第103話
ドガァアアアアアアン!!
ドゴォオオオオオオン!!
ダンジョン内を轟音が蹂躙し、グラグラと地面が揺れる。
大陸服の格闘系モンスターは、ぴょんぴょんとウサギのように飛び跳ね、顔面のお札を揺らしながら、無造作に拳を振り抜く。
簡単な動作で放たれた拳は衝撃波を発生し、ダンジョンの壁を削りながらこちらに襲いかかってくる。
特にタメもなくノーモーションで打っているはずなのになかなかの威力だ。
俺も同じく拳による衝撃波で応戦する。
ドガガガガガガ!!!!!
両者が放った衝撃波が、中間地点で衝突し削り合う。
余波がダンジョンの壁や地面を削り、砕けた岩が周囲に飛び跳ねる。
“うおおおおおおおおおおおお”
“なんだこの熱いバトルは!!!”
“いけぇええええええええ”
大将負けるなああああああ“
”おせええええええええええええ“
”すげええええええええええええ“
”異次元すぎるw w w w“
”えっっっっっっっっっっっっぐw w w”
“ファーーーーーーーーーw w w”
”バトル漫画どころじゃないぞw w w“
”超次元バトルw w w“
かつてない脳筋なバトルに、視聴者は大盛り上がりだ。
コメントがものすごい勢いで流れ、同接もどんどん増えていく。
(ありがたいなぁ)
拳の撃ち合い、衝撃波のぶつけ合いをしながら、俺は向こう側に見える大陸服の格闘系モンスターに密かに感謝した。
深層第二層で出てきたデュラハンが期待外れだったからな。
ここ第三層で強いモンスターと巡り会えて本当に良かった。
同接が美味しい。
先ほどまで110万人を超えるか超えないかと言うところだったが、戦闘が始まってから一気に増えて現在は130万人を突破している。
やはりわかりやすい力での殴り合いは絵になる。
「さあ、どんどん行こうぜ!!!」
格闘系モンスターは、パンチの威力をどんどん上げていく。
俺もそれに伴ってどんどんパンチの強さを上げていき、戦いはさらなる高みへと昇っていく。
”おいおいおいおい、どこまでいくんだ!?“
”ダンジョン壊れるってw w w“
”なんかパンチの速度も威力も上がっていってるってw w w“
“マジでこの二人どこまでいく気だよw w w”
“こうなってくると二人の戦いにダンジョンが耐えられるかが心配だな”
“神斬使えば一瞬なのに、あえて殴り合うのはやっぱり大将エンタメわかってるねw”
“うーん、漫画みたいな頂上決戦をお茶の間でくつろぎながら見れるこの時代に感謝”
“マジでこいつの戦いいっつもCGバトルみたいだよな。現実味がないんだよ”
”神木以外にも拳で衝撃波出せるモンスターがいることに驚きだし、それに余裕で対応できる神木もやべぇよ“
“最後は大将が勝つと信じてる”
“これ、力は拮抗してるのか?流石に神木が手加減しているだけだよな?”
“多分神木が相手のレベルに合わせて少しずつ強い拳を打つようにしてるんだろうな。一発で決着がついたらつまらないから”
“俺にはもう凄すぎて、どっちが強いとか余裕があるとかわかんねぇよ…”
“音やばすぎて音量最小にしたわw w w”
『クケケケケケケ』
ついてこられるかとばかりに拳の速度、威力を上げていく格闘系モンスター。
俺はちょうど衝撃波が相殺されるように、相手のレベルに合わせて拳の強さを上げていく。
せっかくこんな面白いバトルになったんだ。
一瞬で決着がついたら面白くない。
出来ることなら、このまま後一時間ぐらいは、ずっと拳の威力を少しずつ上げながらこいつと戦っていたい。
「ん?」
『クケケケケ』
俺がそんなことを考えながら衝撃波を放っていると、突然格闘系モンスターが動きを止めた。
何か小馬鹿にするような笑い声を上げながらぴょんぴょんと飛び跳ねている。
「どうした…?もう終わり、じゃないよな…?」
『クケケケケ』
まさか体力が尽きたのだろうか。
俺が心配しながらそう尋ねると…
『クケケケケ!』
ボッ!!!!!!
格闘系モンスターが、突然自身の真横に向かって拳を放った。
今までよりもさらに一段強いパンチだ。
鋭い衝撃波が、真横の岩をごっそり消しとばし、巨大な穴が開く。
『クケケケケ』
お前にこれが出来るか?
そう言いたげな感じで格闘系モンスターは俺の方を向いた。
“すげええええええええ”
“はあああああああ!?”
“なんだそれ!?”
“岩が消えた!?”
“えっっっっっっっっっぐ”
“反則やんそんなの…”
“なんだ今の!?”
“今までのは手加減だったって、こと…?”
