最終話
話が終わった頃には、もう店員が締め作業を初めていた。
外はクリスマスの音楽が鳴り響く中。
女性は「こういう話、誰にも出来なかったから心が少し軽くなったわ。
今日はありがとう」と言って闇に飲まれていった。
結局、僕はこの話を記事に出来なかった。
あの女性ともあれきり、話していない。
彼氏とどうなったのかが気になって、女性と職場ですれ違う度思い出した。
聞いてみようか。
そう思った時には、女性はシトラスの香水の香りだけその場に残して消えてしまう。
女性にとっての僕の立ち位置は、「秘密を打ち明けただけの人」なのだろう。
仲のいい同期が、あの女性に好意を寄せている事を嬉々として話しているこの瞬間も、僕は知らないフリをする。
今日のファミレスは静かだった。
才能のない恋愛 大和あき @yamato_aki06
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