ニポンから来た異世界勇者が無双だしハーレムだし元の世界に帰りたくないとか言ってモブ騎士と呼ばれる私が代わりに帰ることになったんですが、『ヤバい』です
だぶんぐる
異世界から帰ってきました!代わりに!
私はニポンに帰ってきた。代わりに。
ひとつずつ整理していこう。
私は、ニポンの生まれではない。
異世界『ヴェルゲルガルド』で生まれた。
ヴェルゲルガルドは、ニポンと違い、魔法や魔物が存在する。
孤児だった私は、食い扶持を求め、兵士に志願し、魔法を使い魔物を倒し、それなりの活躍をした。
その功績を認められ、神聖騎士という国に仕えるそれなりに高い身分につけた。
しかし、そんな私でも魔王軍の、特に幹部クラスになると大軍を率いてなんとか退けることが精一杯だった。
そんな時だ。
姫様の提案で女神と契約し、異世界から勇者様を呼ぶことになったのだ。
そうして、やってきた勇者様がノリオ様とユイ様だった。
お二人は、来たばかりの頃は不安そうなご様子だったが、直ぐに自身の才能を開花し、私達をいとも簡単に追い越し、人間軍の最強戦力として活躍、そして、魔王を倒したのだ。
その旅の途中で出会った、勇者様の仲間達、【神速の拳士】イノリ、【殲滅の魔導士】リエナ、【賢者】シノ、【必中の狩人】キリ、そして、【姫騎士】ユウナ様の五人と、【勇者】ノリオ様、【聖女】ユイ様、この七人が【選ばれし七雄】と呼ばれている。
そして、ノリオ様以外は皆ノリオ様を慕う女性たちだ。
様々な事件や出来事の中で、ノリオ様に助けられ、守られ、時には倒され、仲間となり、結ばれた女性たちだ。
いや、正確に言うと、ユイ様はまだ、そういうことになっていないそうだが、お二人はニポンでも幼馴染だったそうで、であれば、いずれ彼女とも結婚するだろうと皆が噂していた。
しかし、運命の女神とは本当に気まぐれだ。
ノリオ様とユイ様は元の世界へ帰らなければならなくなった。
それが、女神との契約だったからだ。
『魔王を倒す勇者をこの世界に導いてほしい』
これが姫であるユウナ様が女神と交わした契約だった。
そして、異世界の勇者とは、文字通りこの世界の人間とは異なる存在だ。
その存在がずっと居続けることは世界にとって良くないことらしいのだ。
ユイ様はこのことに納得され、元の世界へ帰ることを決められたが、ノリオ様は、
「え~、ヤダよ。折角ハーレム作ったのに、あんな狭くて面倒な世界に帰れだなんて」
元の世界に帰ることを拒否された。
ただ、ノリオ様は、少なくとも姫を含めた五人と契りを交わしている。
それは帰るのが辛いだろう。
そこで、ノリオ様は、影武者を立て帰らせることで女神の目をごまかすことを思いつかれた。
いや、正確にはノリオ様達に付き従う『超賢者』という精霊様の発案だった。
『超賢者』様はノリオ様達がヴェルゲルガルドに来られた際に女神から与えられた力の一つで、全てを知る、ノリオ様曰く『うぃきぺであ』のような存在らしい。
『超賢者』という名はノリオ様が付けられた。
「『大』より活躍してもらわなければ困る」
と、仰っていた。意味は分からない。多分、ニポンの話なのだろう。
そして、影武者として白羽の矢が立ったのが私というわけだ。
私は、ノリオ様から『モブ騎士』という愛称で呼んでいただいていた。
いつでもどこでもいるし死なないしという意味らしい。
光栄だ。
そして、私はノリオ様の代わりに、異世界の国『ニポン』に帰ることになった。
私では色々と不都合があるのではと思ったが、超賢者様曰く『ご都合主義でなんとかなる』らしい。
凄い話だ。
そして、旅立ちの時はやってくる。
寂しさはあまりなかった。
孤児だったことや戦いに明け暮れていたこともあったが何より、
