魔法熟女ミラクル☆ミサ

ハタラカン

魔の法


男、いやクソオスは三十路まで童貞でいると魔法使いになるという。

ふざけやがって。

なぜクソオスだけなんだ反吐が出る。

この世界を作った神は今すぐ価値観をアップデートすべきだ。

処女という童貞とは月とスッポンの宝物を守り抜いた女性にこそ魔法はふさわしいではないか。

なのに女性は魔法使いになってはいけないと?

ただ生きてるだけで男尊女卑を実感させられるなんて本当に世界は腐ってやがるな。

だから私はせめてもの抵抗として五十路となる今日まで己が処女を守ってきた。

他意は無い。

他意は無い。

無いったら無い。

うるせえロジハラで訴えるぞ!!

…さて、童貞魔法使いの約1.67倍もの期間穢れを払ってきた私だ、そろそろ何かしら魔力を授かってもいい頃合いだろう。

それが男女平等というものだ。

すぅー…軽く息を溜め、叫んだ。

「若返れ!!!!」

しかしなにも起こらなかった。

「いでよ札束!!」

しかしなにも起こらなかった。

「若返れ!!!!」

しかしなにも起こらなかった。

「クソが!!!……アギャアアアア!!!」

男尊女卑への憤りで反射的にゲーミングチェアを蹴るも、脛をしたたか打ちつけてしまった。

これも全部クソオスのせいである。

「キモい死ね!!」

アンチエイジング特集目当てで点けていたはずのテレビがいつの間にか醜悪なクソオス芸人祭りになっていたので、そいつを論破して気を紛らわせた。

キモい死ね…女性の生得的にして正当な権利を表すこの言葉は、いつも私に勇気をくれるのだ。

よし、気晴らしも済んだ事だし寝よう。

母神見避もがみみさ

50の夜だった。


翌朝。

無遠慮かつ無愛想に鳴り響くスマホを止め、上体を起こす。

本来なら叩き割ってやりたいくらいだが、寛容すぎる私はどうしても優しくアラームを止めてしまう。

私の代わりにスマホの修理代を払うクソオスさえいれば遠慮なく割れるのに。

即ちこれまたクソオスのせいなのだった。

残念ながら、未だ女性の1日は男尊女卑で始まってしまうのだ。


出勤準備でミニマリズムが美しいワンルーム内を駆けている最中、朝はもっぱらBGM用のテレビが気になるニュースを届けてきた。

〈昨夜未明、人気お笑い芸人の〇〇さんが突如爆死しました〉

ほう。

いいニュースだ。

久々に心が躍るのを感じる。

〈〇〇さんは自宅ベッドで休んでいたところ、突然爆発したとのことです。

原因は不明で、警察は事件と事故の両面から捜査する模様です〉

〇〇とは昨夜私に論破されたクソオスである。

なんだかわからないがいい気味だ。

神もようやくアップデートを始める気になったかな?


出勤は駅まで徒歩。

嘆かわしい事に道中は実質クソオスロードだ。

天下の往来を名乗るにはまず女性専用歩道の設置が必須だというのに、現実は下賤な精子工場が闊歩している有様。

まったくまったく嘆かわしい。

これでは私のような弱い存在は常に警戒して肩身を狭くしていなければならぬではないか。

あっ、さっそくむこうから下品な金玉野郎が歩いてきやがった。

あいつは痴漢だ、触られなくてもわかる。

私は少しでもクソオスの加害性を押し止めようと片時も目を離さず睨み続けた。

奏功し、何事もなくすれ違う。

ふう安心…と思ったら横のマンションから別の肉竿坊主が出てきた!!

そして私をスタスタ追い抜いていった!!

しかしいかな寛容すぎる私でもそんな見え透いた擬態に騙されたりはしない。

奴は私を視姦している、観られてなくてもわかる。

無念なり…どうやら出勤コースを変更せざるを得ないらしい。

さすがクソオス共…今日も朝からかましてくれるじゃないの。


駅。

当然の権利として女性専用車両に乗り込む。

やーっと落ち着ける…朝の女性専用車両は、仕事で輝く宝石たちだけに許された憩いの場だ。

専業主婦などというカビ臭い悪習に囚われた名誉男性どもには決して立ち入れぬ聖域だ。

これに乗れる栄誉だけが朝の楽しみと言っていい。

………なのになのになのに………!!!

「…………」

ボッキガイが乗ってきやがった!!

たまに居るんだよなあこういう非常識な輩が!!

ここは女性専用車両だぞ!?

このマークが目に入らぬか!?

朝からトラブルの連続で苛立っていた私は、それでも女性専用を示す表示をバンバン叩きながら件のクソオスを睨みつけるに留めた。

やはり寛容すぎる。

「!!…………」

結果、クソオスは恐縮した様子で会釈し、車両を移ろうとした。

やれやれ、また英雌的行動をとってしまった。

尊敬の眼差しが全身に突き刺さるのをビンビン感じる。

よし気分がいい、決めゼリフもつけてやろう。

「キモい死ね」

隣接車へ移ったクソオスの背中に向け呟く。

するとクソオスが爆発した。


「えーウッソー!!」

あまりの出来事に人目も憚らず感嘆の声をあげてしまう。

素晴らしい!!

