第4話 僕の願い

今日の君と、別れる時間が来て

君は何か言いたげだった。


明日になれば君は

僕を忘れているだろう。

僕という存在は、

君の記憶の中で目覚めることは無い。


願っても存在してくれない。


朝が来たら、僕と君は

何百回目かの自己紹介をする。


君が僕の存在を記憶して

その日が終わる。


永遠にその繰り返しだ。


それでも、愛を伝える。


長年の介護の末に倒れ、

白い病室で過ごす事になった君は、

来月で八十八歳になる。


僕の寿命も終わりに近づくことを

君は知らない。

知っても、記憶は消えてゆく。

いっその事、知らないままでいて欲しい。


朝起きて、誰も自己紹介に来ない部屋で

君が泣かない様に

手紙も写真も、形は残さない。


誕生日プレゼントは

ただ愛を伝えるだけの

優しい願いで許してほしい。


僕は何度でも言うよ。


「おはよう、愛してるよ」

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無形の愛 月見トモ @to_mo_00

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