”ファッ!?“
”こいつつっっっっっっよ“
”やばすぎだろ…“
”た、大将…?まさか負けないよな…?“
”神木?大丈夫だよな…?“
格闘系モンスターの披露してきた拳の威力に、視聴者たちが心配そうなコメントを打ってくる。
俺はそんな彼らに心配の必要はないと、自身も真横に向かって拳を放った。
ボッ!!!!
俺の右のダンジョンの壁がごっそりと消失する。
”きたあああああああ“
”うおおおおおおおおおお“
”神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!“
”やっぱ大将もできるんじゃん“
”せーーーーーーふ“
”お前ら神木が負けるはずないだろ“
“当然のように同じことが出来る神木w w w”
”っぱ大将よ“
「今度はこれぐらいの威力で打ち合おうってことだな?」
俺は格闘系モンスターの意図を察して、そう尋ねた。
『……』
格闘系モンスターが急に無言になった。
ぴょんぴょんと飛び跳ねるのをやめて、俺に体を向けたまま動きを止める。
「あれ?どうした?」
驚いているのだろうか。
表情がないのでわからない。
先ほどわざわざ拳を真横に放ったのは、戦いを次のステージに上げようってそう言うことじゃなかったのか?
『ク…』
「く…?」
『グゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!』
「うおっ!?」
突然壊れてしまったかのように、格闘系モンスターが奇声を上げ始めた。
そして何かに怒っているのか、俺に向かってがむしゃらに拳を放ちまくる。
ボッボッボッボッボッ!!!!
ボボボボボボボボ!!!!!
いい加減拮抗した拳の撃ち合いに飽きたのか、先ほど壁を消失させた威力の拳を連打で放ってくる。
「お、やる気になったな!」
少しずつ上昇していくと思われた戦いのステージが一気に上がった。
俺は嬉々として、ステージの上がった戦いに参戦していく。
ボボボボボボボボボ!!!!
格闘系モンスターと同じ威力で拳をぶつけ合う。
バァン!!
バァアン!!!
バァアン!!!!
俺たちの放った鋭い衝撃波が、ちょうど中間地点でぶつかり合い、何かが破裂するような音が鳴る。
ダンジョンの壁や地面や天井が、削れるのではなくどんどん消失し、消し飛ばされていき、ダンジョンの通路がどんどん広がっていく。
「いいねえ。こう言う戦いも悪くない」
『グゲゲゲゲゲゲゲ!!!!』
今までの深層モンスターが、不意打ちみたいな能力が多かった中で、ここまで真正面から挑んでくる深層モンスターは新鮮だ。
おかげさまでコメント欄も大盛り上がり。
同接も140万人を突破した。
俺はこの格闘系モンスターに感謝しながら、向こうが放ったのと同じ数だけ拳を放っていく。
うっかり一発でも多く放ってしまうと戦いが終わってしまうかもしれないからな。
「ん…?」
最初とはステージが異なる拳の撃ち合いをしばらくしたところで、不意に格闘系モンスターが動きを止めた。
まるでない口から荒い息を吐くようにガックリと項垂れ、地面に膝をついている。
「え…もう終わり…?」
予兆はあった。
拳の威力のステージを上げてから、このモンスターは全然拳の威力を上げようとしなかった。
…まさかあれが限界だったのか?
俺はてっきりここからさらに戦いを高みへと進めていこうということかなと思ったんだが。
『グ…グゲ……グゲゲゲ…』
モンスターがブルブルと全身を震わせながら、ゆっくりと顔をあげて俺をみた。
俺はそんなモンスターを見下ろせながら首を傾げた。
「立てるか?まだ出来そうか?」
『クキイイイイイイイイ!?!?』
「え…」
俺がそう尋ねた瞬間、モンスターは鋭い悲鳴をあげて逃げ出し始めた。
「おい待てよ」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら脱兎の如く逃げていくモンスターに、俺は拳を放った。
ボッ!!!
グシャ…!
『クケ…
「あ…」
引き留めるつもりで軽く衝撃波を放ったつもりが、直後までの威力でかなり強い拳を打ってしまった。
そのせいで、鋭い衝撃波がモンスター目掛けて飛んでいき、クリティカルヒット。
全身がトマトのようにペシャッと潰れてしまった。
「やっちまった……」
同接を稼ぐためにこのモンスターとの戦いは引き伸ばしたかったのに、思わず倒してしまった。
『……』
ペシャンコになった格闘系モンスターの死体がパタンと地面に倒れ、そのままダンジョンに回収されていく。
「やっちまった…」
ダンジョンの床が生き物のようにうねり、モンスターの死体を吸収していく中、俺はやらかしてしまったと頭を抱えるのだった。
〜あとがき〜
新作の
『親友が突然この世界はゲームだと言い出した件〜前世の記憶を持つ主人公の親友ポジの俺、腰巾着として楽に無双〜』
が公開中です。
内容は、
•よくあるゲームキャラに転生するラノベ主人公の親友ポジにスポットを当ててみた
と言う感じです。
一風変わった無双物語として楽しめますので、ぜひよろしくお願いします。
リンク↓
https://kakuyomu.jp/works/16817330657021256327
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