我ながら素ン晴らしい!!

今のは私がやったんだ!!

間違いなく絶対絶対絶対絶対私の力だ!!

凄い凄すぎる!!

まさか呟くだけでクソオスを葬れるなんて!!

最高の偉業だ!!

しかし、なぜ急に?

そうか…神はちゃんと仕事をしていたのだ。

私に魔法を授けてくれていたのだ。

それなら芸人〇〇の最期も説明がつく。

状況証拠からすると、〇〇もボッキガイも私に『キモい死ね』と論破されたから爆死したと考えられる。

録画であろうテレビ番組にまで反応するとは凄まじいが、実際そうなったのだから絶対間違いない。

私に間違ってるとか言う奴こそ絶対間違ってる。

ああ…神様ありがとう。

あなたもやっと名誉男性から足を洗う覚悟ができたのですね。

ともに闘いましょう、男女平等のために!!

「きゃあああーーーーっ!!」

「ひぃーーーーーーっ!!」

「あん?」

なぜか車両内が、いや駅全体が叫喚で満たされていた。

感激していたので気づかなかった。

そうだった、クソオスもいちおう人だった。

不本意ながら、社会的にはそこはかとなく人のような気がしなくもない雰囲気を醸し出している可能性を感じるかもしれない恐れがある生物だった。

その人モドキがバンッと水っ気たっぷりの破裂音とともに血溜まりと化せば騒ぐのも無理はあるまい。

なんともはや…死してなお迷惑をかけるとは、まっことクソオスとは有害無益なり。


改めて女性専用座席に腰掛けていると、電車が運休になった事をアナウンスで告げられた。

さてはクソオスの仕業か…許せん。

この時代錯誤な国は今日も家父長制のもと動くわけだ。

女性の迷惑も省みずに。

許せん…許せん許せん!!

しかしもう安心!!

私には力がある!!

救世の力が!!

これで…これで…!!

…どうしよう?

まあまずは試し撃ちか。

あの爆殺魔法が私の力である事に疑いは無い。

私がそう感じたのだから絶対正しい。

絶対正しい…が、いちおう、念の為の試しだ。

もう少し使っておきたかった。

幸い、ジェンダーギャップ大国のニッポンにおいては的に事欠かない。

駅の出口へ向かう途中に…ほらあった。

美少女キャラの広告だ。

こいつを爆破してやろうと思う。

罪状は性搾取、性消費、性加害のトリプルコンボ。

私という実際に苦しんでいる女性、私が罪ありと感じるその気持ち、その想いこそ広告の罪の証明である。

よって広告を庇う小賢しい擁護の悉くはこの正論の前に破られるのだ。

「キモい死ね!!」


ドカーン。


「ギャアアアーーース!!!!」

ポスターだけでなく貼られていた柱まで爆発し、私に破片散弾を浴びせてきた!!

クソオスめが…柱の中から奇襲なんて卑劣にも程があるだろ!!

「大丈夫ですか!?」

クソオスはさらなる追撃を用意していた。

私に気安く走り寄る個体が一匹。

間違いない、こいつは痴漢だ。

「キャアアー助けて痴漢よー!!」

「えっどこ!?」

「お前だよ!!」

駅員の制服を着た痴漢は何を言われたのかわからぬという顔で見つめてきた。

加害している自覚が無いのか…まあいつものクソオスだな。

結局、痴漢は首をひねりながら謝罪一つなく無言で去っていった。

またいつも通り女性の性被害が無かった事にされたわけだ。

本当に気持ち悪い。

絶望感に打ちひしがれる…が、ここで立ち止まってはいられない。

出社しなくては。

寛容すぎる私は駅員の背に『キモい死ね』と呟くだけで彼を許し、駅の出口へ急いだ。


アプリで女性ドライバーのタクシーを呼び、乗る。

女性しかいない空間…最高だな!!

私はリラックスしながら今後の展望に心を欣喜雀躍させた。

ポスター含め全部で4回の爆殺により本当の本当に疑いは消え、発動条件も確認でき、今の所ペナルティも皆無。

もうやりたい放題じゃないか!?

いいぞ…いける!!

私の手で!!

全女性の悲願である男女平等を実現できるぞ!!

「お客さん、なんかすっごい嬉しそうだね」

「あ、わかるぅ?」

顔に出ていたようだ。

致し方あるまい。

世界をあるべき姿に正せる時が来たのだから。

感激しなきゃ女性じゃない。

「お客さん、いまそこの駅から出てきたんだよね?よく笑ってられるねー、とんでもない事件が起きたってのに」

は?

とんでもない事件?

何を言ってるんだこのドライバーは?

