一章/11話 帽子の呪い

 ええと…?

「だからそのひどく不格好な帽子を被ってるそこの魔法使いさんと―――」

へへ、ラメのやつ、帽子のこと言われてやんの、不格好って。

「それから隣の、桃色の髪をしたそこの女の子と――」

よし、こいつ殴ろう。

「あと後ろの背の高い男の人――ってボルジアじゃない!」

え?あ、もしかしてボルジアさんの知り合い?

「ロロ、こんなところにいたんですね」

「そりゃこの時間はお屋敷じゃなくて自分のお店のほうにいるからね」

「いやいま明らかに自分のお店に居ませんよね?」

「う、うっさい!とにかく!その帽子、呪いの帽子だよね!」

ボルジアさんがロロさん?をからかってる。二人は仲がいいんだね。

「え~と、ボルジアさん、こちらの方は?」

ラメが聞いた。

「ああ、この人はロロ。彼女が先ほどから言っていた占い師ですよ。ロロ、こちらがなんと、魔法使いのラメさんと伝説の勇者のサクラさんだよ」

ボルジアさんが紹介してくれる。

「へ~魔法使いと伝説の勇者さんね~って!え!?伝説の勇者!?私の占いの?…って、ボルジア、その嘘は流石にあたしでもわかるよ。だってサクラちゃん?って女の子じゃんど~見ても」

むむむ。

「いいい、や、あの、おおお、男です…」

「え、えと?大男?いやちび助じゃ――」

えい。あ、ついうっかり拳でポカリと一発やっちまった。

「ロロ、相変わらずお客さんに失礼だね」

「なんかよくわかんないまま殴られたうえにそんなこと言われないといけないの!?」



 場所は変わって街の酒場にて。僕たちは今、昼食を食べている。なんで急にこうなったかというと、数分前、僕がロロさんをポカりしちゃったあとで、ラメが、

「あ!私たちまだお昼食べてないんですよ!だから一緒にどうですか?」

って、言って、半ば強引にこの酒場につれて来られた。思ったよりたくさんいろんなことがあって忘れてたけど、よく考えたら僕朝ごはんも食べてないから本当におなかへってたんだよね。まあでもたぶんラメはそんなこと全然気にしないで、ただ自分がおなか減ったから来ただけだろうけども。


 まあそんな感じで今に至る、ってこと。

「へ~、馬車を救ってくれたわけね、その二人が」

ボルジアさんが、さっき僕とラメと出会ったことを説明してくれた。

「えっと、それからラメちゃんは、故郷であたしの占いに似た伝承を聞いたことがある、と…」

「そうなんです。ローズさんに聞いた文章だと、ほとんど同じで…ローズさんの覚えてた占い結果が間違えてたってことは―」

「ないな。聞いてみた感じ、あたしが占って出てきた文章と同じだし、領主さんは記憶力がとっても良いからね」

そうなのか。

「それにしても不思議ですね~あ、あと、この呪いの帽子?については何だったんですか?あとそもそも何で見ただけでわかったりしたんですか?」

確かに、ロロさんは帽子を見ただけで呪いの帽子じゃないかって聞いてきてた。

「ああ、それはね、なんか占い師の勘?みたいな?なんかか感じたんだよね~」

わお、勘が鋭いようで。

「勘で当てたんですか!?なんかこう、呪いが見破れる的な能力をロロさんがもってるとかじゃなくて!?」

これには魔法使いのラメさんもびっくり。

「ロロは占いしか取り柄がないからね~そんな能力なんてもってないですよ」

「おいこら、やるか?その眼鏡たたき割ったるぜ!」

「ロロ、自分も眼鏡かけてるじゃん」

確かに、ていうかボルジアさんそういえば不思議な眼鏡かけてるな。

「ああ、これはちちょっと特殊な眼鏡ですよ。レンズに特別な薬品を塗っているので、ちょっと赤色のレンズになってるんです」

「なるほど、ちなみにどんな効果なんです?」

ラメが聞いてる。確かに気になる。

「それは秘密です♪」

「えぇ~気になる~!」

ラメが子供みたいに駄々こねてる。

「うるさいチビ!」

は!?なんで!

「あ、あとそういえば私たち、『世界一の刀匠』を探してるんです」

あ、話そらした。ていうか確かに村を出るときにそんなこと言ってたかも。でも、僕の剣を直すためと、あともう一個気になることがあるって言ってたけど、ラメは魔法使いなのになんでそんなことに興味を持つんだろうか。

「なになにサクラくん、『なんで魔法使いなのにそんなことに興味を持つんだろう?』とか言いたそうだね」

ご、ご名答…

「そ~れ~は~ね~………」

ごくり、と思わず固唾を呑む―――が、

「――秘密☆」

…まあそうだろうと思ったよ。

「ここにいる人たち秘密多すぎじゃない?」

確かに。ロロさんがもっともなこと言ってる。


「それでロロ、この帽子、呪われてるってだけで他に詳しいことはわからないのかい?」

なんだかんだ言って、結局ボルジアさんが話を戻した。

「う~ん。まあ気配?ていうのかな、それがなかなか強いから、もしかしたら呪いとかのことを詳しく書いてある本とかに載ってるかもよ?」

「ほんとですか!?じゃあいますぐ調べましょう!」

ロロさんの言葉にラメが飛びつく。そんなに気になるのか…

「じゃあ、ロロとラメさんは呪いについて本とかで調べて、その間、私はサクラくんに着いていくとしますか。――何か気になることがあるのでしょう?」

ボルジアさんはそう言って、眼光鋭くこっちを見た。うう、気づいてたんだ。

「ええ~なになに気になる~教えてサクラくん!」

「おーそーだそーだ、教えろ勇者くん!」

ラメとロロさんが詰め寄ってくる。

「ダメです。お二人はしっかり調べといてくださいね」

ボルジアさんが軽くロロさんのおでこをコツンと弾く。

「え~でも、何か聞くくらいはいいじゃないですか~」

なかなかあきらめないラメに、ボルジアさんはウィンクして一言。

「秘密、ですから。ね?サクラくん?」

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