第80話 農業や水産業林業についても考えていくべきか
さて、翌日の日曜日は新宿のライジングの寮に入っている高校の時のゲーム制作部メンバーの俺の許嫁候補の女の子たちとエステや美容院に行き、時間があれば衣服も買う予定だ。
俺は先週同様に朝の7時に起きて、寝汗を流すためにシャワーをあびてから、洗面で歯を磨く。
今日もお出かけがあるのでみんな気合を入れて身支度をしているだろうから、自分で朝食を作るしかないようだな。
まあ、牛乳にシリアルとスクランブルドエッグにトマトジュースでも飲んどけば、それなりに栄養バランスは取れるか。
もそもそと朝食をとり、皿が空になったら流しで皿やカトラリーを洗って、それらを水切りに乗せて、しばらく放置する。
服を出かけるように着替えたら、およそ水が切れた皿やカトラリーを布巾で拭いて食器棚に戻す。
そんなことをしていたら8時40分を過ぎたので、部屋を出てみると浅井さんはもう部屋の前で待ってた。
「あ、浅井さん、もう待ってたんだ」
「あ、はい、今日はすっごく楽しみでしたので」
「ん、浅井さんもエステや美容室は初めてかな?」
「はい、私は児童養護施設で育てられましたので、そういう施設には縁がありませんでした」
「まあ北条さんとかはともかく、普通の女子高生はエステは使わない気はするけどね。
美容室も場合によっては使わないかな」
「そうなのですか?」
「都心と違って船橋とか西千葉の美容院は個人で経営していておばちゃんがもじゃもじゃパーマをかける場所って感じで、おしゃれな感じじゃないしね」
「うーん、私なんかはコンサートなんかでメイクや髪型を整えてもらうことはあったりしましたけど」
「ん、都心の美容室はそれに近いかもね」
美容師という職業に注目が集まり始め”カリスマ美容師”ブームが起こったのは1990年代後半で、芸能人の担当スタイリストとして名が広まった美容師たちがテレビに頻繁に取り上げられ、その芸能人に憧れる人々がこぞってそのサロンに詰めかけたりした。
渋谷でも”カリスマ店員”がもてはやされ、80年代から90年代前半の販売対象がOLや女子大生だったブティック店員であるハウスマヌカンを蹴落としたりもしたな。
しかし今の時代はそんなにおしゃれな店は都心はともかく地方にはそんなに無い。
そんな話をしていたら北条さん、斉藤さんも部屋から出てきた。
「あら、浅井さんはお早いですわね」
北条さんがそう言うと斎藤さんも言う。
「私も少し早く部屋から出ればよかったかしら」
そして少し遅れて上杉さんも来た。
「おう、お前らは早いな」
そう上杉さんが言うので腕時計を見ると9時ぴったりだな。
「まあ、あんまり早くから待つ必要はなかったけど、一応礼儀みたいなものはありますしね」
「じゃまあ、早速渋谷へと向かうか」
上杉さんの言葉に俺たちはうなずいて最上階を出て車に乗り込み渋谷へ向かった。
今回は渋谷での待ち合わせはないので、直接予約してあるエステへ向かう。
俺たちは渋谷駅から歩いて10分強、道玄坂を登って行って、閑静な高級住宅街である松濤の一角にあるエステへ到着した。
ヨーロピアンな外観がすごく素敵なのだが、あいかわらず高級感たっぷりな場所と外観だ。
「な、なんかすごく高そうです」
浅井さんがそう言うが北条さんは慣れたものだ。
「みなさんも今後はこういう場所で、エステを受けたりすることも増えると思いますので今のうちに慣れておいてください」
そんな北条さんの言葉に斉藤さんはため息を付いて言う。
「やっぱりなんか慣れないわね」
そして上杉さんが言う。
「前田と付き合っていくなら慣れるしか無いぞ。
こいつは昨日私に婚約指輪で1カラット50万円のダイヤと5カラット1000万円のダイヤをそれぞれ2つ買ったくらいだ」
それを聞いた北条さんは言う。
「1カラット50万円のダイヤと5カラット1000万円のダイヤならば相当安いのでは?
普通に小売店で買えば2倍から4倍はしますわよ?」
そして斎藤さんが突っ込む。
「いや、1000万円のダイヤって時点でおかしいでしょ?」
そして浅井さんも言う。
「1000万円のダイヤなんて怖くて身に着けられないですよ」
「まあ、5カラットのダイヤだと指の太さよりでかいから、着けて歩いたりするには不便だと思うし、耐火金庫にしまっておくとかでいいんじゃないかな?」
そして扉を開けると、前回同様店長らしい笑顔が素敵なエステティシャンさんが出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ!
