第2話 感情戦争~極楽鳥花~

いつから此処にいるのか覚えてすらいない、物心ついた時にはこのガラス張りの部屋の中にいた。1番古い記憶はガラスの先から僕を覗く白衣を着た男の。人を見る目じゃなかった。それから何日経ったのか、何年経ったのか分からない。毎日このガラス張りの部屋の中で頭に機械を着ける。そうして何か実験しているのだ。

扉が開く音がする。今日もまた実験だ。ムクリと起きる。そこには見知らぬ女が居た。


「やぁやぁやぁ! 君が噂の少年Aだね?! 想像してたより可愛い顔してるじゃあないか!」


そう言い放つと女は急にハグしようとしてきた。それを横目で避けつつ女に聞く。


「あんた誰だよ......」


「私かい?私は......君の救世主であり、女神であり、ソテイラだよ!」


「ソテイラってなんだよ」


「救世主って意味だよ!」


どうやらこの女は僕を助けに来たらしい。母親にしては若すぎるし、姉しては歳が離れすぎている気がする。


「何しに来たんだよあんた」


「私は......んとね......何しに来たんだっけ?」


「マジで何しに来たんだよっ!」


ついつっこんでしまった。


「ナイスツッコミー、それじゃあ行こうか」


女はそう言い僕の手を引っ張った。自慢では無いが女性と直で触れるのはこれが初めてである。


「い、い、いぃ、行こうかって、何処に行くんだよっ! そもそもアイツらは出してくれるのかよ!」


俺はそう言い研究者達に目を向ける。そこで1人の研究者が口を開いた。


「実験体A、君は今日で自由だ。また君のことはジャローゼ政府が全面的に支援する。また君の本当の名は灰無ハイム。灰に何も無いの無だ。君のご両親は感情戦争の中でそれぞれ喜びの国、また悲しみの国で行方不明になっている。君は今日からそこのか」


華爛カランだよー」


「と旅をしてもらう。君からは何も得られそうにないため私達は君を手放す決定をした。もちろんそれは君が悪いのでなく、私達の努力不足だ。また君を研究していた理由は君の感情にある。普通の人間の感情値が20~22なのに対し、君は2~3.2だった。それはほぼ感情がないと言っても過言ではない。」


僕の感情......そう僕は感情がない。完全にない訳では無いが、何をされても嬉しくもないし、悲しくもない。何も感じないのである。政府はそれが5人の王に何かしらの影響を与えるのではないか、と僕を研究していたわけだ。


「......分かりました。僕はカランさんと旅をする」


僕は正直少しドキドキしていた。この狭い箱から抜け出し、初めて外の世界に触れるのだ。空はどんな色をしているのだろう。太陽の温もりは、風の心地良さは、少しだが胸がウキウキしていた。これが期待というもの......と思いながら顔を上げるとカランさんは僕に笑顔で近づいて来ながら言った。


「ちょっと我慢してね」


なんのことか分からず困惑していると、カランさんは僕の腕を断ち切った。骨が削られるように断ち切られ、肉が抉られるように切られたのを感じた。


「んんんっ!! くっ、ああああ!」


痛い痛い痛い、汗が止まらない。切断面から血がボタボタ流れている。カランさんの方を見る、手に刀のようなものを持っているのが見えた。カランさんは笑っていた。意識があるのはそこまでだった。

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感情戦争 具丼 @788888tako

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