「ラジオでやってたよ、中で爆発があって、男の人が二人も亡くなったって…。

怖いね〜かわいそうにね〜。

お客さんとマッチングしてから拾う途中で聞いちゃったから来たけどさ、マッチング前に聞いてたらそもそも受けてなかったね〜悪いけど」

「っはぁ〜〜〜〜〜〜〜〜………」

思わずため息が漏れた。

なんだよ…名誉男性かよ。

クソオスが死んだからってなにが可哀想だと言うのか?

奴らが女性にしてきた加害と比べれば爆死なぞ寛容すぎる措置だろうに。

可哀想なのはむしろお前だよ。

古い価値観を刷り込まれ、名誉男性として振る舞う自分に疑問を感じる事すらできなくされてしまってるなんて…。

そこまでいくと寛容ではなく痴呆だ。

残念だが、私の啓蒙は意味を為すまい。

手遅れだ。

立場が違いすぎる。

「ここで降ります」

「え?まだ何百メートルかありますけど…」

「降ります!!」

クソ胸くそクソ悪い!!

せっかくいい気分でいたのに!!

これだから日本は駄目なんだ!!

女性を傷つける事への執念が凄まじいからな!!

しかし寛容すぎるでお馴染みの私だ。

料金は気前よく払ってやった。

輝かしい未来の前祝いだ。

「あっちょっと!」

「礼には及びませんよ」

「そうじゃなくて…足りません。

あと300円」

「…………………」

追加で300円払い、降りる。

去っていくタクシー。

100メートルほど離れたところで呟いた。

「キモい死ね」

タクシーが爆発の衝撃でやったぜと言わんばかりに飛び跳ねて喜び、2秒後に玉突き事故を起こした。

死してなお迷惑をかける…やはり名誉男性、行儀の悪さはクソオス譲りか。


会社に着くと休む間もなく仕事だ。

お察しの通り、このオフィスも差別主義はびこる男尊女卑の巣窟である。

その証拠に私が未だ平社員扱いされている。

無意味に外へ出回ったり謎に会議開いたりして空虚な時を過ごすばかりなクソオスどもが出世していくのに、ポテチと紅茶つまみながら悠々仕事できてる私がヒラなんてどう考えてもおかしいではないか。

ガラスの天井があるとは聞いてたが、よもや係長の席まで天井に埋まってるとはな…。

なんなのここ茶室の入る部分しか無いの?

まあクソオスに媚び売りケツ振りして名誉男性になれば出世可能なんだが、寛容すぎる私でもそこは超えられない一線だった。

「あの…母神さん」

仕事中、上司クソオスから声をかけられた。

当然無視。

私は母神という名が好きではない。

なぜ神が母なのか?

母をことさら神聖視する無神経さに虫酸が走る。

女性は女性であるだけで尊いのだ。

むしろ産まない自由を踏みにじる価値観に洗脳され子を産んでしまう名誉男性は尊くないのだ。

私の名は女神であるべきだった。

「母神さん…」

また上司クソオス。

ツーアウト。

「…………えっと、母神…さん」

はいスリーアウト!!

「それセクハラです」

「えっ!?どこが!?」

「自分で考えなさい」

「えっと、まあそれはさておき…」

「さておけませーん人権問題でーす」

「とりあえず、それ…やめてくれる?」

上司はポテチを指さした。

「音がさ…どうしても、ね。

あの…ほら、みんな仕事してる…からさ。

何度も言ってるけど」

「それパワハラです」

「何でもかんでもハラスメントって言って通るわけじゃないんだよ?判例も出てる」

「ロジハラ!!」

クソオスが…!!

そんなに私の寛容を味わいたいなら思い知らせてやる!!

「キモ…」

いや待て待て。

近い。

クソオスの往生際の悪さをうっかり失念していた…ここで爆死させたら私まで巻き添えだ。

「ちょっと失礼」

血で穢されたくない荷物を余さず抱え、手洗いに退避した。

「さてと。

課長キモい死ね!!」

しかしなにも起こらなかった。

「んん?」

どうしたのだろう。

同僚たちはクソオスの死を遅い天罰と流せるほど目覚めていない。

課長が穢れた血肉をぶちまければ必ず騒ぎになるはず。

つまり…なるほどクソオスの嫌がらせか!!

なんということだ、奴らの悪意が魔法を阻害できるレベルに達していたなんて!!

寛容すぎる私には読めない展開だった。

どうする?

他の手段を試さなくてはならないが…オフィスに戻って直接論破してみるか?

