第10話
新芽が芽吹く季節。まだ、朝は肌寒い。
朝日の入る工房の中で
ジゼルは慣れたように、昨日取り損ねた、床に散ったガラスを箒で寄せ集めながら、
始業支度をしていた。
はじめはてんでできなかったジゼルの魔術も
最近では火をつけるくらいのことはできるようになった
これもミルタの教えあってのおかげだ。
ガラスを溶かす釜の中に、なれないながらも呪文を唱え火をつける
その踊る炎を見つめながら、
昨日の夜のことを思い出した。
近所で魔女だと疑われた人物が出たのだ。
しかし、ジゼルにも、ミルタにも彼女が魔女でないということは瞬時にわかった。
魔女は魔術の気配を察することができるようになる。
その女性は裁判とは名ばかりの集団的抑圧を受けて、炎に焼かれた。
ジゼルは鬱々となった。
そして、人が一人いなくなっても変わらずに進む日常を虚しく感じた。
「おはよう、朝からご苦労様。」
声が背後から聞こえた。
振り返るとミルタがいた。
ミルタがポットを魔術で一瞬にうちに温める
「ミルタさん、おはようございます」
ロイが亡くなってから、うまく笑えない時もあったが、今では少しづつ笑顔が取り戻されてきてる。
「朝ご飯にしよう」
ジゼルもミルタに続くように、テーブルについた
ミルタはいつ焼いたのかわからない固くなったパンも魔法で一瞬に温めた。
二人はそのパンと、先程、温められたシードルで朝食を取ることにした。
食事があることは幸せだ。
今でも時々一日一食のこともある。
ましてやあったかい飲み物など。。
「ミルタさん、ここで雇っていただき有難うございます。」
ふぅっと息でシードルをちょうどいい温度にする。
「そりゃそうなるだろう。魔女に今の世間は冷たい」
ミルタさんも魔女裁判のことを思い出したんだ。ジゼルはそう思った。
例えその魔女といわれた人物が、本当にただの人であったとしても関係なく殺される。
私もいつか..ジゼルはふと思った。私がもし捕まってしまったら、ロイにまた会えるのだろうか。。
「ミルタさん、私がもし捕まって、死んでしまったら、ロイのように、また・・・」
ミルタは怖い顔に一瞬なった。それからすぐに真面目な顔になって言葉を続ける
「ジゼル、悪魔は転生するが、、私ら魔女は魂も残らない。そうゆうものなのさ。教えてなくてすまないことをしたね。」
だから、生き抜くしかないということか。人も、魔女も関係なく殺される、人々が疑い合うこの世界で。
ジゼルは、コップを握り締め、冷たい指先を温めた。
ミルタはそれに続くように念を押すように伝えた
「それに魔女と契りを交わすのと、悪魔同士で結ばれるのではえらく違いがある。」
「違いー。それって一体?」
「魔女は結局は悪魔の副産物。悪魔と同列には生きられない。
これはお前にいつ伝えたらいいか悩んでたのだけど、今が時のようだ。
魔女と悪魔では子が残せない。。宿ってもすぐに死んじまうのさ
それに、生まれ変わった悪魔があんたを忘れてしまっていることだってある。
実際、悪魔は悪魔と結ばれるのが幸せって相場が決まってるのさ。」
ミルタはそういうと、決まり悪そうに席を立って、工房部分に向かった。
子どもなんか、ジゼルは、まだ想像もできなかった。ロイが生まれ変わることさえ、想像できてはいない。
ぼーっとしていると、釜の方から声が聞こえた。
「ジゼル!どうしちまったんだい?火が消えてるよ!」
「あ」
おそらく、魔法を唱えながら昨日のことを思い出して、精神が揺れ、それが魔術に影響したのだ。
強い精神、魔力でできたものは時に持ち主が消えても残り続ける。
しかし、弱い魔力でできたものは長い時間持ち越すことは不可能だ。
そして時はすぎ、ジゼルは本能的に自分を魔女にした存在が、どこかで蘇ったことを悟った。
シンデレラの魔女 モル101。 @seia1204
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