お題は虹、プリズム、ジェラシー、忘れかけた記憶

彼方のカナタ

想像による星の願い事と日常の小さなお話


「星が綺麗ね」


誰かが言った。


「うん。」


もう一人が言った。


「ねぇねぇ父さん。あの星はどのくらい遠くにあるの?」


さらに、もう一人が言った。


「さぁ、父さんにも分からないな~。けど、とってもとっても遠くにあるんだよ。」




太陽系から最も近いとされる恒星は「プロキシマ・ケンタウリ」とされている。それは恒星の中では最も大きさ、質量共に小さいとされている。しかし、それは「赤色矮星」と呼ばれる種類の星で、実視等級が11等である。よって肉眼で見ることは出来ない。ただ、光の強さが弱いわけではない(他の恒星と比べると弱いのだろう)。地球との距離が約4.246光年という長い長い距離だからだろうか。私は詳しくないので、原因等は分からない。が、その距離は驚かされた。1光年は光が一年で進む距離であるが、大体、9兆5000億kmだと言われている。では、プロキシマ・ケンタウリまではどのくらいの時間をかければ行く事が出来るのだろうか。現代のテクノロジーを最大限活かしても、最短約6300年。そう言われている。今、地球から宇宙船で出発しても、着くまでに何世代も必要であり、その間に必ず、船体が故障してしまうだろう。

今私達に「見えている」星は遠くに存在する。

先程述べた様に、最も近くてもあれである。プロキシマ・ケンタウリから光速でも、4年かかるのだ。もしかしたら、もう既に無くなっているかもしれない。でも、私達が見ているのは4年前の姿である。他の星は更に更に遠くにある為、遥か前の姿を私達は観測している。宇宙は138億年前に生まれたと考えられている。であるならば、私達が見ている星の中には、それに近い年数昔の物もあるかもしれない。しかし、その近くにもし、生命体が生息している星があるならば、揺るぎない真実であるものが、忘れられた、または忘れかけられた記憶になっているだろう。逆に遥か彼方で今生まれたと星の事を私達は知らないし、知る術も無い。

つまり、本当にあったとしても、忘れられている、本当にあるとしても、知られていない。そんな可能性があるのだ。

妻と娘の些細な発言で、考え込んでしまった。



帰宅。2泊3日の旅行から帰ってきた。


「ただいま~」


娘が家に入っていく。


「おかえり」


それに応える声が微かに聴こえた。


「星キレイだったよ!」


元気な声が響く。



地球温暖化が叫ばれている現代。夏は避暑地が人気の旅行先となる。私の家族も学校行事で忙しかった息子を除いて、その避暑地にお世話になった。

私は最近、「もしも」の世界を考える事が小さな楽しみとなっている。今回の旅行で、去年考えていた「もし全ての物に意思があるのなら」という事を少し思い出した。光は波であるので有り得ない話なのだろうがもし「光に意思があったなら」その世界はどのようになるのだろう。人間以外の「言葉」を発せられる生命体がいないなら、光を、その美しさを褒める者は人間のみである。ただ、全ての光に意思があるので、その光たちは、人間によって褒められ、認められるのだろうか。そうなるならば、人間に見られない光は、使われないまたは知られていない光は、有害だと言われる光は、酷く傷つくだろう。人間に見られ、使われ、美しい、便利だ、と言われる光に嫉妬ことになるのだろう。光はそれぞれ波長が異なるだけなので、自らがその波長であることへの思いも持つことになる。人間とよく似ている。しかし、光は人間に気持ちを伝えることが出来ないし、光同士の意思疎通を行えない。孤独である。人間ならば耐えられるだろうか。

綺麗だと言われる物に例えば、虹がある。国や地域などによって、色の区別の仕方が違うので何とも言えないが、日本では7色という理解がされている。でも、それは光の本の一部、可視光線というものである。この光それぞれに意思があり、それら以外の波長の光(不可視光線)にも意思がある。ならば、それぞれ違う事を考え、願うであろう。

ここでフィクションと言うのだろうか、それを組み込んでみる。もし「何か不思議パワーで」人間の目の何かが変化して、現在の可視光線と不可視光線の立場が入れ替わったら、私達と光はどうなるのだろうか。勿論光の気持ちは反対になるだろうし、これまで見られてきた光はとても落胆するだろう。では人間の立場からだとどうなる?あの場所で見た星は全て見えなくなる。あの綺麗な星々が。しか今私達には見えていない星があるかもしれない。それは不可視光線を放つ星だ。新しい星が見え、多くの事柄が発見され、科学等が進歩するのでは?こんなことを考えてしまう。


あぁ、少し疲れた。何か甘いものがないかなぁ。そうだ。今度このことを書いてみよう。でも根拠も何もないから、光が意思を持っていることを光の妖精?がいることにして絵本を描いてみよう。

上手く描けると良いな。


そんな事を考えながら、私は夏の休暇は終わり、また職場へと向かう日常へと戻って行った。


今日もまた、何でもないけど美しい日が始まろうとしている。

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