「ほ~ら、ノリオ様。私の身体に夢中になってないで、ユイ様がお帰りになられますよ」
「あ、うん。じゃあね~。元気でね~」
ノリオ様にしな垂れかかっている女性は、【姫騎士】ユウナ様。
私の、憧れだった人だ。
神聖騎士として、戦場を共にし、その勇ましく美しい勇姿に、私は心惹かれた。
しかし、その思いはかなうはずもない。
私は孤児で、あの方は一国の姫。
そして、何よりノリオ様という初めて頼ることの出来る強い方が現れたのだ。
私の出る幕などない。
だから……私は、すんなりニポンに行くことを受け入れることが出来たのかもしれない。
「……はい、あの、レオンハルトさんには何か言葉は……?」
ユイ様がそう仰られると、二人はきょとんとして笑いだす。
あ、ちなみにレオンハルトというのは私だ。
神聖騎士となる時に、ちゃんとした名前を頂いた。
「ああ、そうだった! ごめんね! レオ! よろしくね!」
「レオンハルト、しっかりとノリオ様の代わりを果たすように」
「は! このレオンハルト、命に懸けて、ノリオ様の代わりを務めてまいります!」
「ぶふっ……! う、うん……あの、頑張って……!」
ノリオ様が笑っている。
やった! ウケた!
ちなみに、『ウケた』というのはノリオ様がよく使う言葉だ。
面白い奴だ、とか、見込みがある、という意味だとノリオ様に教えて頂いた。
「ありがとうございます! ノリオ様!」
「うえ!? あ、う、うん……じゃあね」
私とユイ様は、ノリオ様達がやってきた女神の祭壇にある魔法陣の上に立った。
何処からか精霊が集まってきて、魔法陣に光が溢れる。
女神の力なのだろう。
「では、ノリオ様! 姫様! 皆様! お元気で!」
「ばいば~い」
ノリオ様の、気を使わせないような気軽な別れの挨拶に涙が出そうになったが、上を向き間一髪で堪え、私はニポンへと旅立った。
女神の転移魔法といっても一瞬で、ニポンに行けるわけではないようで光の中でニポンに着くまで待つことになるようだった。
「あの、ユイ様は、ノリオ様とヴェルゲルガルドに残らなくて本当に良かったのですか?」
私は気になっていたことをユイ様に聞いてみた。
もしかしたらユイ様も残りたかったのではないかと。
「え……はい、私は、元の世界に帰りたかったので……それに」
故郷を懐かしむように遠くを見つめながら目を細めていたユイ様はちらりとこちらを見ると、
「レオンハルトさんも、来ると聞いたので……あ! あの! その! ふ、不安かなって!」
「ユイ様……! 私如きにそのようなお言葉……ありがとうございます!」
「あ、あうううう~……そ、そんな見つめないでください~」
ユイ様は聖女と呼ばれ、本当に誰でも分け隔てなく接してくださる素晴らしいお方だ。
勿論、ノリオ様もだ。ノリオ様は王でも魔王でも神でも同じように気軽に話しかけていらっしゃった。すごかった。
「あ、あと! ユイ様は、あっちの世界では辞めてもらえませんか? 様付けは、その、いやというか……他人行儀というか」
「……なるほど! それがニポンのやり方なのですね!」
「そ、そう! 日本はそうなんです! あ! これからいろいろと私が日本の! やり方を教えますから、ちゃんとやってくださいね!」
「かしこまりました! では、心苦しいですが『ユイ』さんと」
「ユイでいいですから!」
「救世主様にそんな恐れ多い!」
「こっちでは普通! 普通なんです!」
「は! そうだった……私は、ノリオ様の代わりでした。わかりました……では、ユイと」
「……!」
「ユイ……?」
「え? あ、はわっわ……あの、慣れるために、も、もういっかい」
……なんと! 私がこの任務をこなせるよう、『私が』呼び慣れる為に練習に付き合ってくださるとは、流石聖女様!
