第五章データ『用語5』

『半界』

 実際には地球内部にある実世界。外宇宙、所謂他に存在しうる他星の脅威に怯えた星の意思により産み出された世界。その為、この場では芥達の現実を『上世界』、灰と魔法の世界を『下世界』と表記するが、基本的には芥達が生きていた上世界を反映する形で形成され、星が選んだ何らかをキーにして下世界は構築される。

 今回の場合は、上世界で強い影響を持った『始まりの二人』をきっかけに、魔法の概念が『下世界』に産まれる事となり、結果魔法という幻想による力を高めていくという世界になった。

 しかし、星自体はまだしっかりとした判断がついていない子供のような状態になっている為、向き合う事や寄り添う事によって、ある程度世界の修正については対応出来る様子を見せる。

 あくまで星が干渉出来るのは下の世界であり、上の世界については強い干渉が出来ない。とはいっても異世界病という魔法をばらまいたのは星自身である。

 半界という名前自体はとりあえずつけられたものであり、半分分けにされた世界という意味以外は無い。


『星』

 地球という存在の中心、意思そのもの。

 子供のように何でも信じるようで、聞き分けのないようで、何でも吸収するような、非常に不安定な存在。しかししっかりとした対応については、ちゃんとした対応を見せる部分もある。

 芥達の物語の中核にい続けたが、その姿は未だに不確定であり、精神性も不確定ではあるが、悪意や善意すらまだ無い程の、子供のような存在。

 一旦は幻想、つまり魔法という物に対して興味を強く持ち、結果半界が産まれる事になったが、それを打ち倒した芥達の姿や、そもそも芥の説得、アルゴスの言葉によって幻想から目が醒め、戦いにより力を強めていくというある種脳筋的な思考に移り変わった。

 彼とも彼女とも呼べぬ存在ではあるが、外宇宙から侵攻されるという星が持つ恐怖自体が、幼い故の理由も無い恐怖だという事は言うまでもない。もしかすると、何か感じる所はあったのかもしれないが。


『灰の海』

 半界に於いて、灰になった全ての人間が辿り着く情報の海。

 基本的に幻想に包まれた半界に於いて『死』という概念は存在せず、生命を落としても灰になるだけで、結果的に情報が灰の海に落ちるだけ。なのでこの灰の海には半界で灰になったあらゆる存在の情報が静かに眠っている。

 しかし、外的要因が無ければそれぞれが意識を取り戻す事は無く、実質的には死とも呼べる状況に等しい。

 この情報の海が存在するという事を、基本的には魔法によって生成された状態、魔法によって生成されている半界にいた全ての人間が無意識下で理解しており、殺すという言葉や死ぬという言葉を『灰にする』という言葉に置き換えてしまう傾向がある。

 幻想という概念が半界から消え、新しい世界に変わるとともに、この灰の海もまた存在を消した。


『光球』

 星への謁見と、半界の力を得る為に灰の中から顕現する物体の一つ。

 本来は始まりの二人がその身の中に持っていた。形は見る人達によって不定形ではあるが、現実を望んだ芥達には白く光り輝く手のひらサイズの球に見えた。

 それを飲み込む事によって、少なくともある程度世界を創り変えるレベルの力を手にする事が可能となる。

 しかしそれもまた、星の許可が無ければどうしようもなく、星との対話により星を納得させなければいけない。



『刻景・タイムウォーカー』

 芥の刻景の正式名称。

 元々は刻景の上を自由に移動出来るという力だけだったが、灰の海で出会ったフィーリスからその真名を教えてもらう事により本来の力に目覚めた。

 

 刻を止め、芥が移動した場所のみに限定して芥のみが動く事が出来る。

 ただし、刻を止めた状態で直接相手に干渉する事は出来ず、あくまで客観的に見れば芥が瞬間移動をしたように見える。


 星との謁見を終え半界の力を得た後は、自分のみでは無くその周りの事象もろとも巻き戻すという力を得ていたが、魔王まおうの影響が強い状態での半界で、響の死を覆すタイミングまで巻き戻してしまうと星との謁見の事実すら消滅し、矛盾が生じる為、最後の最後まで使用する事はなかった。

 ただし、魔王まおうを倒して幻想の力が消えつつある状態の半界で、星からの許可を貰った事により、それが半界に於ける最後の魔法となった。

 現実への強い願いに、最後の最後には幻想すらも寄り添う事になったのだ。

 彼の幻想の行く末を星は知らなくても、彼の現実の行く末を星は知りたいと思ったのかも知れない。

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