一章/12話 できない聞き込み
さて、酒場から出て、ラメたちと一旦別行動、になったわけだけども…今僕の隣には、眼鏡をかけた長身の男の人――ボルジアさんがいる。
「え、ええと、あの、なな、なんでわかったんですか?さっき」
「サクラくん、ラメさんと喋るとき以外は本当につっかえてばかりですね。それはそうとして、なぜ先ほど、君が何か考えがあることがわかったですか?」
「は、はい。なんか、別に秘密にしていたわけではないんですけど、言うタイミングがなかったもので…」
「まああの二人の話してる中言うのはちょっと難しいですよね」
わお、同情されてしまった。
「でも、私も昔はそんな感じでしたよ。人と話すのが苦手だったり、何とか声を出して話せても、思うように喋れなかったり」
そうなんだ!今はこんなにしっかりしてるのに。意外だなぁ。
「あ、ちなみになんでわかったかは秘密です」
えぇ……
帽子を買ったお店から酒場へ行った道を、今度は逆にたどっている。
「確かに、まずはあの店主から情報をもらえるか試してみるのがよさそうですね」
ボルジアさんに歩きながら説明したら(この会話だけでも相当な回数、喋ってる途中に噛んでつっかえてしまったが)納得してもらえた。
「こ、これなら、も、もし店主さんが何も知らなくても、そしたら次は帽子を買い取った人、とか、聞き込みできる、かなって」
「でも、もしあの時に私が気づかなかったらどうするつもりだったんです?1人で聞き込みできそうではないですが…」
うう、痛いところ突いてくるなぁ。
「えっと、それはその、あの…考えてなかったです」
「そっか。でも私がいますし、大丈夫でしょう」
心強いなぁ。と、そんな話をしていたら、お店に着いた。
「すみません、店主さんいますか?」
ちょちょ!心の準備をする間もなく、ボルジアさんが店のドアを開ける。
「あぁ?って、なんだよまたお前らかよ!ほんとに反省してるから!申し訳ないと思ってるから!」
言い訳が始まってしまった…
「別にさっきのことできたわけじゃないです。あ、でも帽子のことについてなので実質そうかもしれませんね」
「ああ?帽子だぁ?まさかあれで人が呪われただとか言うんじゃねぇだろうな?俺は忠告しといたかんな!?だから俺の所為じゃねえから!」
「別に誰も呪われたりなんかしてませんよ」
「じゃあなんでまたきやがったんだよ」
ボルジアさんがにこりと笑って言う。
「先ほどの帽子の、元の持ち主について聞きにきたんです」
「なんだ、それを早く言えっての。んで?元の持ち主だよな」
店主さんは少し落ち着いたみたい。
「さっきも言ったが、あの帽子は知り合いから貰ったモンだからそれより前のことなんか知らねえけどよ、とりあえずそいつの店の場所教えるよ」
店主さんが紙に、知り合いの人のお店の住所を書いてボルジアさんに渡す。
「ご協力、ありがとうございました」
次の目的地である、さっきの店主さんの知り合いの人のお店に向かう途中、ふと疑問に思ったことがあったので頑張って聞いてみた。
「あ、ああの、ボルジアさん!」
「ん?どうかしましたか?サクラくん」
これだ、さっきからの違和感。
「えっと、あの、どうして急に、くん付けで呼ぶんですか?」
「ああ、もしかして嫌でしたか?それなら申し訳な――」
「い、いえ!全然そんなことないですけど、ただちょっと気になって…」
なるほど、とボルジアさんが納得する。
「まあなぜと言われても、ただちょっと仲良くなりたいな~って思ったりですけども」
ん?それってつまり?
「理由、特に無し、ってことです」
な、なんか
「えっと、ボルジアさんって…思ったより、その、堅苦しい、感じの人じゃないんですね」
僕がそんなことを言うと、ボルジアさんは一瞬、少し驚いて目を見開いたが、すぐにその目を細めて、
「ええ、よく言われます」
と、優しく答えてくれた。
もう少し歩いたところで、
「あ、見えましたね。あそこが冒険者から帽子を買い取った元のお店ですね」
ボルジアさんが空色の屋根の店の建物を指差す。
「い、行ってみましょう」
僕も答えて、建物に近づいてみる。すると
「なにか張り紙がありますね、ふむふむ…『諸事情により休業します。期間は未定です』と、いや~これは…」
ちょっと困ったことになりましたね、と続けるボルジアさんを見て、通りにいた僕よりたぶん年上の少女が声を掛けてきた。
「あの、うちに何か御用ですか?すみませんがちょっと今、お店が開ける状態じゃなくて…」
「何かあったんですか?」
ボルジアさんが少女に尋ねる。
「ええと、私、ここのお店の主人の娘なんですが、父が、三日前に森に行ってからまだ帰ってきていないんです!」
Key Fantasia たまごろう @tamagorou1221
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