アイドル
Unknown
アイドル
俺は1人暮らしのアパートにデリヘル嬢を呼んだことが複数回ある。色々してもらった後、俺は彼女に人生相談をした。彼女は親身に聞いてくれた。そんな彼女の子供の頃の夢はアイドルだったそうだ。メンヘラで社不すぎて女性から一切モテない俺からしたら、風俗嬢である彼女は既に俺にとっての唯一無二のアイドルだった。笑顔がとても可愛くて心も優しかった。それからも何度かアパートに彼女を呼んだ。性的な事は何もせず、2人でただゲームをしてるだけの日もあった。彼女からすれば、俺は手頃なカモだったのかもしれない。俺がどう思われていようがどうでもいい。ただ客とキャストの関係があるだけだ。
風俗嬢として働くことになった彼女の背景に何があったのかは知らないが、彼女の手首にはリスカ痕があった。俺はそれを見て黙っていた。ちなみに俺の腕にはタバコの火を押し付けた痕が何百個もある。彼女はそれを見ても引かなかった。優しい人だと思った。
そういえば今、思い出したことがある。俺の大好きな友達に、かつて風俗で働いていた人がいた。その人は仕事から帰ると、いつも大量の水を飲んで、ずっと吐いていたらしい。彼女曰く、「風俗で働いてると心が死ぬ」
性的衝動に任せてデリヘルをアパートに呼んだ後、俺は「風俗で働いてると心が死ぬ」という言葉を思い出して、死にたくなった。俺は一体何をしてるんだろう。
風俗嬢も、恋をする少女だった季節があった。
俺も、この世の全てを何も知らずに笑ってる野球少年だった時期があった。今となっては単なる社会不適合者、いわゆる社不だ。単なる病人。メンヘラ。
人間って一体なんだろう。
俺はそんなことを1人でタバコを吸いながら、酒を飲みつつ、考えている。
◆
この世をうまく生きられる人と、そうじゃない人がいる。俺は後者でもあり、前者でもある。
あまりにも生きるのがヘタクソすぎて、俺は精神障害者として認定され、年金を貰うようになった。計算すると月々65000円ほどだ。
どん底の壁を突き破るほどのメンヘラ及び社会不適合者なら、国から金が貰える。俺みたいに。
俺は単発のアルバイトをしながら、年金に頼って、安いアパートで生活している。
飢え死にしない程度の金はある。
何もしなくても月に65000円もらえるから、そこにプラスして10万くらい稼げれば、その辺の安い正社員の給料くらいになる。
ちなみに俺が専門を中退し、正社員で働いていた頃の手取りは15万から18万だった。残業をめちゃくちゃした月でやっと18万。ボーナスは0.5ヶ月分だった。
ちなみに工場だ。
◆
飲酒、喫煙、女遊び。
それがバンドマンだ。
だが俺には女遊びは必要ない。
こないだ、汚い居酒屋をバックに、アー写みたいなやつを撮った。中心のドラムの女が自撮り棒で構えたスマホに俺とベースが寄って、3人でピースして撮った。
俺 女 男 の並びだった。
3人で撮った初めての写真なので俺も記念に貰った。
ちなみにリーダーはギターボーカルの俺ではなく、ドラムの女の子である。
その子に活動のあれは全て任せている。俺はただ曲を作る。
俺は俺の役割を全うする。
3人で革命を起こす。やれそうな気がする。
若さ故の全能感は死につつある。俺も26歳だ。もう俺には時間が無い。
酒を飲みすぎて、吐き気がしている。
かわいい女の子とやった。
それがなんだというのか。俺の夢はもっと高尚な場所にある。人間性がクズでも、高尚な夢を追う権利はある。
書くことが特に思い浮かばない。
俺は酒を飲み、タバコを吸い、少しだけ過去に思いを馳せていた。
あなたは今でも生きてるだろうか。
俺は納豆ご飯を今から食べる。
最近は一日一食にしてダイエットしている。ボーカルがデブだと話にならない。
人間なので誰でも間違える事はある。失敗は引き摺らない方がいい。酒を飲んで忘れろ。酒が飲めない体質なら、ブ●ンでもいい。反省なんてしなくてもいい。反省は意識的にするものじゃなくて、無意識的にするものだからだ。俺は反省の鬼だ。常に反省して、後悔している。でも後悔をどんなに重ねても、あなたは戻ってこない。
◆
俺は全てがどうでもいい。俺の相手をしてくれた風俗嬢がこれからどんな生活や未来を歩もうが、俺には関係ない。この文を読んでくれる誰かの生活がどうなったところで、正直言って俺には1ミリも関係ない。
あなたの明日が今日より少しでも良くなるように祈ってます、みたいな綺麗事はいつでも言えるが、俺は綺麗事が嫌いなので言わない。
納豆ご飯をこれから食べる。
でも眠い。
今日は夜から予定がある。バンドのメンバーと飯を食い、酒を飲み、カラオケに行く。バンドを始めたはいいけど、週一で遊んでばかりだ。肝心のバンド活動はまだほとんどしていない。単なる友達みたいになってしまった。それはそれで楽しい。そろそろバンド活動に本腰を入れたいが、俺以外のメンバーは正社員として働いているので、なかなか会うのは難しい。土日に会うしかない。
ちなみに、俺はすでに結婚している。ほかほかライスちゃんと結婚したから、俺と結婚したい女は諦めろ。
ほかほかライス大好き。ちゅっちゅっちゅ。
今回は、「アイドル」というタイトルにしたが、特に意味はない。風俗嬢が「小さい頃はアイドルになるのが夢だった」と言ってたのを思い出して、悲哀を感じて「アイドル」ってタイトルにしただけ。
俺にとってのアイドルは、俺がアパートに呼んだあの風俗嬢であり、それ以外を好きになる事はないだろう。
そして俺は酒を飲み、小さく溜息を漏らした。空は灰色だった。
終
アイドル Unknown @unknown_saigo
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