいつって本当にそんなに重いの?」
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