伝奇
梅田 乙矢
1
私の住んでいる町に「うっくぁゆる」という都市伝説がある。
うっくぁゆるは、いつの間にか現れて
目を合わせたら殺されてしまうらしい。
殺されないためには目をつぶり寝たふりをする。
そうすると諦めて帰っていくそうだ。
そんな小学生の時に聞いた怖い話を
昼間の暖かい日差しが差し込む窓辺で
思い出していた。
今日は冬だというのにとても暖かくて
心地がいい。
すると、何かの気配がする。
どうやらそれはこちらに向かってきているようだ。
私は うっくぁゆるが来たんだと
うたた寝しながらも瞬時にさとった。
最初から寝ていたんだし、このまま寝たふりをしていよう。
私は目をつぶり うっくぁゆるが去っていくのを待っていた。
しばらくすると気配が消えて何も感じなくなった。
静かな午後が戻ってきたようだ。
さて、眠気覚ましにコーヒーでも飲もうか。
ぼんやりした頭のまま目を開きキッチンへ向かおうと腰を上げる。
すると、目の前に白い髪を振り乱し、白いひげがボサボサの見たこともない人が
ギラギラとした目でニヤつきながら立っていた。
私は呆気にとられて見ていたが、気が付くと胸を枝切ばさみで刺されていた。
薄れゆく意識の中で うっくぁゆると目を合わせるなと言う言葉が頭に浮かんだ。
しまった…やってしまった…
それが最後に浮かんだ言葉だった。
この町には うっくぁゆるという生き物がいる。
うっくぁゆると目を合わせてはいけない。
合わせてしまえば殺されてしまうよ。
現れたときは目をつぶり寝たふりをするんだ。
うっくぁゆるは、この町に代々住んでいるちょっと変わった血筋の人達でさ、
何ていうか…言い方悪いけど、
気がふれているのさ。
だから知らないふりして、目を合わせないようにしとかないと殺されちゃうのさ。
なんで、野放しにしているかって?
どこにいるのかも分からないし
目を合わせたらみんな殺されちゃうからな。
伝奇 梅田 乙矢 @otoya_umeda
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