いやダメだ、それだと私が課長を殺したという誤解を生んでしまう。

やはりこの場から魔法の威力を引き上げなくてはならない。

…そうだ、もっと詳細に論破してみよう。

考えてみれば世にクソオス課長は蟻蜂の如く群れているだろうし、何より私の上司も厳密には課長などという存在でなく単なるクソオスだ。

遠隔の場合、曖昧な課長呼びよりもっと精度の高い表現でなくては私の気持ちが伝わらないのかもしれぬ。

口が穢れるがやむを得まい。

「…よし」

この会社はもっとダイバーシティに配慮して構造的パラダイムシフトを起こしジェンダーギャップを埋めるべきだ。

マリトッツォをコペンハーゲンしてタージマハるべきだ。

今日まで改革は叶わなかった…クソオスと裏切り者の名誉男性が阻んできたせいで。

だが、今から変わる!!

「◯☓課長キモい死ね!!」

叫んだ直後、オフィスが悲鳴で揺れた。


クソオス上司によって汚されたオフィスを掃除しに警察が来たので、今日は休みとなった。

私は上司が爆死する直前に彼と揉めていた廉でクソオポリスどもから事情聴取を受けたが、寛容すぎるため聴取が終わるまで爆死させないでおいてあげた。

後は帰ってゲームして寝よう。

今日も差別に振り回される一日であった。


翌朝。

BGM代わりのテレビが全チャンネル同じニュースを報道する退屈で私を加害してきた。

〈えー先日起きた連続爆死事件、詳しい事はまだ何もわかってません。

死亡した人々の関連性、死亡原因、犯人の目的、全て不明です。

ただ、自然現象ではありえないという事で、警察はテロとして捜査しているようです〉

MCの心無い言葉で朝の気分がぶち壊される。

言うに事欠いてテロだとお!?

正義の裁きだろうが!!

お前のやってる家父長制度流布番組のほうがよっぽどテロだわ!!

いつもいつもクソオス風情が女性コメンテーターに指図する映像なんぞ流しやがって!!

よーしわかった。

やはりクソオスには何もわからないのだとわかった。

一気に終わらせよう。

何の遠慮も要らぬ。

私が自分を正しいと感じる限り、奴らは正しくないのだから。

最初からこうすればよかった。

「クソオス全員キモい死ね!!」

瞬間、モニター内のクソオス全員が赤黒い霧に生まれ変わった。

ややあって、テロリストの洗脳番組が美しい虹色に切り替わった。

しばらくお待ち下さいとの事だが、恐らく今日あたりはずっとこのままだろう。

なにしろここはジェンダーギャップ大国。

幹部=クソオスであり、幹部がごっそり抜けた状況に即応できる体制は準備されてない。

クソオスの台頭をむざむざ許してきたツケは、クソオスに勝利した瞬間が最も大きいのだ。


さて、これからどうしよう?

ついに実現した理想郷。

でも家に引きこもっていてはどうにも実感のしようがない。

マンションの上下左右からバンッとこもった音が聞こえたくらいである。

よし、外へ出よう。

全女性の悲願が叶ったのだ、楽しまなければもったいない。

そうと決まれば…特に意味は無いが化粧をしよう。

本当はしたくないし、すべきでもないと知ってはいるものの、会社の差別意識が作った『女性は化粧するのがマナー』などという暗黙のルールのせいで化粧癖が染みついてるのである。

私とてクソオスの入念な洗脳を受けた身というわけだ。

それだけだ。

本当に絶対それだけ。

私はルッキズムに断固反対してるんだから絶対それだけで間違いない否定するな女性蔑視だぞ!!


「うっ」

一歩外へ出ただけですぐさまクソオスどもの死臭が加害してきた。

実に奴ららしい暴力的な臭さだ。

女性はいったいいつまでこんなイジメに耐えればいいのか…。

絶望し、震えに止まり怒りが涙になる。

だがもうすぐだ。

もうすぐイジメは終わる。

誰かが死体を掃除すれば。


街は臭いので近場の一番高いビル(女性でも安心して入れる美容系ビル)に入り、エレベーターで屋上へ。

そして下界を見下ろすと、そこは薔薇園のようだった。

「フフフ…ファッハッハッハ!!

歴史上最も男前揃いになった瞬間だ!!」

どこまでも広がる赤。

内臓や衣服の色がまた良いアクセントになっている。

う〜むやはりいい!!

クソオスは死んだクソオスが一番いい!!

赤を女性の色とするジェンダーバイアスには常にNOを突きつけてきたが、今となっては悪くないかもしれん。

赤はクソオスの死を意味する色であり、それ即ち女性の勝利と平和の色でもあるのだから。

「…それ即ち女性の勝利と平和の色でもあるのだから。…だって」

「うーわ…クソヤバババアじゃん」

突然背後から聞き捨てならぬ女性蔑視が飛んできた。

何奴!?

振り向くと、中高生くらいの子供が二人並んで私を見ていた。

反射的に悟る。

こいつらは私の敵だ。

スカート丈を見ればわかる。

名誉男子といったところか。

「あなたですよね?

