第108話
『グォオオオオオオ!!!』
「さて…そろそろ倒すか…」
俺は様子見をしている白竜を見据え、腕まくりをする。
こいつの能力は二つ。
毒ガスと脅威的な回復能力。
他に能力があればもう使っていてもおかしくないし、この二つのみと思って問題ないだろう。
(今の所通用しそうな攻撃は…)
俺は頭の中でこの白竜の攻略方法を考えていく。
一番有効そうなのが、巨大な爆発で一撃で仕留めることだ。
何か、ビルを爆破できるほどの爆薬でもあれば、おそらく回復する間も無くその巨体を木っ端微塵に吹き飛ばすことができるだろう。
後は、一瞬で巨体を斬撃により細かく刻む……とかも有効な攻撃になりそうだ。
一撃で原型を留めないほどにその巨体を切り刻めば、流石にそこから再生することは不死身でもない限り難しい。
あるいは体のどこかにあるであろう核をピンポイントで破壊するとかか。
(どれが良いかなぁ…)
いろんな倒し方が出来そうな攻略し外のあるドラゴンである。
幸いなことに、白竜はよほど慎重な性格なのか、自分からは仕掛けてこないので、俺は十分に作戦を練ることが出来た。
“こいつ自分からはこないな”
“神木ー?どしたー?”
“何これ。達人同士の睨み合い的な?”
“こいつの回復力、底なしか?”
”体のとこかに弱点があるパターンかな?“
”こいつマジでどうやって倒すんだ?“
”神木サー・改が効かないモンスターか。やっぱ深層ってやべーな“
“ここって攻略済みダンジョンだろ?ここを攻略した連中はどうやって倒したんだ?”
“この白竜を倒して最初にこのダンジョンをクリアした奴らのことがめっちゃ気になる”
“何かしら弱点はありそうだよな”
“このダンジョン、最初にクリアしたのは政府らしいぜ”
“調べたらこのダンジョン、民間じゃなくて政府がクリアしてたわ。民間のみでのクリアはまだっぽい”
“マジかよ”
“じゃあ神木がクリアしたら民間初じゃん”
“こいつまた前代未聞の記録作ろうとしてんの?”
コメント欄では視聴者たちが、この白竜の攻略方法などについて色々議論している。
どうやらコメント欄の情報を総括するに、このダンジョンはかつて政府自らが攻略に乗り出し、攻略済みダンジョンとしたらしい。
これまで民間のみでクリアされた実績はないらしく、もし俺がクリアすれば、このダンジョンを攻略した初の民間人となれるらしい。
(いいね。俄然やる気が出てきた)
民間の誰も攻略してないダンジョンの初の民間攻略者になれば、それは十分な実績とあ
る。
もちろん配信においてプラスに作用するだろう。
同接も白竜と対峙してからじわじわ伸びていて現在185万人。
あと15万人で200万人達成である。
(こいつ倒したら、200万人超えるかな?)
俺はそんなことを考えながら、白竜を見据えた。
『グギャアアアアアア!!!!』
白竜はさっさとかかってこいと言わんばかりに俺に向かって吠えてくる。
「素手で……やってみますね」
俺は剣を鞘に収めて、拳を作る。
イメージするのは、巨大建造物を粉微塵にするほどの爆発。
おそらくここを攻略した政府の人間たちは、このドラゴンを、軍艦を爆散できるほどの火力で仕留めたと思われる。
要は回復すら許さないほどの圧倒的な火力を……拳で再現すれば良いのだ。
“ファッ!?素手で…!?”
“大将何をするつもりですか…?”
“いやいや、流石に無理があるやろw w w”
“くるぞ”
“来たか…?‘
”まーた、無茶なことを…“
コメント欄に「流石に素手は無理があるだろ」という呆れのムードが漂い出す。
俺は彼らにしっかりと自分の算段を説明する。
「ヤケクソになったわけじゃなくて……俺に考えがあるんです。多分、ここを最初にクリアした政府の人間たちはこのドラゴンを……尋常じゃない火力……それこそビルを一棟爆破したり、軍艦を破壊したりできるほどの爆薬で仕留めたんだと思います。銃弾やロケットを打ち込んだぐらいじゃこいつは死なないと思うので。だから……俺も同じようにしようと思ったんです」
”は?“
”ん?“
”え?“
”お?“
“何言ってんだこいつ?”
“今なんて?”
“ん?w”
”w w w“
”また意味不明なことを…“
”このパターン知ってる…“
”同じようにってなんだよ“
“お前爆薬なんて持ってないだろ”
“マジで何言ってんだ?頭おかしくなったのか?”
“初見です。この人はバカですか?”
「思いっきり拳を放って衝撃波で、ドラゴンの全身を消しとばす……こうすれば多分再生能力の発動を回避できるんじゃないかと俺は考えました」
“うーん、このw”
“脳筋すぎるw”
“無理に決まってんだろw w w”
“だめだこいつw w w早くなんとかしないとw w w”
“大将がおかしくなっちゃった;;”
“神木;;お前ついに頭が;;”
「と言うわけで……行きます」
俺は目を閉じて、グッと姿勢を低くする。
『グォオオオオオ!!!!』
白竜が何かを感じたのか荒ぶり出す。
俺は集中し、全身を収縮させてエネルギーを貯める。
イメージするのは神斬。
現在俺が持っている最強の攻撃手段。
あのエネルギーを……そっくりそのままパンチに応用する。
そう、もしこの技に名前をつけるのだとしたらそれは……
「神拳!!!!」
ボッ………
『……ッ!?』
音はほとんどなかった。
俺が本気で拳を振り抜いた直後、目の前に黒い渦のようなものが出現した。
どこまでも黒く、全てを飲み込みそうなその黒い渦が消えた後には、そこにいた白竜は跡形もなく消えていたのだった。
〜あとがき〜
新作の
『親友が突然この世界はゲームだと言い出した件〜前世の記憶を持つ主人公の親友ポジの俺、腰巾着として楽に無双〜』
が公開中です。
内容は、
•よくあるゲームキャラに転生するラノベ主人公の親友ポジにスポットを当ててみた
と言う感じです。
一風変わった無双物語として楽しめますので、ぜひよろしくお願いします。
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