もしもし
尾八原ジュージ
もしもし
「私、自分の実家が苦手で。
みんな凄く仲がいいんだけど、どうしてか私だけ反りが合わなくって。クリスマスとかお正月とか絶対家族で揃って過ごすし、友達とのクリスマスパーティーに行きたいとか言うと叱られるの。もっと家族を大切にしなさいって……でも家族で過ごしてても、いつの間にか私だけポツンになってるのね。とにかく反りが合わないの。
だから私、遠くの大学行ってそこで就職して、あんまり帰らないようにしてたわけ。年末年始なんかわざと海外旅行行ったりして。そうすると嫌味っぽく電話なんかかけてくるんだけど、でもたまにだからね。適当に受け流してたの。
そしたらある年の年末に警察から電話がかかってきて、実家が火事で焼けちゃったっていうのね。で、両親も祖父母も兄も姉もみんな死んじゃった。
でもね、今でもたまに電話がかかってくるの。実家の家電の番号から。あとで履歴見ると消えてるから、ただの夢なのかもしれないけど。
その電話を取るとね、無言なの。でも急に周りが焦げ臭くなるの」
ちょっとごめん、と言って彼女が席を立った。
「電話してくる」
そう言って取り出したスマートフォンは、振動もしていなければアラームも鳴っていない。だが、彼女が真っ黒な画面をタップしてもしもしと言った途端、辺りに焦げ臭い匂いが充満した。
もしもし 尾八原ジュージ @zi-yon
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