男の人たちを殺したのは…」

二人のうち気弱そうなほう…名誉男子Aが問いかけてきた。

「何の話?」

わからなかったので素直に聞き返す。

「あー、めんどいから簡単に言うわ。

アタシら超能力者。

アタシバトル系、こっち心読める系。

前から趣味で正義の味方ごっこしてて、昨日すげー悪党が現れたくさかったんで調べて、アンタに行き着いて、日ィ改めたのを激悔いしながらここまで追ってきたってーわけ」

名誉男子Bの言。

超能力、者…この小娘どもが!?

「タクシーのドライブレコーダーと動線、それからあなたの上司が決め手でした」

名誉男子Aが何か言っていたが聞き取れなかった。

私は今それどころではなく、怒りで爪が割れスマホを粉砕しそうだったのだ。

小娘の分際で超・能・力・だとおおああああああa@ptmj“[№{$$℃®!?!?!?

この私が50年かけ得た力を10代で!!

ルッキズム!!!!

神は予想通り名誉男性絶対!!

いや…こんな生体チンポケースどもに力を与える愚を犯すのだ、下手をすると、神は…クソオス…キィヤアアアアアアェエエエエエエアィアア!!

「きゃっ!!」

「どうした!?」

「すごい悪意…脳が腐りそう!」

バカ貝二つがまたわけのわからぬ音波で加害してくる。

くっ…落ち着け寛容すぎる私。

そうだ私は寛容すぎる。

爆死させる前に少しは話を聞いてやれるはずだ。

「脳が腐ってるのは元からだろ淫売」

ふう…よし。

まずは寛容すぎるカウンターから始められたぞ。

「ひどい…」

「何がひどいだ。

性的に強調された格好しやがって。

お前みたいなのが出歩くだけで女性が性的な存在であるかのようなデマが宣伝されるんだぞ。そのデマでどれだけ多くの女性の気持ちが踏みにじられてきたことか…今さら被害者ヅラするな」

「思ってた通り、ダメそうだなこりゃ」

「ダメなのはそっちだ。言っとくけど性搾取されて性消費されてますよお前ら」

「されてねーけど」

「されてるんだよ。

私がそう感じてるんだから」

「…あーとりまはっきりさせてくんね?

男全殺ししたのアンタだよな?」

「違う」

「ウソです!」

「噓じゃない。

私は世界をあるべき姿に戻しただけ。

クソオスが死んだのはクソオスの勝手。

私はなんにも悪くない。

簡単に言ってあげたよわかる?」

「クソババア」

「あン!?」

「あるべき姿、ってねえ…アンタのせいで人類滅亡ほぼ確定なんだけど?

男なしでどうやって生きてくのさ」

「は?普通に理想郷なんだが?」

「言い方が悪かった。男なしでどうやって子供作るつもりなんだよ。

作れないなら子供なしでどうやって社会を維持継続していく計算なんだよ」

「やっぱガキだな…何も知らんと見える。

まずこの世で最も重要なのは女性の権利。

女性の権利が女性の幸福。

女性には出産育児という卑しい奴隷労働を避ける自由が必要なんだ。

社会なんかより先に、生まれながらに!!

出産育児を強要するクソオスの蔑視から解放され自由を得た結果が滅亡なら、誇り高き滅びこそ全女性にとっての幸福になるのだよ」

「全女性?アタシゃこう見えても惚れた男の子供バカスカ産んで墓まで一緒ってのが夢だったんだけど」

「あ、オナホは女性じゃなくて名誉男性なんで」

「やれやれ…アンタ自分で言ってておかしいと思わないのか?

出産は男には無い女特有の機能で、要するに女らしさなんだぞ?育児だってその延長だ。

女特有の機能使って女らしさ全開で生きる女をアンタは卑しいだの奴隷だの男もどきだの言ってんだぞ?

それ女を蔑視してんのはアンタの方だろ」

「はい出たー!!名誉男性特有の歪んだ女らしさの決めつけー!!

出産育児が女らしさとか押しつけられたくありませーんそんなの人それぞれの自由でぇーっす!!」

「あのね…まずそもそも『らしい』は

『…と認識できる状況、容姿、事情である』みたいな意味なんだから、事実を無視して自由に決められるもんじゃねーの。

で、アタシは『出産は男には無い女特有の機能で』と出産育児が女らしさとして扱われるべき事実を説明してる側。

アンタはその説明に反論しないまま、押しつけられたくないから、言い換えると事実を認めるのが嫌だから人それぞれ自由に女らしさを歪めさせろってキレてる側。

事実と異なる歪んだ決めつけを押しつけてんのはアンタなんだよ。

女を下げるためにそこまでメチャクチャやるとはね…ホント、よっぽど女が憎いんだな。

現に幸福だからなんてお為ごかしで滅ぼそうとしてるし」

「キィエエエうるせええーっ!!

お前は何もわかってない!!

子袋の新メンバー如きにわかるわけない!!

クソオスが女性をどれほど加害してきたかが!!全く!!わかってない!!

