第85話 今後は特殊筐体やデバイスを搭載したマシン特化型の小規模フィットネスを展開していくのもいいかもな。

  さて、ここのマンションの最上階は俺達の居室だが、メゾネット形式で屋上にあるバーベキューなどが可能な屋上庭園やプールも利用でき、最上階の一階下の共用部にはサウナ付大浴場、ハウススタジオ、フィットネスルーム、シアタールームなどもあるって聞く。


 今までは色々忙しくそれらを見に行くこともなかったが、そろそろひと通り見て可能なら使ってみるか。


 俺は自分の部屋を出て廊下を歩き階段でまず屋上へ上がっていった。


 屋上にあるバーベキューなどが可能な屋上庭園には日よけのためのガゼボがあり、そこでバーべキューの調理や洗い物ができるように流しなどもあるようだ。


 最悪雨だったり真夏の暑い時期でもバーベキューはできそうだな。


 プールはガラス張りになっていて、その一角にあるドアを開けて中に入ると、少し蒸した感じだな。


 大きさとしては学校のプールなどと同程度の25メートル位あるプールで、ガチのスイミングもできそうだが、どうやら温水プールで夏以外でも利用できるようになっているようだ。


 世界的に見ると超高級ホテルには屋上プールがあるのも珍しくないみたいだが、日本では少ないんだよな。


 あ、デッキチェアもちゃんとおいてあるから日光浴も楽しめそうだな。


 せっかくだし今度上杉さんとか東大女子のみんなとプールで遊んでみるか。


 そのためにはまずは水着を買わないといけなさそうだけど。


 女性は毎年水着を買い直すのがデフォみたいだしなぁ。


 プールがある理由はアイドルも体力勝負だし水泳で基礎体力をつけていたりしたのか、それとも男性アイドルの水着姿が見たいジャーニーズの会長の趣味なのか、単に眺めが良いからなのかまではわからないが。


 そして屋上から2階分階段を降りて最上階の一階下の共用部に向かう。


 ここにはまずサウナ付の大浴場があるはずだが、もし今現在女性の誰かが入っていたりしてもまずいので今回はパス。


 まあ北条さんや上杉さんは俺に裸を見られたからといって、特に騒ぎ立てたりはしないと思うけど、裸を見てしまった相手が長谷部さんや篠原さんとかだとそうもいかないと思うしな。


 それから、ハウススタジオに向かってみるが、ここは歌ったり楽器演奏したりやレコーディングなども可能な撮影スタジオのようだな。


 まあ、アイドルならこういった設備も必要なのかとは思うが俺には使える気がしない。


 朝倉さんが見たら大喜びしそうな気もするけど。


 それからフィットネスルームに行ってみる。


 フィットネスルームに置いてあるマシンはトレッドミル、いわゆるランニングマシンやエアロバイクにクロストレーナーといった有酸素運動系マシンがメインで、後は1kg~10kgの各1セットダンベルセットやストレッチやヨガ、エアロビクスを行えるマット、スミスマシンに加えベンチプレスや腹筋などをできるベンチも一応あるようだ。


 ここはここでシャワールームややトイレもあるみたいだが、思っていたよりだいぶ本格的だな。


 この時代だと大学や高校の部活レベルだとダンベルとセーフティラックもないようなベンチプレスができるバーベルセットがあれば良い方って感じだった気がするが、流石に金はかけてるんだな。


 ちなみに日本におけるフィットネスクラブの源流は60年代の東京オリンピック後に流行した、将来の水泳選手を育成するための子供向けスイミングスクールからだが、70年代にはマシンジムが併設され始め、70年代後半くらいからはヨガが、80年代は若い女性を中心にエアロビクスが大流行したため、現在のフィットネスクラブと言えば、ヨガスタジオやエアロビクススタジオを利用する20代・30代の若い女性がメインで、蛍光カラーのレオタードのようなハイレグウエアにレッグウォーマーとスニーカー姿というのが定番だった。


 子供が小学校に上がって余裕ができた専業主婦なんかも多かったし、ディスコのノリでユーロビートに合わせてエアロビを踊る女子大生などの若い女性も多いらしい。


 まあ、 ヨガはΩの地下鉄サリン事件でΩがヨガや瞑想を謳った宗教団体であったため、そのマイナスイメージの影響でヨガ人口はその後一時激減したし、エアロビクスもエアロビクスは身体に悪いという週刊誌の記事やけが人が多く出たこともあり90年代にはブームは沈静化していくが。


 それはともかくとして現状ではプール・マシンジム・ヨガやエアロビのスタジオを備えた総合型のフィットネスクラブの最盛期だな。


 その反面、スイミングスクールは受験戦争の激化や少子化の影響を受け始め衰退しつつあって、スイミングスクール業界も、成人も集客できる総合フィットネスクラブへと業態転換を図っている。


 しかし、90年代にバブル経済が崩壊すると、深刻な景気低迷でフィットネスクラブは過当競争を強いられ潰れたり吸収合併される会社も増えた。


 この頃は入会金や月の会費もバカ高いからな。


 しかし、駅前の大型の施設でプールを持つとなるとそれなりに金がかかるのは事実だ。


 そういった事もあってフィットネスクラブは低迷期を迎えるが、そこで取られた対策がまずは入会金無料にすることで、更にそれまで一律だった月会費を施設規模や利用回数、利用できる時間帯に合わせて見直し、安くすることだ。


 プールのないジム・スタジオタイプであれば月会費5千円代にしたりモーニング会員・アフタヌーン会員ナイト会員のような時間別、ウィークデー会員やホリデー会員のような曜日別、アクア会員やジム会員・スタジオ会員など利用できる施設を制限する代わりにレギュラー会員の7割から半額程度の価格で利用できるようにしたりした。


 しかし2008年のリーマンショックに加え、00年代後半には、”ビリーブズブートキャンプ”や”ゴアリズム”などエクササイズDVDが大流行したこともあってフィットネス業界は相当な苦境に追い込まれる。


 この頃には女性も携帯電話を持つのは当たり前になっていて、通信費が高く付くようになっていたしな。


 そして2010年代頃になると雑居ビルやマンションの一角を借りた24時間利用できるマシントレーニング専門のマシンジムが大流行になった。


 これは人件費と家賃、水道光熱費といった固定費を最低限に抑えつつ設備の稼働率を最大限に上げるという意味では最適解だったろう。


 通常のフィットネスクラブでは朝7時から夜の20時くらいまでしか利用できない事が多い、それより早い、あるいは遅い時間でもマシンジムを使いたい人間はそれなりにいたのだな。


 まあ、それはともかくそれなりの運動を行うのは健康を維持するためにも大事なことだ。


 そのためにもマシン特化型の小規模フィットネスを潰れたパチンコ店の跡地なり雑居ビルやマンションなりで展開していくのもいいかもな。


 その際にはルームランナーやエアロバイクにはモニターを付けて実際に走っているようなイメージができたり、声でアシスタントできるようにしたいかな。


 このあたりはライジングとセガで共同開発すればできそうな気がする。


 スタジオ式にするならロングフィットアドベンチャーのようなエアロビ感覚で個人でもできる運動ゲームを作ってもいいかもな。


 運動をするにしても楽しんでやれれば長く続けられるだろうし。


 ま、取り合えず少し体もなまってるだろしとエアロバイクに跨って、有酸素運動をしようと思っていたらレオタードにスニーカーの上杉さんがやってきた。


「おう、前田も運動か?

 お前もパソコンばっかりいじってないで、たまには体を動かしたほうがいいぞ」


 上杉さんの言葉に俺は苦笑せざるを得ない。


「まあ、それはそうなんですけどね。

 なんで、いまはバイクを漕ごうとしてるわけで」


「まあ、エアロバイクならルームランナーより膝や腰への負担も少ないしいいんじゃないか?」


 そういう上杉さんだがレオタード姿だと体のラインがバッチリわかるな。


「うん、上杉さんは教師とか運転手って体動かしたりしてない職業のはずなのにやっぱりスタイルいいよね。

 実はちゃんと運動してたの?」


「まあな、ぶくぶく太ってしまってはうまい食い物や酒も楽しめんだろう?」


「そりゃまあそうですよね。

 あ、それと今度屋上にあるプールで泳ぐため水着を買いに行きませんか?」


「それは私とデートがしたいということか?」


 上杉さんがフッと笑ってそういうので俺は頷く。


「まあ、そういうことです。

 北条さんや斎藤さん、浅井さんなんかとはまた別に個別で買いに行こうかなと」


「まあ、お前も少しは女の気持ちがわかるようになってきたか。

 では買い物デートは楽しみにしておこうか。

 そういえばここで運動をして汗をかいたら、一緒に大浴場に行くか?」


 ニヤッと笑ってそういう上杉さんに俺は困りながら答える。


「上杉さんとは行くところまで行ってますから今更、裸でどうこうはないですけど、他の女の子がいたらちょっと気まずいじゃないですか」


俺がそう言うと上杉さんのはフッと笑っていう。


「ふむ、まあそれもそうか。

 では、今日のところは私の部屋の風呂に一緒に入るか?」


「今まではシャワーまででしたからそれも試してみたいですけどね」


「よかろう、ではこの後は私の部屋だな」


「ははは、お手柔らかに」


 まあそんな感じでこの後は上杉さんの部屋で一緒に風呂に入って、やることをやってしまったよ。

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