「では……ユイ」
「はわわわ、もういっかい」
「ユイ」
「ももももももういっかい」
「ユイ」
「まだまだまだもういっかい」
「ユイ」
「げ、元気に!」
「ユイ!」
「さささささ囁くように」
「ユイ……」
「……やばい」
ヤバイ!? ヤバイってどういう意味だ!? ヤバイは、そうだ! 大変な時にノリオ様が言っていた!
そ、そこまで私はニポンの民に成れていないのか! ああ、努力が、足りないのだ!
愚かなレオンハルトォオオオオ!
「ユイ! ユーイ! ユイッ! ユ~イ? ユイ!! ユッイ! ユイ! ユイ!!!! ……ユイ、どれが一番良かったですか!?」
「……じぇ、じぇんぶよかったです」
「……本当ですか!? 良かった! ありがとうございます! ユイ!」
「こちらこそありがとうございます!!!」
良く分からないがユイに美しい直角のオジギをされてしまった。
「しかし、本当に大丈夫なのでしょうか。ノリオ様と私は多少顔の作りは似てるとは思いますが……」
「似てません!」
ユイ様がものすごい形相で怒っていらっしゃる!
やってしまったな! 愚かなレオンハルトォオオ!
「も、申し訳ありません! あの、ノリオ様のご尊顔と似てるなどと……!」
「そ、そういう意味じゃなくて……! ああ、じゃあ、ちょっとだけ、構造は似てますが、レオンハルトさんの方が、鼻も高いし、彫りも深いし、か、かっこいいです、よ……」
ユイ様が気を使ってくださっている! 流石聖女様!
「ありがとうございます。しかし、やはり多少の違いはありますよね……お母さまや妹君はお気づきになられるのでは……」
『その点は、ワタシにお任せを』
どこからか声がすると思ったら、ユイ様の腰に付けていた袋からなんと超賢者様が現れた!
「超賢者様! 何故ここに!?」
『私は、ユイの為の存在ですから。ユイについていくのは当然です』
「そ、そうなのですか!? てっきりノリオ様の御力かと」
『……あんな屑に仕えたくねーんですよ』
「……え? 今、なんと……く、屑?」
『記憶抹消びーむ!』
「あばばばばばばば!」
……あれ? 私は何を?
『というわけで、ワタシがレオンハルトの異世界生活のサポートをさせてもらいます』
そうか、超賢者様が現れて、そのあとのことは覚えていないが、とにかく、助けて下さるという事だ。ありがたい!
「ありがとうございます!」
『とはいえ、基本ワタシはユイについていなければならないので、基本的にはレオンハルトさん、アナタ一人で頑張ってください。ユイの為にも』
「はわわわわ! 超賢者ちゃんダメだよう!」
「はい! ユイ様のニポンでの生活のご迷惑にならぬよう! ノリオ様の代わりを一生懸命やってみせます!」
『ユイ……この鈍感騎士に、ワタシが催眠びーむでユイに惚れさせましょうか?』
「そ、そんなのダメだよ! ……でも、どうしようもなくなったらお願いするかも」
ユイ様と超賢者様が何やら楽しそうに話をしていらっしゃる。
仲良きことはよいことだ! はっはっは!
『……間もなく、到着です。日本、ワタシ、少しワクワクしています』
実を言うと、私も少しわくわくしている。
ノリオ様が育ったニポンとは、一体……。
光が少しずつ薄れていき、私はニポンへと降り立った。
私はニポンに帰ってきた。代わりに。
しかし、そこは……ニポンは!
そこは鉄の塊が走る危険な場所だった!
「ユイ様! お気を付けください! く!