滅亡が救済と同義になるくらい酷い目にあわされてきたんだ女性は!!」

「そりゃ知らねーけど、仮にクソな男がいたとしてもそれはその個人の問題。

男ってー性別の責任じゃない。

アンタを見て『女は全員クソだ』とか言うのが的外れなのと同じ。

そもそもアンタみたいな誰のためにもならないなろうとしない奴が加害されんのは当然だし自業自得なんじゃねーの?

男女両方にとって敵、つまり人間の敵なんだもの」

「はあ!?

私は全ての女性を救ったんだぞ!!

クソオス全滅は全女性の悲願だった!!」

「うん、それはアンタの悲願だったかもだけど、女の悲願ではねーから。

アンタは全女の統一人格じゃねーし、何よりアンタはぜんぜん女らしくねーから。

女捨ててるくせに女の代表気取んな」

「黙れっ!!ブロック!!

もう話してもしょうがない!!

立場が違いすぎる!!

議論のやりようがない!!」

「いや、立場が違うからどっちが正しいか議論するんだろ…違う立場の人間に追い詰められたって事は、ただただアンタが論破されただけ。

同じ立場の人間とする話は確認か馴れ合いだし、アンタが言ってんのは『馴れ合ってくれない人キヤイ!』ってー駄々」

「うるせーうるせーうるせーうるせーうるせーうるせーうるせーうるせー!!

大人をなめるな妖怪よだれ股が!!」

なんという差別、なんという女性蔑視。

私の気持ちに寄り添おうとする配慮が欠片も無い。

こいつはクソオスそっくりだ。

くだらないデマと屁理屈で鎧った女性の敵。

初見の印象は正しかった。

そうとも私が正しくない事など有り得ない。

このレスバトル系超能力者にもそれを教えてやる。

真の論破でな!!

「キモい死ね!!」

「バリアー!!」

「なにいいいい!?」

名誉男子Bが光に包まれ私の魔法を防いだ。

「ハハッすげーだろ?このバリアーは『アタシに向けられた』どんな攻撃も無効化する。

たとえ概念的なものであってもな」

「バリアーキモい死ね!!」

バリアーは爆発した。

「えっ!?ちょま」

「キモい死ね!!」

名誉男子Bは爆発した。

「ヒャーアッハァー!!ざまあああああ!!いやー差別発言できなくなったおかげでやっっっっっと女性になれたねえ!!もう遅いけどねえ!!アヒャヒャヒャヒャ!!」

「ひどい…ひどい…!

どうしていきなり殺したの!?」

青ざめた顔で怒る名誉男子A。

こいつまだ居たのか。

「あの娘はまだ何も攻撃してなかったじゃない!あなたが暴走した事情をまず確かめたいからって…話し合ってみようって…それだけだったのに。すぐできたはずの反撃さえしなかったのに…!」

滝のように涙を溢れさせ訴える。

泣けば許されると思ってるのか…幼稚な。

「心は読めても現実は見えないんだな…あいつはガンガン攻撃してたろ、ロジハラで。

あいつから仕掛けてきたんだ、論破で返されても仕方がない」

「論破…!?殺しただけでしょ!?」

「論破ってそういう事だろ。

あいつは私の心を殺した事を論破だとイキってたぞ?私はお前らの流儀に合わせたまで。悪いのはどこからどう見てどう考えても全面的にそっちだよ。

それともう一つ現実を教えよう。

お前たちはもっと早くに死ぬべきだった。

お前たちはただ後から産まれたというだけで若さを手にした卑劣な差別主義者だからだ。先を生きる女性の気持ちを完全に無視した加害者だからだ。

お前たちはもっと女性の気持ちに寄り添い、配慮し尊重し、産まれるのをやめるか自殺するかしなければいけない存在だったんだよ。あいつはいきなり殺されたんじゃなく悪あがきの末ようやく年貢を納めたに過ぎない」

「……………」

絶句する名誉男子A。

まあ責めまい。

己の罪深きを知ればそうもなろう。

あとは私の気持ちに寄り添う形で爆死すれば許してやる。

しかしとにもかくにも私は寛容すぎるので、こいつに配慮させるのは辞世の句を詠ませてやってからにしようと思う。

「それで?お前はクソオスにどんな呪いをかけられてしまったのかな?

素直に懺悔しなさい。

女性にしてあげるよ、お友達のように」

「……もう、あなたと話す事はありません…」

「あ、そう。まあでも論破するけど」

「はぁあ…ふあああああああ!!」

「!?」

何だ?

名誉男子Aが淡く光り輝いて…すぐ元に戻った。

こけおどし?

