第11話 チョコバーと女の勘!

 安斎あんざい遼也りょうやなかばやけくそで投げたチョコバーをキャッチしてしまったのは、俺のすぐ近くにいた乗崎じょうさき麗夏れいかだった。


 放り投げた当人とうにんは、ディープスコールオークがそのチョコバーに釣られて俺たちの方に物凄い勢いで迫っていくのを見て、歓喜の声を上げていた。


「やったぜ! オレってばやっぱ天才っ! おい、べちょべちょのグロい化け物! チョコバーは特別にくれてやるから、そのまま!」


 自分が危機を無事回避できた喜びでテンションが上がっていることを考慮しても、完全にその遼也の発言は


 遼也は俺たちがやられるところをその目で見たかったらしいが、仲間たちに手を引っ張られて、結局は渋々その場を逃げ出していった。


 そして、俺たちの近くにいた他のクラスメイトたちも蜘蛛の子を散らすようにみんないなくなってしまった。


 遼也っ!

 悪いけど、今度会った時は容赦しないからなっ!


 俺が密かにそんな決意を固めていると、


「つい受け取っちゃったわ。でも、これ、どうやらあの魔物の好物みたいね」


 と、乗崎 麗夏はこんな状況でも冷静に言った後、俺の方を見ながらこう尋ねてきたのである。


「ねえ? あの魔物が襲ってきても


 本当に手が届くほどすぐ近くでの吸い込まれそうなほど美しい碧眼へきがんに見つめられると、自分の全てが見透かされているような気になってくる。

 なぜかはよくわからないが、乗崎 麗夏は俺のことをかなり信頼しているらしかった。そして、その女の勘のようなものは、完全に当たっていたのだ。


 しかし、今違う。

 俺はつい好奇心でのだから。

 今の俺はあの漆黒のオークより確実に弱い。

 少なくとも、あと5、6分は。


 俺はついさっき、また自分のステータスをあの漆黒のオークを倒せるギリギリまで上方修正したのだが、それがちゃんと採用されるまで、あの天の声のおっさんの話では、あと5、6分は必要なはずだった。


 つまり今の俺の強さはF級。


 敵は少なくともD級。


 普通に考えたら、とてもかなう相手ではない。でも、やりようが全くないってわけでもなかった。


麗夏れいかちゃん! 早くそのチョコバーどっかに放り投げちゃいなよー! そんなの持ってたらホントのホントに危ないよー! みんなも逃げちゃったし、阿香里あかりたちも早く逃げようよー!」


 秋野あきの 阿香里にそう言われても(古堂こどう美冬みふゆは何か言いたげな顔をしていたが終始黙っていた)、乗崎 麗夏はそのチョコバーをかたくなにグッと両手で握りしめていた。


 この子、俺のことを試そうとしている!


 俺はその時、そう確信したのだった。


  

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第11話も最後までお読みくださりありがとうございます!


ここまで読まれて、もしちょっとでも「なんかおもしろそう!」「これは期待できるかも!」と思っていただけましたら、☆☆☆評価をしていただけるとめちゃくちゃうれしいです!

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