第3話 夢の叶え方と考え方
『うーん...』
そっか、ここアメリカか。
昨日は確かゆずりと映画見ながらソファで寝ちゃったんだっけ。
あれ、ゆずりはどこ?
ゆずりを探そうと左右に目を動かすと、彼女は私のベットでくの字になって誰かと電話をしていた。
私が日本語を少しかじっていようと聞こえてくる言葉の理解には限度があった。
『XXXXさ、私上手になったよ。今度個展開きたいと思ってる。でも、ジシンないんだよね。あっ、XXXXがYYYYからbye-bye』
私はゆずりに言った。
『だれ?ジシンないって言ってたよね。ジシンないって自分のこと?それとも揺れる地震のこと?』
ゆずりは私の問いに分かりやすく説明してくれた。
『あー、今話してたのは妹。妹もアメリカに留学するんだ。もうすぐ来る予定なの。それで、ジシンないはみんなが怖く思うものでも私自身のことでもない。ジシンないは自分を信じられる力が私には今ないってことかな。それはそうと、電話聞いてたの?恥ずかしい』
ゆずりは持っていた携帯をベットの上に落として、手を顔に覆った。
私は彼女の真似をして言った。
『ハズカシイ!ゆずり、日本語教えてくれてありがとう。そうだ、記念すべき1つ目の動画を撮らない、ゆずり?』
ゆずりは顔を覆いながら言った。
『真似は大事だけど、やっぱりソフィアは日本語上手すぎ。記念すべきとか使いどころバッチリじゃん。いいよ、じゃあ自己紹介動画作ろう』
私たちは1人1分の動画をそれぞれ作った。
まずはソフィアから。
ソフィアは日本語の自作曲を歌いながら踊り、最後に自分の名前を言った。
『人は生きるのが好きな訳でもない。沈みかけた船に乗りながらずっと私は本当の必死さを知った。何をするのが正解じゃない。生きることの次に目標があるのだと気づいたんだ』
ソフィアのダンスは荒削りだが、自作曲の悲しみや苦しさを上手く表現した後にソフィアは言った。
『この曲は自作曲の始めの方をアレンジした「必死船」です。そして、皆さん初めまして。表現者を目指しているソフィアです。続きまして』
そう言って、画面は変わりゆずりの番になった。
私は1時間で描いた絵を編集して、オルゴールの様な音と共に1時間を1分に早回しして作ったのが、暗闇の中に浮かぶ船だった。
ゆずりは絵を見せて紹介した。
『これは、暗闇の中の船の中で新しい景色を見つけようともがいている私たち「D&girls」を表しています。名前をつけるとしたら、「この先の夢」です。えっと...私の名前はゆずりです。私の夢は私の絵を多くの人に知ってもらうことです。では、合体‼︎』
そう言って、リビングで上手からソフィアが下手からゆずりが勢い良く走って画角ギリギリのところで、息を合わせて言った。
『『私たち「D&girls」チャンネル登録、いいねよろしくね』』
そして3分の動画を作った。
ゆずりはYouTubeに動画をあげた後に気づいた。
『ねえ、ソフィア。私たちの名前、本名使っちゃったね。どうする?』
ソフィアは気にしていない感じで言った。
『良いんじゃない?だって、本名の方が名前が有名になるじゃん。言葉は日本語だけど、字幕は一応英語入れといた。これでグローバルになるじゃん』
ゆずりはソフィアの自作曲について問いかけた。
『そういえばさ、ソフィアのその自作曲なんでそんなに悲しい感じなの?もっとポップで楽しめる曲とか作らなかったの?』
ソフィアは知ってる日本語を駆使しながら言った。
『私、半分日本の血が流れているんだけど日本に来てYouTubeで初めて歌い手さん?の歌声聴いてワオッ!ってなった。顔を隠して歌う日本人の方の動画も見て、すごくカンメイ受けた。私は画面から熱量を感じる歌を作りたくて作った曲がこれだった』
ゆずりはソフィアを見て言った。
『ソフィアの夢は表現者だけど私から見たらもうstarだよ。でも、私たちの動画を判断するのは何億人もいる視聴者だから。分からないけどね』
『ナンオクニン?シチョウシャ?』
『ナンオクニンはこの世界を生きている人のことでシチョウシャはYouTubeを見ている人の事だよ。まあ、いいや。明日になったらどうなってるか見よう』
『ゆずりはやっぱり優しくて良い人ですね。私もっと日本語頑張って上手くなりますからね』
『いやいや、ソフィアは日本語上手いから頑張るならダンスや歌を頑張ることでしょ。私も一緒に頑張るから。お互い高みを目指そうね』
『はい。頑張りましょう。ところで高みって何ですか?』
『あー、それはまた後でとりあえずランチ食べに行こう』
『教えて下さいよ』
『また、あとで』
2人はご飯を食べに行っている間に、動画は思わぬ再生回数に達していたのだった。
僕Aと君B ソノハナルーナ(お休み中) @eaglet
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