害は無さそうだったので手出ししなかったが…。

「何をした?」

「テレパシーの応用です…あなたの思考と発言、それと悪行の映像を、全世界の生き残り全員に記憶させました」

「は?」

「意味はわからなくていい…ただ、呪われてください。わたしはもう疲れました。

お父さん、お兄ちゃん、弟、好きな人…それに親友まで奪われて…もう生」

「キモい死ね!!」

名誉男子Aは爆発した。

危ない危ない、存在自体が間接的性加害になる自走便所の責任転嫁を聞かされるところだった。

この期に及んでなお被害者ヅラとは恥知らずなまでに図々しい奴。

「さてと」

まあそれはそれとして、私の事を生き残り全員に記憶させたとか言ってたな…呪われろとも。

何を馬鹿げた事を。

その言い方だとまるで私が何か悪い事したみたいに聞こえるじゃないか。

「世直しなう…と」

試しに屋上からの景色をコメント付きでSNSにアップしてみた。

すると…ほれ見ろほれ見ろ、いいねが千、二千…どんどん増えていくではないか。

さらに他の人々のツイートでは早くも私を英雌と崇める祭りが開催され、私のアカウントには無数の感謝が届けられている。

それらをニヤニヤ眺めつつ10分ほど過ごした頃、屋上景色のツイートには5万ものいいねが付いていた。

見てるか地獄の名誉男子たち。

所詮お前らのは幼稚な正義の味方ごっこ…本物の正義、本物の魔法少女はこの私!!

魔法少女ミラクル☆ミサだ!!


チーン


「…お?」

なんだろう?

屋上のエレベーターが数人運んできた。

ファンか…素早いなあ。

みんな手に手に包丁やトンカチなど凶器を携え、私を見るなり鬼の形相でこちらへ全力ダッシュ…。

「うおおキモい死ねキモい死ねキモい死ねキモい死ねキっぐえ!!…キモい死ね!!」

なんと現れたのは名誉男性の集団だった!!

全滅はさせたものの数に処理が追いつかず、頭をかばった右腕にトンカチの一撃を受けてしまった。

折れてるかも、いや絶対折れてる。

なんでこんな事に…私は英雌視されてるんじゃなかったのか!?

5万いいねもされたのになんで!?

ハッと閃き、『ツイッター 利用者 総数』で検索。

「3億3千万人…」

出てきた数字はまさに桁外れだった。

女性のみ生き残った今、単純に半分にしても1億6500万。

つまりこれは…なんてこった、ツイッター上だけで1億6495万もの名誉男性が存在するって事か!!

私にいいねしないという事はそういう事だ!!

クソオスめ…そこまで洗脳を広めていたとは、なんて非道な!!

泣けてきて怒れて震えで悔しさが止まらない。

いいだろう…やってやる。

女性の理想郷完成がため、啓蒙をあまねく行き渡らせるため、名誉男性の悉くを爆死させてくれよう!!

「名誉男性全員キモい…」

死ね、と言いかけて止めた。

今は人手が要る。

なにしろ街は死体だらけ。

か弱い女性だけでは掃除に時間がかかりすぎるし、それ以前に掃除させられる女性が不憫すぎる。

死体掃除は名誉男性がやるべきだ。

さすが私、寛容すぎる。

じゃあ今は生かしておいてやるとして…私は…何をしよう?


差し当たり、利き腕が潰された状態では生きづらさで失神しそうなため、病院へ行く事にした。

ここは美容系ビルだ。

むろん美容外科も入っている。

私の馴染みではないが、この際選り好みはできん。


美容外科に入ると、なぜか受付は無人だった。

化粧してたら10時を過ぎてたので営業時間外ではないはずだが?

「すいませーん」

声かけしても誰も来ない。

仕方なく奥へ進むと、血溜まりの中で膝立ちになって放心する看護師がいた。

クソオスの残骸か…掃除しろよ。

怠慢としか言いようがない。

しかし骨折の激痛に加害され続けている私はクソオスの死臭の中であっても治療を受けたい気分だった。

「あのー、骨折の治療ってできます?」

要件を告げる。

すると私の言葉、いや声に反応した看護師が振り向き、にへらっと笑った。

「へへ、へへへ…できませんよ」

およそ接客する態度ではない。

しかしもう一度言う…私は骨折の激痛に加害され続けているのだ。

できませんで済まされたくはなかった。

「あなたでいいからやってください。

応急処置だけでも」

「自分、バイトなんで…ただの受付なんで、へへ。まあできてもやりませんけど」

「は?」

「へへ…骨折。天罰だ…ざまあみろ。

へへへへ…いい先生だったのに…いい先生だったのに…殺しやがって…へへへ、えへへへへへ」

あ、こいつ名誉男性だ。

「キモい死ね!!」

名誉男性受付は爆発した。

美容外科なのに医師がクソオスの時点で危ぶんではいたが…やはり汚染されていたか。

私はたくましく気持ちを切り替え、クソオス医院を後にする。

私を尊重してくれる病院を探しに。


「うっげ…オエ〜!!」

ビルの自動ドアが開いた直後、相変わらずの…いや、前にも増して凄まじい悪臭が漂ってくる。

それもそのはず、死体が全然片付いてない。

誰か掃除しろよ!!

ゴミ収集員は何をやってる!?

