6.女勇者は、伝説の剣(非減価償却資産)を手に入れた!

 

◆ミナァート王国・中央通りにある商人ユウジの店――


女勇者タカコ「――というわけで、これを見て下さい♪」

男商人ユウジ「またいきなりだな……」

相談係キノミナ「あら、ひょっとしてそれは――?」


女勇者タカコ「ふっふっふ、なんと大冒険の末に~あの”伝説の剣”を手に入れちゃいました!」


男商人ユウジ「おっ、それは本当にすごいじゃないか!」

相談係キノミナ「伝説の剣と言えば、精霊が”奇跡で鍛えた”と云われる聖剣です。その価値は測り知れません」


女勇者タカコ「にひひぃ~もっと褒めてもくれていいですよ♪ なんせ魔竜の鱗すら一刀両断するほどの切れ味で、しかも自動修復機能があるから刃こぼれ一つしないんですよ!」


男商人ユウジ「……え?」

相談係キノミナ「……あら?」


女勇者タカコ「はい? あの、だから自動修復機能があって鍛冶要らずで――」


相談係キノミナ「……そうでございますか」(視線をそらす)

男商人ユウジ「……あちゃー」(頭を抱える)


女勇者タカコ「ちょ、何ですか急にその反応はっ!?」



相談係キノミナ「自動修復機能があるという事は……資産価値が減少しないという事ですよね?」

男商人ユウジ「つまり”減価償却できない”って事だなぁ……」

相談係キノミナ「伝説の剣、減価償却できないとは情けない」

男商人ユウジ「もう使わない方がいいんじゃないか?」


女勇者タカコ「あぁ~この感じ久々だな~って、何でですかぁ!?」



 ◇◆ ◇◆◇ ◆◇



相談係キノミナ「減価償却できた方が、節税になるのです」

男商人ユウジ「例えば、女勇者タカが”4000万円の家”を買ったとしよう。所有する家屋には毎年『固定資産税』が掛けられるんだ」

相談係キノミナ「仮に固定資産税率を1.4%として、毎年56万円を納税する感じですね」

男商人ユウジ「家を買った直後はまだ納得できるが、例えば数十年後に”この家の価値は4000万円だから今年も56万円を納税するように”って言われたらどう思う?」


女勇者タカコ「えっ、家なんて数十年も住んだらボロボロじゃないですか! それじゃ税金が高すぎですよぉ!」


相談係キノミナ「そこで”資産価値の経年劣化”を加味して、固定資産の評価額を減ずる――それが”減価償却”です」

男商人ユウジ「これを活用すれば、適正な”固定資産税額”になって節税にもなるだろ?」


女勇者タカコ「なるほど。そういう事ですかっ!」


男商人ユウジ「ただ、”減価償却資産”にするには条件があってなぁ……」

相談係キノミナ「建物ではなく”土地”そのものや……今回のように経年劣化しない”伝説の剣”は、減価償却の対象外となります」


女勇者タカコ「そうきたかー!?」



相談係キノミナ「ちなみに、いま女勇者タカコ様が装備しているその”女神の盾”――そちらも”芸術性が高く、経年による資産価値減少が見られないもの”として、減価償却の対象外となります」

男商人ユウジ「あと、女勇者タカが装備している”妖精の鎧”も、”考古学的に希少価値があり代替性がないもの”として減価償却の対象外になっちゃうなぁ?」


女勇者タカコ「そ、そんなぁ~!?」



相談係キノミナ「つまり女勇者タカコ様は、全身が”非減価償却資産”の装備という事になります」

男商人ユウジ「これは壊したら損失処理、大変だぞぉ……」

相談係キノミナ「もう魔王と戦う際には、脱がれた方がよろしいのでは?」


女勇者タカコ「もうこんな”異世界ファンタジー”い~や~だぁ~!!」(>△<。)

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【短編】女勇者は「個人事業主」だから確定申告しなさい!? 書記係K君 @key-kun

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