第107話


『グォオオオオオオオ!!!』


「さて、どうするか…」


俺は傷を完治させ、回復した白竜と対峙する。


今の所判明しているこの白いドラゴンの能力は二つ。


再生能力と全身から噴出される毒ガスである。


反対に、これまで戦ってきたドラゴンに見られたような高い防御力や、ブレスによる攻撃は今の所ない。


毒ガスは近づかなければ喰らうことはないだろうし、再生能力をなんとか攻略できれば、勝利が見えてくるだろう。



“いけえええええええ”

“大将ぉおおおおおおおおおお”

“うおおおおおおおおおおお”

“神木なら勝てる”

“切り抜き待機”

”面白くなってきたあああああああ“

”やっぱドラゴンとの戦いは熱くなれるな“

“このドラゴンの情報がネットに落ちてないか、探してみるか”



コメント欄も、深層最強格のドラゴンとの対決に盛り上がっている。


俺はこちらの出方を窺うかのように、赤い目を細めている白竜を見た。


「とりあえず再生能力がどの程度か見てみるか……神木サー・改」


毒ガスがあるため、あまり近づきすぎるわけにはいかない。


というわけで俺は神木サー・改を使ってみることにした。



ズババババババババ!!!!


『ギシェェエエエエエエエ!?!?』


白竜が悲鳴をあげる。


無数の斬撃が白竜に襲いかかり、その柔らかい肉を削り取っていく。



“神木サーきたあああああああ”

“神木サー・改きたああああああ”

“ゴリ押しで草”

“いきなりパワー技きたああああああ”

“どりゃあああああああああ”

“効いてる効いてるw”

“効いてるぞぉおおおおおおおお”

“うおおおおおおおおおおおおおお”



神木サー・改の与えるダメージが、白竜の回復力を上回れば、削り切れる。


そう思い俺は神木サー・改で無数の斬撃を繰り出し、ひたすら白竜の柔らかい巨体を削りまくる。



『グギャアアアアアアアアア!!!!』



長らくダンジョンに白竜の悲鳴が轟く。


もうそろそろ死んでも良さそうなのに、一向に死ぬ気配がない。


確かに俺の攻撃は効いているし、白竜は痛がっている。


しかし絶命するまでに至らないところを見るに,どうやら神木サー・改によるダメージよりも、白竜の回復力の方が上回っているらしい。



「すごいな」


俺は動きを止めて白竜を見た。



『グォオオオ…ォオオオオ…』



力なく鳴く白竜は、全身から煙を上げていた。


巨体のあちこちに出来た斬痕は瞬く間に塞がっていく。


驚異的な回復力だ。


神木サー・改のみで殺し切ることはどうやら出来そうにない。



“耐えたああああああ!?!?”

“ファッ!?マジかよ!?”

“つっっっっっっっっっっよ”

“耐久どうなってんねん!?”

“耐久おかしいだろ”

“たいきゅうっつうか回復力だな。削っても削っても再生する”

”治るの早すぎやろ“

”えっっっっっっぐ“

”今までで一番の再生能力持ちじゃないか?“

”さすが竜種だな。一筋縄ではいかない“

”大将…?どうするんですか…?“



視聴者たちも、白竜の脅威的な回復スピードに驚いているようだ。



¥10,000

“大将!!おそらく神木サー・改によるダメージと白竜の回復力が拮抗しています!!削っても削っても無限に回復してます!!これではまるで永久機関です!!ノーベル賞が受賞できるかもしれません!!”



