第二話
「はぁ............おっす」
誰にも聞こえない程度の掛け声とともにしまったドアを開ければ、視線とともにわずかな声も上がる。
「また遅刻か」
「お、きたし」
「藤岡だからか」
「あいつ仲いいしな」
別段敵対的なあれが多いわけではないが友好的なものも少ない。
と思う。
実際問題、不真面目に過ごしてるのは自覚しているし直す気はないのだが、
そんな俺が全員に好ましく思われる筋合いはないということも自覚している。
ただ、
「お、宗弥おつかれさん」
「またバイトかよあほが」
「おつかれぇ、そうや」
少なからず声を掛けてくれる奴らがいるからつい甘えてもしまう。
クラスのまじめなタイプが集まったところから声を掛けてくるのは一人だけ陽のオーラの激しい
基本的にマメで教師との折り合いもほどほどによく、真面目系のクラスメートからも不真面目組への抑制力として頼られ、不真面目側からも理解者として人気なそんなやつ。
ただどっか人間関係に冷めた感じもある節がある。
――ま、俺は好きだけど。
「おーい、遅刻の次は無視か?」
「うっせ、ハルトマン」
「お前だけだぞ、そのセンスねぇあだ名」
「かけぇだろ、なんかほどほどに強そうで」
「いや、弱いだろ」
そういうと呆れたように、机に広げたバイク雑誌に目を走らせるハルトマンこと、
髪は茶髪で緩いパーマがかかった、センターパート
耳にはおしゃれに黒のリングピアスがついたまさにおしゃれ高校生というそんな男。
女子ウケはよく、休みの日は他校の女子ともよくあそびに行くとか行かないとか。
たまに『リイン』で休みの日に、
『他校の子がお前に興味深々だからこい!』
なんてちょっと胸躍る連絡をしてくるが、図ったように毎回バイト中なのが逆に腹立たしいかったりもする。
ちなみにこいつは、バイクの免許の前に原付に挑戦して6回試験に落ちている。
たとえ中型をとってもこいつの後ろには乗らない。
そして、
「おーい、あたしが無視されてますよー」
「おーい、聞こえてますかぁ」
「へいへい」
席についた俺を頭上からめちゃくちゃに煽ってくる輩が一名。
てか、へいへいって野球部かよ
「うっさ」
「は?」
――おーいさっきまで高い声だったのに一気に低い声になったよこいつ。
「で、今日は何してたん?」
がたがたと雑に椅子を引いて、隣の席に座ってくるいわゆるギャルが一匹。
ここで注意を入れておくと優しめの方ではなく強めの方だ。
髪こそは黒だが、しっかりひかれたアイラインにがっつりとしたつけま。
this is ギャル
「喫茶店で応援」
「へぇ」
ものすごく興味なさそうに俺を見てくる。
いやお前から聞いたんだからな、とはここで言ってはいけない。
触らぬギャルに祟りなし
「そういえば出席大丈夫なん?」
「それはどうにかなってる」
「ふーん。 あ、今日家行くわ」
「.......自由だなほんと」
「バイトないっしょ?」
淡々と告げながら、授業の準備を隣で始めていく露華だが、
『話したいことある』
コミカルな電子音と同時にリインの通知でそう出る。
送信者の名前は『つゆか』
不器用な義姉と不真面目な義弟と 紫煙 @sienn
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