無数でひとつの虹色の
根ヶ地部 皆人
無数でひとつの虹色の
シャボン玉、きれいだね。きらきら光ってて、見る角度で色が変わるんだね。虹色って言うんだよ。
森の中で、こんなきれいなものに会えるなんて思ってもいなかった。島のおじいさんたちは、ここに来ちゃいけないって言ってたけどね。
うん、ボク、島の子じゃないんだ。遠くから来たんだよ。
前の学校でいじめられててさ。お母さんには前から学校行きたくないって言ってたんだけど、いじめられる方も悪いんだって怒られてたの。だけど、給食の残りをランドセルに入れられて、やっとお母さんも学校行くのやめようって言ってくれたんだ。
かわりに、お父さんのところに行ってきなさいって追い出されちゃったけどね。
うん、お父さん、この島で働いてるの。お医者さんなんだ。
お父さんのこと、お母さんは「しゅっせかいどうからはずされたまけいぬ」って言うんだけど、島のおじいさんたちは「りっぱな人だ」って言ってる。
ね、シャボン玉、もっと見せて。飛んでいくんだね。どこまでも飛んでいくんだね。うらやましいなあ。
ううん。どこにも行きたくない。ここがいいの。
前の学校には戻りたくない。お父さんのとこにも帰りたくない。
お父さん、いつまでも居ていいよって言うけど、お母さんと電話でケンカしてるの聞いたんだ。こんなとこに居たら勉強についていけないぞって。でも、この島には勉強なんかよりもっと大事なことがたくさんあるぞってボクには言うんだ。
シャボン玉みたいだね。みんな、言うことがちがうんだ。いじめられてるボクが悪くて、学校追い出されたボクは悪くなくて、お父さんはまけいぬで、お父さんはりっぱな人で、この島は良くない所で、この島には大事なものがたくさんあるの。
そうだね、シャボン玉みたい。見る角度で色が変わるだけで、きっと同じものなんだ。
うん。この森には来ちゃ行けないって言われたよ。ケンカに負けて追い出された神様が眠ってるから、邪魔しちゃいけないんだって。その神様はとっても怖いから、怒らせちゃいけないんだって。きっとそれもシャボン玉なんだね。見る角度でぜんぶちがうんだね。
やっぱり?
キミが神様なんだね。
うん、シャボン玉、もっとたくさん見せて。
飛んでいくんだね。どこまでも? 宇宙の果てまで? すごいなあ。
ケンカはきらいだよ。いじめだってきらいさ。
そうだね、でもシャボン玉だからね。見る角度で色が変わるから、同じ色を見ることができないから、きっとみんなケンカしちゃうんだね。そして弱いやつはいじめられるのさ。
いつかボクもキミとケンカしちゃうのかな。シャボン玉、こんなにきれいなのにね。
ケンカしない方法があるの?
ずっと仲良くできる?
うん、約束する。そうするよ。ボク、キミとそうしたい。
ああ、ひとつになるんだね。2つのシャボン玉、くっついて、大きくなって、同じ虹色になるんだね。わかるよ。ぜんぶがひとつだ。門は鍵、ボクはキミ、げんしょのひとつ、しいたげられしもののちち、しんえんのなかのしんじつのむかしいましいまいましんがい・がい るるるる んん・らぐる ふたぐん・んがあ あい
よぐ=そとおす
無数でひとつの虹色の 根ヶ地部 皆人 @Kikyo_Futaba
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