「スーパーチャットありがとうございます……ええと、はいはい、そうですね。俺の与えたダメージと向こうの回復力が拮抗していてなかなか勝負がつきません…何か他の手を考えないと……いや、永久機関ではないんじゃないかな?ノーベル賞は流石に意味がわからないです」


こんな時だというのに視聴者から意味不明なスパチャが飛んできた。


永久機関だのノーベル賞だの一体なんのことだろうか。



¥30,000

”大将大変です!!その白いドラゴンめっちゃ強いやつです!過去に政府が組織した特殊部隊がそいつに壊滅させられかけて、内閣が傾いています!!その時の映像がこれです!!ダークウェブに落ちてました!!当時の政府が、支持率向上のために部隊が深層モンスターと戦うところを撮影させていたみたいです!!!リンク↓”



「あ、スパチャありがとうございます…え、政府の特殊部隊が壊滅…?どういうことですか?」


白竜は自分からは決して仕掛けてこようとはしなかった。


守りの体制になり、俺の出方を見ている。


俺は神木サー・改で少し上がった息を整えながら、視聴者がもたらす情報を吟味する。


ある一人の視聴者がスパチャと共に興味深い

動画のリンクを送ってきた。


その動画では、特殊スーツに身を包んだ男たちが、白竜と撤退戦を繰り広げていた。


動画は怒号と悲鳴に満ちていた。


どうやらその部隊は、過去に政府がこのダンジョンを攻略するために派遣した特殊部隊らしく、毒ガス攻撃を喰らって撤退戦を強いられいていた。


映像は、当時の政権がダンジョンを攻略する様子を映像で公開し、支持率を上げるために撮影したものらしく、結局部隊が敗走したために公開されなかったようだ。


それがどういうわけか、ダークウェブに落ちていたということで、視聴者が探してきて俺に見せてくれた。



“大将!調べたんですけど、過去にそんな事件があったっぽいです”

”大将!!!そいつのせいで当時の政権与党は支持率ガタ落ちしたっぽいです!!!“

”日本の政治を揺るがしたドラゴンw w wつっっっよ“

“そら、この回復力は初見ではきついわな”

“こいつを通常兵器で殺そうとしたら相当な火力が必要だぞ。多分銃弾とかじゃ無理だろうな”

“政府はいまだに認めてないけど、マジでそいつ一回政府が組んだ部隊、敗走させてるらしいな”

“倒したら政府超えじゃん”

“通りで強いわけだ”



「よ、よかった…動画流さなくて…」


俺は視聴者から送られてきた動画を裏画面で見ていたことに安堵する。


もし政府が隠そうとしている失態を、百万人以上の前で公開してしまっていたら、間違いなく目をつけられていただろう。


「えーっと…なんかよくわからないけど、とりあえずすっっごい強いモンスターってことで良いですか?」


政府の特殊部隊だの、支持率だの、色々面倒だ。


とりあえずこの白竜は、相当強い。


俺は視聴者からもたらされた情報をそう、総括した。



“正解”

“正解”

“草”

“雑にまとめたなぁ”

”いやまぁ、そうなんだけど“

”倒したら政府超え“

“解散総選挙ドラゴン倒そう”

“このドラゴンのせいで解散総選挙やってんの草”

“この国大丈夫かw”

“モンスター如きで政権がぐらついてんのマジで草”

“早く倒して日本政府越えようぜ”

“神木拓也が最強であることを証明しよう”



かつて政府が組織した部隊が負けたこともあるモンスターと聞いて視聴者も乗ってきた。


同接もぐんぐん上がり、現在は180万人。


冗談抜きで200万人という前代未聞の数字も見えてきた。


「さて、やりますか…」


パキポキと指を鳴らす。


『グォオオオオオオ!!!』


白竜は相変わらずじぶんから仕掛けるつもりはないのか、様子見をしている。


俺は久々に本気を出すことにした。







〜あとがき〜


新作の


『親友が突然この世界はゲームだと言い出した件〜前世の記憶を持つ主人公の親友ポジの俺、腰巾着として楽に無双〜』


が公開中です。


内容は、


•よくあるゲームキャラに転生するラノベ主人公の親友ポジにスポットを当ててみた



と言う感じです。


一風変わった無双物語として楽しめますので、ぜひよろしくお願いします。


リンク↓


https://kakuyomu.jp/works/16817330657021256327





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