皆様のご来店、心よりお待ちしておりました」
今回もエステティシャンの皆さんは、黒髪で肌の白いとても美しい女性ばかりだ。
「男性は施術には立ち会えませんので、ここでお待ちください。
女性の皆さんは奥へどうぞ」
「あ、了解しました。
今回も会計はまとめて俺がこれで払いますので」
とプラチナカードを取り出して見せる。
「はい、では今回もよろしくお願い致しますね」
店長から見れは俺はかなりの上客なんだろう。
というわけで今回も俺はサロンの応接でお茶を飲みながら1時間半ほどボケっと待つことになるので、今後のことを考えることにする。
現状では日本の食料の自給率は下がる一方で50%を切っている。
これはジリジリ進む円高で肉や魚などの食材も輸入したほうが安上がりになっているとか、アメリカのゴリ押しなんかもある。
しかし、そもそも野菜の種や家畜の飼料、肥料などはほぼ輸入に頼っているというのもやばい。
だから実質的な自給率というのはもっともっと低いんだ。
野菜の種を海外で生産する理由は日本の国内では野菜の育成に合う環境の場所が少ないというのがある。
これは家畜の飼料のとうもろこしなんかもそうだな。
西アジアや地中海、インドのような南アジアやアメリカの乾燥地帯を原産地とする野菜などは春から秋にかけて雨があまり降らず湿度が低いなどの条件が必要だが、日本は温暖で雨が多く湿度が高いためうまく育たなかったり、病気になったり、害虫に荒らされたりする可能性が高い。
また、日本は農地に向いた土地が狭く種を生産する畑をほかの畑から離すことがむずかしいという問題もある。
違う品種の作物を近くで育ててしまうと花粉が飛んできて交雑してしまう可能性が高いんだな。
日本で野菜の種を育て、育った野菜の花や果実から種を採るというのが普通に行われていたのは昭和40年(1965年)くらいまでで、その後はタネは海外で育てられたF1種のものを種苗メーカーから買うのが普通になっていった。
そしてF1種から採種した種はさまざまな形質を持つものとなるため、実質的に種を自家採取することはできない。
つまり海外から種が入ってこなければ、日本では一見自給率の高いように見える野菜も作れないってことだな。
これをなんとかするには固定種で自家採種をしていくしか無い。
現状では日本国内でも野菜の種を育て、育った野菜の花や果実から種を採ることをしている農家はまだあるのでそういった農家を支援していくしか無いだろう。
また瀬戸内海や四国は日本としては夏季でも比較的乾燥している地域で、小麦やオリーブなどの産地だし、土地を購入して種苗会社も立ち上げて、国内で野菜の種を生産できる体制を作ったほうが良さそうだ。
こうすれば四国の過疎化も防げると思うし、法人化すれば月給で働く社員は来てくれると思う。
実際米はまだ自家採種が続いているから、多少は安心なんだが。
また化学肥料もその原料はほぼ100%海外に依存している。
これの輸入が止まると化学肥料は使えなくなるということだ。
これに対しては畜産の牛糞や豚糞、鶏糞、鳩糞あるいは野菜くずなどの生ゴミなどを堆肥化した有機肥料の利用を進めていったほうがいいだろうな。
鳩の場合はエジプトや中東で長年使われてきた鳩の塔を日干しレンガではなくコンクリートで建てて、その中で鳩を大量に飼育してもいいと思う。
これらの家畜や家禽の糞は食べさせているものにより効果なども違うのでうまく使い分けないといけないがな。
田植え機やトラクター、コンバインなどの農業車両に必要な燃料は藻から作る人工石油でなんとかできればいいが、しばらくは輸入に頼るしか無いだろうな。
石油の輸入が完全に止まる、あるいは石油の価格が異常に上がるようなことがないといいんだが。
水産業に目を移せば現在は好調に見える沿岸漁業や遠洋漁業の漁獲高はこれから下がる一方になる。
無論石油が入ってこなくなれば水産業はほとんど全部が完全アウトなんだがな。
これは日本人が魚を食べなくなっていくというのもあるが、稚魚などの水産資源の枯渇の側面も大きい。
なので、コイのような淡水魚、ニジマスやギンザケのような淡水でも海水でも養殖が可能な魚だけでなく、マダイやヒラメ、ブリなどの海水魚の卵から育て上げる完全養殖は進めていくべきだろうな。
マグロやウナギは完全養殖に成功してもコスト的にペイするかかなり怪しかったはずだから、後回しでもいいと思うが。
中国や韓国・北朝鮮などは公海であれば魚はどれだけとっても構わないという姿勢なのだが、そうすると稚魚も減り日本の沿岸の魚も減る。
だがそれを言ったところでやめるほどまともな論理感はしていないから自己防衛は必要だ。
まあ、農産物のマスカットやイチゴなどの有名品種の窃盗にも注意は必要だがな。
林業に関しては家具メーカーの買収と木質ペレット製造工場の設置を進め、木材を家具の材料や燃料として積極的に購入するようにしていくしか無いかな。
そんな事を考えていたらやがて女性陣が部屋から出てきた。
俺は考え事をしながらのお茶の飲みすぎで、やはりもう腹がタプタプになりかけていたので助かった。
「ん、終わったかな?」
「皆様今回はありがとうございました。
良ければ月に一度は来ていただければと思います」
店長さんがそういうので俺は聞く。
「やっぱりそのくらいの頻度が一番いいのかな?」
「はい、施術を繰り返すほど体の調子はよくなっていくはずですので」
「ん、じゃあそうするよ。
また他の女の子もつれてくる予定だからよろしくな」
「はい、こちらこそ」
そして店を出たあと少し放心気味の皆へ俺は声をかける。
「みんなお疲れ」
俺がそういうと浅井さんが笑顔で言う。
「エステってすごく気持ちいいですね」
「ん、やっぱりみんな一回り顔が小さくなって、姿勢もしゃっきりしてるし、顔の輪郭がシャープになって、鼻の近くの黒ずみとかもきれいに取れてるね。
さすがエステはすごいよな」
そして北条さんがフフッと笑って言う。
「なかなかいいところですわね」
「じゃ、まあ先週同様に道玄坂の店でランチでも取ってから、美容室に行こうか」
俺の言葉に北条さんが言う。
「ええ、そうしましょう」
というわけで先週同様に安めでうまいローストビーフなんかの肉が食べられる洋食店へ向かい、みんなでランチを食べたがやっぱり美味しかったよ。
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