ふるさと賛歌
喉がからからになるほど、
呪いの村のことを。『いいか、できるだけたくさんの人々に告げ回るんだぞ。そうすれば、物珍しさにのこのこやってくる旅人が増えるはずだ。村興しにはこういう奥の手が一番だからな』
一緒に都に上ってきた仲間たちは先に帰っていったのか、ともに野宿していた洞穴には誰の姿もなかった。
……その夜、畔人は、ふる里への帰途についた。
道なき
やがて訪れるにちがいない都の人々のために、草木をなぎ倒し、歩きやすいように道の
『わしの
と、顔を合わせるたびに言い聞かされてきた。そのことは村のみんなも知っているから、仲間たちは意地悪で先に帰っていったのだろうと、畔人は察していた。
ふる里に近づくにつれ、いまだ
(なにかあったのか……)
その迷いを一瞬のうちに打ち消し、畔人は寄り道をせず村長宅へ急いだ。
小窓から中を
「なんだ、
素直にうなづいた畔人は、手渡された人間の脚にガブリと喰らいつつ、一方で冷静にこんなことを考えていた。
(……呪いの村だなんて、呼び方があたり前すぎる。もっと、こう、耳にした人間どもがドキドキワクワクするような村の名にしたいもんだ)
( 了 )
読切り掌篇小説集【漂泊する時系列】✱各話読み切りです。お好きなタイトルからどうぞ😶🌫️🫣 嵯峨嶋 掌 @yume2aliens
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