「はわわわ! れ、レオンハルトさん、あれは自動車~」
「ジ、ドウシャ……?」
『……はい、じゃあユイがレオンハルト臭を堪能したところで、落ち着けびーむ』
「あばばばばばばば!」
……ニポンはすごいところだった!
ジドウシャという馬車とは違う乗り物が、鉄の車が走っている!
物凄い早さだ! 私でも追いつけるかどうか……。
「ふう……顔があっついよ」
『堪能しましたか、ユイ』
「超賢者ちゃん、ナイスタイミングでした。あれより遅かったら、血を見ることになったよ。私の鼻から」
『ぎりぎりせーふ』
超賢者様とユイ様が本当に仲がいい!
それにしても、ニポンは本当にヴェルゲルガルドとは全く違っていた。
夜も明るく、星が見えない。
こんなに遅くても、人が多く行き交っている。
「ここが、ニポンなのですね……」
「……おっほん。レオンハルトさん、ようこそ、日本へ」
「……はい!」
『……ワタシのことはユイはアウトオブ眼中ですか。そーですかそーですか』
「そ、そんなことないよ! っていうか、アウトオブ眼中とかよく知ってるね!」
『魔法を使って、この世界の情報とリンクさせました。まだ、途中ではありますが、その内うぃきぺであ並になります』
うぃきぺであになるのか超賢者様は、では、私は……ノリオ様に、なれるよう努力しよう。
「結ちゃん? 結ちゃんなの?」
「え……?」
振り返ると、一人の女性がこちらを見て目を見開いている。
「おかあさん……」
ユイ様が震えている。
そうか、ユイ様の……一年ぶりの再会なのだな。
ユイ様はお母様の胸の中に飛び込みわんわんと泣いた。
お母様もユイ様を抱きしめながら泣いていた。
「ごめんなさいね、みっともないところを」
「いえ、ユイ様と長い間離れ離れにさせてしまい申し訳ありませんでした」
「ユイ、様……? あの、結? この、イケメンは」
『記憶抹消びーむ』
「あばばばばばばば!」
ああ! ユイ様のお母様が超賢者様に何かされている!
「まあ、仕方ないね。レオンハルトさんの為には必要な犠牲だよ」
ユイ様が頷きながら何かをおっしゃっている。
「っていうか、レオンハルトさん! 私のことはユイって呼んで!」
「す、すみません! ユイ」
「はう!」
『おい、ばかっぷる~。もういいか~』
ばかっぷる? 新しい言葉だ。あとで超賢者様に詳しく教えてもらおう。
『レオンハルト、今から貴方はノリオとしてこの日本で生きていきます。ただ、中身を変えるとユイが激おこなので、外見とあと、色々幻覚魔法とか催眠魔法でばれないように細工しておきま~す☆ と、これからは、愛称でレオと呼びます。ノリオのクソアホがかっこつけてそう呼べと言っていたらしいのが逆に助かりましたね。では、レオいいですね。 え~い、へんし~ん☆』
「あばばばばばばば! ……って、いったい何が?」
「こほん、レオ、あっち見て」
ユイ様が、指さした先には建物がそして、そこにある高そうな透明なガラスに映った私は……黒髪で、黒い瞳の男になっていた。
『まあ、あんまり見た目変え過ぎちゃうと、ユイがしょんぼりしちゃうので、この程度で。あとは、幻覚魔法と催眠魔法でなんとかしま~す☆ じゃあ、ユイのお母様めざめま~す☆』
超賢者様の放つ雷が収まると何事もなかったかのようにユイ様のお母様が立ち上がる。
何かこれ、見たことが……う! 頭が!
「ユイ、この人は……?」
「も~何言ってるのお母さん! ノリオ君だよ! ノリオ君!」
「え……? ノリオ君? アナタと一緒に行方不明だった? ……なんか筋肉ついてない?」
「一年もあればねえ~」
ユイ様が、それがどうしたの? という顔でやりすごしていらっしゃる。
流石ユイ様!
「ん~?」
ユイ様のお母様がこちらに近づいて見つめてくる。
が、突然。
「あば! ……ノリオ君も、無事だったようでよかったわ」
急に、何事もなかったかのように理解を示す。
何だ今の? 魔法?
「ひとまず、これからいろいろと大変よ。一年もあなた達行方不明だったんだから」
それからは本当に大変だった。
ケーサツやら、ビョーインやらで色々と聞かれたり調べられたりした。
だが、大体、皆様、急に『あば!』と言って素直に受け入れてくれたのでよかった。
何故そうなるのかは深く考えないがよかった!
けれど、一番大変だったのは、
「ノリオ……! ノリオ!」
私に抱きついてくる女性。
長く艶やかな髪を一本に纏め、聖母を思わせるような包容力の塊のようなこの方が、ノリオ様のお母様だった。
一年間、心配だったのだろう。
瘦せこけ、目には隈が。
私はこれからこの人を騙さなければいけない。
罪悪感は胸が痛むほどにあったが、彼女の本当に嬉しそうな笑顔を見て、ノリオ様の代わりとして少しでも幸せになれるよう努力することで罪滅ぼしとさせていただこうと心に強く誓った。
「母上、一年間も申し訳ありませんでした」
「……ノリオ、あなた……そんな口調だったかしら?」
涙が零れる瞳を見開きながら首を傾げるお母様を見て、私は流れる汗が止まらない!
ノリオ様の口調を何故学んでおかなかった!
愚かなレオンハルトォオオオ!
「あ、あの! 一年間色々ありまして、でも、ノリオ君、こっちに帰ってきたときに頭打って記憶もなくなっちゃってて……色々変わってしまって、変な気がするかもしれませんけど、気にしないでください」
ユイ様が助け船を出してくれる。
申し訳ありません! ユイ様ぁああああああ!
「……大丈夫?」
お母様が心配そうに問いかけてくる。
何に対して聞かれたのか分からない。
けれど、私は今、心からこの人を安心させたくて、
「大丈夫、これから全部だいじょうぶにするから」
精一杯の気持ちを込めて自分の気持ちを伝えた。
ユイ様が何故か隣で顔を真っ赤にしてパクパクしていらっしゃるが、すみませんユイ様、今はお母様に集中させてください。
「そっか……うん、なら、いいわ。ノリオが、大丈夫なら」
お母様はほっとしたようのか笑ってくださった。
「ねえ、あなた達も早くきなさい! ノリオが帰ってきたのよ!」
お母様が後ろを振り返り、誰かを呼んでいる。
そこには二人の女性がいた。
一人は、金色の髪を二つ結びにした小柄な女性。
非常に可愛らしく何やら光の出る板を見ながらこっちに歩いてくる。
もう一人は、長身で赤い髪の女性だ。
背筋が伸びており力強く、しかも何故か睨みながらこっちに歩いてくる。
「も~、なんで梨生奈が、ソイツの迎えに一緒に行かないといけないの? 一年もお母さん心配させたバカの迎えにとかマジで最悪、なん、だけ、ど……」
「っていうか、母さん、あのさ……」
「「誰? このひと?」」
「ノリオよ!」
「「いやいやいやいや!」」
「あの馬鹿、こんなに彫り深くなかったって!」
「それに、アタシより背が高いじゃねーか! アイツもっとチビだったって!」
「も~、何言ってるの。ノリオは一年間でかっこよくなって帰ってきたのよ」
「「…………いやいやいやいや!」」
本当に大変だった。
お母様が多少ノリオ様に盲目的だったこともあり、なんとか事なきをえたが、終始姉妹であるお二人は私を見つめてきていた。
必死で覚えたノリオ様の個人情報を暗唱できたお陰で何とかしぶしぶお二人は納得してくれたようだった。
こうして、私のニポンでの生活が始まった。
が、本当に大変だった。ノリオ様のように言うなら『マジで』大変だった。
