第9話
ことのあらましを一通り共有し、ビエールの入ったコップが空になった時。
その職人はコップをテーブルにがっと置いて、
ジゼルの靴を見ながら美しさにため息を吐くように言った。
「あの子は本当にあんたのことを愛していたんだね。
そうか、それで死んでしまったのか。」
ミルタはその事実を噛み締めるようにもう一度念を押したように言い返した。
ジゼルの頭の中にロイがあっという間に自分の腕の中で灰になったあの瞬間が思い出された。
「ロイが死んじゃうなんて私、私知らなくてっ。ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい!」
ジゼルはやり場のないロイへの想い。ロイを育てたミルタへの謝罪。自分自身の負債を反復した。今まで思っていて、思い出したくなかった想いが溢れた。
「お嬢ちゃん、死ぬことはあいつが決めたことさ、あんたが悪く思うことないよ。」
ミルタはそっとジゼルの肩に手を置いた。
「でも、それは私があの病気を罹ってしまったせいでっ!」
「お嬢ちゃん、それ以上は言ってはいけんよ。ロイの死が無駄じゃなかったそれを知れただけで私は良かったと思っている。
ごめんなさいと言う言葉は、ロイは悲しむよ。だから、言わなくて良い。」
シャルルもその様子をじっと見守っていた。
「あいつは私と同じ悪魔の血を注ぐ者だったからね。好きな人ができたって教えてもらったんだ。その時から、こうゆうふうになることは想定済みなのさ。
そして、私はロイの相手つまりジゼル、お嬢ちゃんのためにこのガラスの靴を作り上げたんだよ。」
ガラスの靴が夕日に当たって煌めいた。
ミルタはビエールを一口飲んだ。
「お嬢ちゃん、これからどうするんだい。」
「私、この街のどこかで、住み込みで働きながら暮らそうって思ってます。」
それを聞くとミルタはにやっと笑って立ち上がった
「じゃあ、決まりだね。ちょいとほこりがかってるが、二階に空き部屋がある。今から掃除すりゃ、寝る前には多少使えるようになるさ。仕事は明後日から!いいかい?」
ミルタの発言に一瞬戸惑ったジゼルだったが、その次の瞬間急に赤面した。
ジゼルのお腹がすごい音でなったのだ。
「はははっ!!夕飯は今から食べに大通りにでも行くか!今日は歓迎会だ!」
ミルタの豪快な笑いののちに、
「ああっ!あっ、ありがとうございます!!」
先程、感謝の意のタイミングを失ったジゼルが慌ててお礼を言った。
こうしてジゼルはミルタのガラス工房で住み込みで働きながら
魔女として生きていく術を学ぶこととなった。
🐈⬛🌒🐈⬛🌒🐈⬛🌒🐈⬛🌒🐈⬛🌒🐈⬛🌒🐈⬛🌒
応援、書き進める力になっております!ありがとうございます!
次回は来週末にまた更新していきます((。´・ω・)。´_ _))ペコ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます