第81話 20年先を見据えて今のうちに炭鉱を抑えておくべきか
さて、ゲーム制作部メンバーとエステに行った後、先週の日曜に長谷部さんが教えてくれた、おすすめの洋食店に行き昼食を取った。
今回俺はローストビーフにしてみたが、やっぱりパンかライスのどちらかとコールスローサラダ、コンソメスープのセットで1000円は安い。
「やっぱりこの旨さで1000円は安いよな」
俺がそういうと北条さんがうなずいた。
「たしかにそうですわね。
あなたにこのお店を教えてくれた長谷部さんに感謝いたしましょう」
しかし、斉藤さんは訝しげだ。
「学食で食べればかけそばやもりそばは200円くらいだし、カレーライスで300円、定食でも400円くらいだけど?」
俺はそれに苦笑しつつ答える。
「大学なんかの学生食堂や会社の社員食堂はそもそも利益を出すことを重視してないし、需要が多い上に安定してるから安いんだよね。
流石に渋谷の駅前の店に同じ値段を求めるのは無理だよ」
そして北条さんが言う。
「あなたも一食に1000円くらい普通に出せる程度のお金は持っているでしょう?」
北条さんの言葉に斉藤さんはため息を付いて言う。
「私はあなたみたいに学校法人の理事長の子供に産まれたとかではなく、ごく普通の会社員の子供だもの。
そんな簡単にお金に対する価値観は変わらないわ」
それに対して北条さんが言う。
「あなたと同じように産まれたあっちの人は1000万円のダイヤを安いとかいうようになってますし、見習ったほうがいいですわよ?」
そして斉藤さんが言う。
「無理よ、無理無理」
何だかんだで出版系最高責任者になってもらう斉藤さんにもお金に関して、多額の取引になれてもらわないと困るとは思うけどな。
相変わらずこの店は女性客が多く来ていて、ローストビーフは人気メニューらしいが出てきたローストビーフは何重にも重なったローストビーフの上にのっている卵をつぶして食べると、ローストビーフの旨みに卵がからんでめちゃうまだった。
「なるほど、この店のローストビーフが人気なのも納得だな」
今日はメニューがバラけることなく、みんなローストビーフを食べていたのだが皆も同じ感想を持ったようだ。
「たしかに絶品ですわね」
北条さんがそう言うと斉藤さんもうなずく。
「たしかに高いだけのことはあるわ」
長谷部さんは一年の時に二年の東大生にころっと騙されたと言っていたが、まあこういう店をさらっと紹介して楽しませることができるやつならさもありなんではある。
そして昼飯を食い終わったら美容室へ移動する。
「じゃ、美容院にそろそろ行こうか」
「ええ、そういたしましょう」
北条さんがそう言うと浅井さんも言う。
「美容室も楽しみですね」
そして上杉さんはと言うと。
「髪型を整えるために美容室に行くなど何年ぶりかな」
と言っているので俺は聞く。
「いつもはどうしてたんですか?」
「最近は自分で適当に切っていたな」
「じゃあ今日はちゃんとおしゃれに切ってもらってくださいね」
「ああ、そうするよ」
まあ、男は床屋で済ませる場合が多いが女性は自分で切る場合も多いらしいからな。
自分で切ったほうがイメージしたように可愛くできるという場合と美容院とかに行くのは面倒だからという場合があるようだが。
と洋食屋の会計を済ませて渋谷駅西口からそうは遠くない美容院にへむかう。
その途中ですれ違う女性の髪型を見ると、今の女性の流行の髪型はロングのワンレングスやソバージュのようだが、イギリスのダイアナン妃の影響などかショートカットも女性もそれなりに見かけるな。
まあ、80年代前半はセミロングやショートカットのいわゆるアイドルへが人気だったが、現在は女性のアイコンは女優に移行していてロングヘアのほうが人気になってる。
というわけで予約していた美容室に俺たちは入る。
「いらっしゃいませ。
あ、ご予約いただいていた方ですね。
ご来店ありがとうございます」
「いえいえ、今日もよろしくお願いします」
まあ、俺は先週やってもらったばっかりなので、椅子に座って暇つぶしに考え事をするのだがな。
エステで考えていたのは食料の自給率に関してで、野菜の種や肥料の海外輸入に頼り過ぎな原状をどうにかするべきというものだったんだが、そもそもとして日本の燃料の海外依存の高さもなんとかしないといけない。
日本の石油や石炭の海外依存度は99%以上、天然ガスで97%以上と極めて高く、原子力発電のウランも海外だよりだ。
80年代では石油は秋田やほんの僅かに新潟で、石炭は北海道や福岡などで、天然ガスは千葉や新潟、北海道などで一応取れるがその量は多くはない。
もっとも千葉県の天然ガスは水溶性天然ガスで、九十九里地域を中心として、北西は松戸、西は東京都大田区、南西は富津の当たりまで広く存在しているので埋蔵量は多いのだが、水溶性なので地下水を大量に汲み上げると地盤沈下を起こす可能性もあるという問題があるからそんなに大量に取るわけには行かないんだよな。
ちなみに茨城の
まあ、海底のガス田や油田だと現状ではコストが掛かりすぎて採算が取れない可能性もあるが、現状では稼働してる阿賀沖油ガス田もあり、茨城から福島にかけての天然ガスや石油の埋蔵量は千葉のガス田に匹敵するようだし、早めに調査してみる価値はあるかもしれない。
もっとも阿賀沖油ガス田は昭和51年(1976年)に生産が開始されるものの平成10年(1998年)には資源の枯渇により生産が中止されていたりするが、新潟は秋田と並んで日本の油田が多い地域だったんだ。