ユイ様はオーガのようなツンツンの角が何本も生やした『やんきー』というヤツに迫られ、『たいまん』という戦いで私がノリオ様のようにでこぴん一発で倒しなんとか乗り切るという事件。
妹である梨生奈様が『うぇいうぇい』という呪文を唱えるダークエルフに絡まれ、私がノリオ様のように『どろっぷきっく』でまとめて吹っ飛ばして倒したものの、何故か梨生奈様に兄であればおぶって帰るものと言われ私の素性を疑われてしまった事件。
姉である美乃梨様が『さーくる』とやらに誘われ、『やりさー』というゴブリン共に眠らされ襲われそうになったところをノリオ様のように『じゃいあんとすいんぐ』で全員なぎ倒したのだけど美乃梨様に、弟だったらこれくらいしてみせろと『お姫様だっこ』(これを姫にしたら斬首刑なのではと思ったが)という試練で私がまた試された事件。
母である伊代様が、『ぱわはらじょうし』なるオークにつかまり、『せくはら』をされそうになったのをノリオ様のように『みずのこきゅう』でぶっとばし、お母さまに素性がばれてしまう事件。
本当に色々あった。
ノリオ様の言葉を借りるなら『マジヤバかった』。
そして、私がニポンに代わりに来て一年がたった。
「ね~え、な~んで梨生奈ちゃんがレオ君の腕に絡みついてるのかな? 妹なのに変じゃない?」
ユイ様が怒っている。
「え~、別に変じゃないよ~。兄妹だし。っていうか、レオンハルトは、結局、血が繋がってないんだから、付き合っても問題ないわけだし~」
梨生奈様が挑発している。
「それより、レオンハルト、アタシと、その、デー……おでかけする約束は、どうなったんだよ?」
美乃梨様が真っ赤な顔で聞いてくる。
「うふふふ、まあ、ノリオも向こうで幸せに暮らしてるわけだし、こっちも仲良くやりましょう。仲よく、ね、レオンハルト」
伊代様が、背中を指でつつと撫でてくる。
結局家族のみんなにばれてしまったが、あっさりと受け入れられ、髪も眼も元に戻し、生活をし始めた。多分、超賢者様のおかげだろうがガッコウでも受け入れられた。女子生徒の皆様がシルバーウルフみたいな獲物を見つけたような目をしていた気がするが気のせいだろうそうに違いないそうであれ。
そして、家族とユイ様から、ノリオ様は昔から誰かのお願いを断れない素晴らしい方だからレオンハルトもそうなりなさいそうであれそうなれと言われ、今日もまたノリオ様の代わりに皆さまのお願いを聞いている。
けれど、本当にこんな、男女の、破廉恥なお付き合いのようなことをノリオ様はご家族としていたのだろうか。
いや、でも、確かに、ノリオ様はヴェルゲルガルドで仲良くなるためだと結構破廉恥な事をしていた。
しかし、私には……!
がんばれ、がんばれ、レオンハルトォオオ!
「「「「レオンハルト、ノリオの代わりにお願いね☆」」」」
ノリオ様、申し訳ありません。
レオンハルトは、ノリオ様の代わりになれないと思います。
この状況、ヤバいです。
一方、ヴェルゲルガルド。
「おーい! 超賢者―! どこいったー! 助けてくれー! 俺のハーレムに怒った野郎どもとハーレムで揉める女たちを大人しくさせる方法を教えてくれー! ユイ! お前の聖域魔法で押さえつけてた魔族たちが復活して、暴れてるんだよ! もっかいこっちにきてくれ! レ、レオンハルト~! 俺の代わりにヴェルゲルガルドに来てくれ~! ヤバいよヤバいよ~」
ニポンから来た異世界勇者が無双だしハーレムだし元の世界に帰りたくないとか言ってモブ騎士と呼ばれる私が代わりに帰ることになったんですが、『ヤバい』です だぶんぐる @drugon444
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