ハッ…とまた閃き、『ゴミ収集員 女性 比率』で検索。

「女性が3割5分…!?」

そうだった…わかっていたはずだった。

自分で言ったではないか、クソオスの台頭をむざむざ許してきたツケは、クソオスに勝利した瞬間が最も大きいのだと。

クソオスめえっ…!!

この時を見越して人手不足になるよう罠を仕掛けていたのかあっ…!!

本当にもういい加減にしてくれ!!

死んだんだから加害やめて!!


キュキキキキ!!バタンバタンバタン!!キュキキキキ……!!


骨折の激痛と負の遺産への憤りで身悶えていると、ビル前に1、2、3、たくさんの車が停まり、中からこれまた大量の女性が出てきた。

いや待て、女性と判断するのは早計だ。

屋上での事もある。

依存先を失った名誉男性の逆恨みである

可能性は捨てきれない。

まあ順当に考えればファンだけど。

元々地球には40億もの女性が

「いたぞ殺せ!!殺せえええ!!」

名誉男性だった!!

「キモい死ねキモい死ねキモい死ねキモい死ね…!!」

次から次へ追加される名誉男性どもとその死体。

美容ビル前はB級アクションゲームの様相になった。

どうしてこうなるんだ!!

私の味方はどこにいる!?

5万のいいねは!?

いやそうじゃない、ツイッター上の名誉男性を省いても残り38億程度の女性は味方だろ絶対!!

そうじゃなきゃ絶対おかしい!!

だって私がそう感じてるんだぞ!!

ああ〜もお〜キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい!!

「キモい死ねキモげっぐべっおごはっ…あああキモい死ねキモい死ねキモい死ね!!」

数の暴力に押され、私は次第に疲弊していく。

ちょっと待って、そろそろ休ませて…。

こちとら五十路なんだから、手加減してほしい、いやすべきだ。

してくれなきゃおかしい。

その想いで折れてない左手のひらを突き出し、タンマのポーズで休戦をアピールした。

「殺せ!!男たちの仇!!殺せ!!」

「逃げるな!!

逃げてもそのうち気分で殺されるぞ!!」

しかし名誉男性軍団は私の気持ちを殺到で踏みにじった。

なんで弱者を尊重できないんだこの差別主義者ども!!

38億人は助けに来ねえし!!

もう、もうあれをやるしかない!!

「名誉男性全員キモい死ね!!」

しかしなにも起こらなかった。

は?

なんで?

「キェェェキモい死ねキモい死ねキモい死ね…!!」

とっさに通常論破へ切り替えると、サクサク死体が増えていく。

つまり魔法はまだ使えてるわけで…。

じゃなんで名誉男性は死なん!?

私が奴らを名誉男性だと感じてるのに!!

私に関する出来事で私の気持ち以上に正確な説明は有り得ない。

奴らは名誉男性で絶対間違い無い。

とすると…やはりこれはクソオスの嫌がらせか!!

クソがあああああ!!

しかし今は冥府のクソオスに構っている余裕は無い。

「キモい死ねキモい死ねキ…!!

ごほっげへっ!!」

「今だ行けえええ!!」

叫び続けでむせた様子を見るや、一斉にクソオスばりの暴力を振るいに突っ込んでくる名誉男性軍団。

わかった…もうわかった。

無理なんだ。

この世界は。

クソオスに汚染され尽くしてしまっていたんだ。

せっかくクソオスのいない理想郷を作ったのに、全女性の夢を叶えたのに、叶えてやった私がこんな差別を受けるなんて世界が腐ってるからに決まってる。

終わらせよう。

女性に栄光あれ!!

「世界全部キモい死ね!!」

世界は爆発した。

爆発跡には大地が無かった。

光が無かった。

空気が無かった。

宇宙が無かった。

恐らくは時間も空間も。

私だけが在った。

「こぺ、なべ…ぐぶべ」

死ぬほど苦しい。

泣きたくなるくらい強烈な差別であり、女性蔑視だった。

私の気持ちに対する配慮や尊重が一切無い、気持ち悪すぎる場所だった。

この加害…さてはクソオスの仕業か!!

ゆ゛る゛さ゛ん゛!!

世界に死ねとは言ったが私の生き残れる場所を用意しておかないとは何事か!?

死んだからって価値観のアップデートを怠っていいわけじゃないとわからんか!?

すぐに生存可能な空間をよこせ!!

それが男女平等だぞ!!

「ガ、ガガ、ぐぁ…」

ヤバいマジで死ぬ。

さしもの寛容すぎる私も今ばかりは全力で抵抗している。

しかし世界の無い場所で私は在る事しかできずにいた。

どう頑張ってもわけのわからぬ唸りが自分の骨肉の中で反響するだけ。

権利を勝ち取るための声は、クソオスの性差別によってつぐまれてしまっていた。

お、の、れ……クソオスのせいで…

クソオス……め……

「ぶぶ……」




それは自作した虚無の一部として在り続けた。

虚しい無を顧みる者は誰もいなかった。

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魔法熟女ミラクル☆ミサ ハタラカン @hatarakan

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