実験用人間の効率的複製方法の検討

亜我 裕二(阿闍梨那大)


[論文概要]


 阿闍梨那大学厭魅学部では日夜、最先端の呪術研究が行われている。厭魅すなわち呪殺はその対象を人間とするのが普通であるため、実証実験でも最終的には人間を対象とせざるを得ない。学外の人物を対象としての実験は、事後対応にかかる各種コストの高さや警察組織との対立といった問題を抱えており、効率的な実験の実施に課題があった。本研究ではドッペルゲンガー現象を応用した非現実的アプローチから実験用の人間を効率的に複製する手法を検討した。

 ドッペルゲンガーの意図的生成については先行研究(Kashirazaki et al., 2003)に詳しいが、要約すれば合わせ鏡を特殊な様態で配置した狭い個室に、霊的能力の高い人物を長期間監禁することで鏡像空間からドッペルゲンガーを生成する手法である。監禁期間はその人物の霊的能力に反比例するが、1体のドッペルゲンガー生成のために必要な期間が、国内の極めて高名な高僧でおよそ1ヶ月と生成期間が長く、生産目的としては非効率である。

 本研究では合わせ鏡の個室に監禁するのではなく、合わせ鏡の個室を精密に再現した映像空間を映すことができる、ヘッドセット型のVR機器を対象者に装着させることで代替した。これに加えてVR映像の技術的改良を施した結果、一般的な人物(亜我本人)を対象にして数日~1週間でドッペルゲンガーの眼球部分のみが生成できることが分かった。

 今後は本研究の知見をもとに、VR機器でドッペルゲンガーの全身を生成する方法、及びドッペルゲンガーにVR機器を取り付けることでドッペルゲンガーのドッペルゲンガーが生成できるかなど、工業的量産体制の構築方法を検証していく。

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阿闍梨那大学 論文集より抜粋 淀川 @yodo_gawa

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