まあ現在では新潟の油田はほぼ枯渇してるんだが。
日本の発電に関しては1960年頃は水力と火力がほぼ半々だったが、水力はそれ以降増えず1970年頃は原油の圧倒的なやすさもあって火力発電が75%だった。
しかし、第4次中東戦争によるオイルショックやその後のイラン・イラク戦争の勃発によって原油価格が高騰すると、火力発電では、80年代には燃料の天然ガスへの置き換えが進み、90年代以降は石油から石炭への回帰もすすみ、原子力発電所が多く設置されたことで60%程度まで火力発電の割合は低下した。
2010年頃まで発電量そのものは増えるが、火力や原子力の割合はほぼ変わらなかったのだが、平成23年(2011年)の福島第一原発の大事故よって全国の原子力発電所が停止され、一部が運転再開しても、元には戻らなかったこともあって火力の割合は8割まで増えることになる。
しかし2001年9月11日アメリカ同時多発テロ事件を契機にした、2003年にはじまったイラク戦争などにより2000年代には原油価格が上昇し始め、2008年のリーマンショック前には石油はバレル140ドルまで上昇するが、リーマンショックによって世界的大不況が起こることで石油需要が減少して石油の価格は急落した。
しかし、すぐに原油の価格は上昇に転じ、アメリカのシェールオイルの増産が始まる2015年に原油価格は低下したが、その後また原油価格は上昇していった。
またそれに連動して2008年のリーマンショック前には石炭の価格もかなり上昇している。
ちなみに石炭利用の減少は1970年代に止まりその後はむしろ増加しているんだ。
日本における石炭価格は1983年頃はボイラーや加熱炉などの燃焼を目的として使用される一般炭で海外輸入が一トンあたり15000円程度、国産が一トンあたり17000円程度、製鉄用のコークスに使われる原料炭が海外輸入が一トンあたり17000円程度、国産が一トンあたり24000円程度だったがプラザ合意による急激な円高によって国産価格はほぼ変わらないのに対して海外のものは一般炭で5000円、原料炭で7000円低度になってしまった。
これは日本の炭鉱にとってとてつもなく致命的だった。
しかし、2008年には海外輸入の石炭も日本の石炭と同じくらいまで価格が上昇し、その後も大きく下がったわけではなかった。
石炭は石油などと違い日本にも豊富に埋蔵されていて、日本の石炭可採埋蔵量は無煙炭と瀝青炭を含めて4億トン程はあるはずなのだ。
今ではかつて石炭を採掘していた炭鉱は多くが閉鎖されたがそうなった責任はプラザ合意以外にも日本政府にある。
国は炭鉱業へ採掘の機械化を進めるため、巨額の貸し付けを行う一方で、生産計画を達成できなければ、補助金を打ち切ると脅して合理化を求めたが、それにより現場では安全がおざなりにされたのだ。
たとえば、坑道が地圧でつぶれ採掘した石炭を運ぶ箱車が通れなくなったら、レール部分を掘り下げる応急措置で生産を続けたとか、大量のメタンガスが存在していることがわかっていて、坑内員のガス測定器から警報ブザーが鳴りっぱなしの状態であることを保安係員に報告しても、ブザーが鳴る目盛りを2%まで上げて採炭を続けさせていた事で、1970年代以降にも度重なるガス爆発事故が炭鉱で起こった。
それにより日本の炭鉱の安全性に疑問が持たれて閉山に追い込まれたりなどしたのだな。
実際に50年代から60年代の公害や福島第一原発事故も安全性よりも経済性を優先させたことで大問題になっているし、その結果の多額の賠償などが必要になったりするなど日本のダメージは計り知れないものになった。
安全性よりも経済性を優先させると、長期的には結局経済を損なうのだ。
だからこそ夕張は現在廃墟のようになってしまっているわけだが、炭鉱の運営会社だけでなく、通商産業省にも大きな責任があるということをテレビや新聞で追求した上で、改めて安全対策に十分配慮しつつ、埋蔵量的にまだ有望な炭鉱やその運営会社を買い取って、しばらくは細々とでいいので自分たちで再生工場都市に設置する予定の石炭火力や製鉄所などで使いつつ炭鉱を維持しておくのがいい気がする。
メタンガス自体は天然ガスなのだからそれを濃縮して利用してものいいと思うし実際に夕張炭鉱ではそういう試みは行われたはずだ。
日本において一般的な認識では石炭はとっくの昔に終わった燃料で石油に置き換えられて全く使われていないというイメージが大きいが、製鉄にはコークスが必要だし、工場のボイラーや火力発電では石炭は多量に使われている。
そういったことを日本人にきちんと広めていくのも大事だと思うのだ。
それとともに炭鉱やその運営会社の買い取りも進めるべきだがこれは北条さんに相談しつつ、どの炭鉱を買うのが良さそうかは北海道出身の大音さんや三田村さん、九州の炭鉱は佐賀出身の松平さんに調べてもらおうか。
北海道の二人と畜産が盛んな鹿児島出身の竹田さんには家畜糞の堆肥化に協力してもらえそうな農家について調べてもらいたいし、新潟出身の不破さんには越後友禅の東京進出と俺達が進めていた普段着和装企画への参加も持ちかけてもらいたいたいな。
五月祭の模擬店での出し物への熱意から見て断られることはないと思うし、こうすることで北条さんへの負担も減るだろう。
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