第79話 日本の医療制度は変えていく必要があるだろう

 さて、上杉さんとの結婚に向けた、結婚指輪や結婚衣装などの買い物は無事に終わった。


「今日の買い物ではなかなか値打ちのあるものが手に入ってよかったな」


 俺がそういうと上杉さんは苦笑して言う。


「私としては少し金をかけすぎだと思うがな。

 今後また出費はあるはずだし、早々に婚約指輪をを売るようなことにはならないようにしていかないといかんぞ」


「まあ、ゲームが条例などで突然禁止にでもならない限りは大丈夫だとは思いますけどね」


 まあ確かに思っていたより出費は多かったが、宝石などは100万円の安いものより1000万円の高価なもののほうが時間が経っても価値を毀損しないし、一生一度の結婚衣装もそれなりのものを着せてあげたいしな。


 それに新潟の吉沢友禅のような良いメーカーには頑張って欲しい。


 むろん、この後に結婚する北条さんとかにも同額のものを買わないといけないわけだが、まあ収入に関してはどうとでもなるだろう。


 俺の収入の基礎はゲームの製作だが、そのゲームに関しては据え置き型コンシューマゲームのサンシャインも携帯型コンシューマゲームのポケットサンシャインも順調だし、売上は落ちるがエロゲも含めたパソコンゲームやボードゲームだって順調だ。


 それにTCGの遊☆戯☆帝も発売されたしな。


 ただ、俺個人の収入を確保すれば日本の将来がどうにかなるわけじゃない。


 ”前”のバブル崩壊後の日本は給料は上がらないのに物価や社会保障費などが上がり続けた結果、少子化はどんどん進んでいって、結果として社会保障制度が崩壊したからな。


 また地方の人口減少が進むと一番最初に外国人を入れようとするのは地方公務員や県議会議員や市町村の議員だったりする。


 人口が減って合併を余儀なくされれば、合併後には公務員や議員の数は当然減らされるからな。


 それを防ぐために外国人をどんどん入れようとするし、外国人参政権も求めたり、役所で国民健康保険や生活保護の加入も進めたりするわけだ。


 だから地方の衰退は避けないといけないんだよな。


 まあ、東京や大阪のように行政トップがおそらく賄賂によって中国などに過度な配慮をするようになるのも、また問題ではあるんで、首都機能の一部は移転した方がいいと思うんだが。


「そういえば妊娠時の検査とか、出産時の正常分娩には妊娠・出産は病気やケガではないという理由で、健康保険が適用されていないんだっけ」


 俺がそういうと上杉さんはうなずいた。


「ああ、そうだ。

 まあ、妊婦健診は一回7000円から5000円程度が11回ほどで、出産費用は30万くらいだろうから、1000万円をぽんと出せるお前には大した金額ではないだろうが」


 日本では長らく”妊娠・出産は病気ではない”という理由で、妊婦健診や自然分娩の費用は、健康保険の適用から除外されてきたが、これは、日本で健康保険がスタートした昭和2年(1927年)の出産の形態が影響している。


 まず、会社員が加入する社会保険については、健康保険が導入された昭和2年(1927年)当時、医療費は全額給付で保険加入者の自己負担はゼロだった。


 初めは被保険者本人のみに給付されていたが、昭和15年(1940年)に加入者の家族などである被扶養者についても、5割負担で保険給付の対象となる。


 その後、1943年に被保険者に定額の自己負担が導入され、昭和59年(1984年)には定率の1割負担となり、平成9年(1997年)に2割、平成15年(2003年)に3割負担へと引き上げられた。


 社会保険において被扶養者については、昭和48年(1973年)に5割から3割に引き下げられ、昭和56年(1981年)には入院に限り2割に引き下げられたが、平成15年(2003年)一律3割負担に引き上げられた。


 一方、国民健康保険については、新しく国民健康保険法が制定された昭和33年(1958年)当時の自己負担割合は5割だった。


 しかし昭和36年(1961年)に世帯主が3割負担、昭和43年(1968年)には世帯員も3割に引き下げられている。


 これをもって”国民皆保険”が成立したわけだな。


 ちなみに昭和48年(1973年)には70歳以上の医療費が無料になるが、昭和58年(1983年)に老人保健法の施行により、70歳以上の医療費は外来の場合一ヶ月で400円、入院の場合一日300円で、二カ月間では社会保険本人については、15000円を限度とするとされたがこれでもかなり安い。


 最終的には平成20年(2008年)に後期高齢者医療制度が創設されたことで老人保健制度は廃止され、医療費の自己負担割合は、75歳以上で1割、70歳から74歳までと6歳未満は2割、70歳未満と70歳以上でも現役並みの所得者は3割となっていくがな。


 また高額療養費制度は、健康保険法等に基づき、日本において保険医療機関の窓口で支払う医療費を一ヶ月あたり一定額以下にとどめる制度だが、社会保険は昭和48年(1973年)、国民健康保険では昭和50年(1975年)より開始されている。


 ちなみにこの制度は世界の医療保険で適用されている国は殆どない。


 だから日本では高額な医療行為をかかる金を気にせず受けたりするんだな。


 それはともかく当初、出産に対する給付は、自宅での分娩費として現金給付を行う方法のほかに、任意給付として産院の収容・助産(産婆)の手当を現物給付で行うという方法もあった。


 健康保険における現物給付とは、医療行為そのものが提供されるもので、かかった医療費は健康保険から直接医療機関に支払われる。


 すなわち昔は産科での出産に費用はかからなかったわけだな。


 しかし昭和17年(1942年)の法改正で、助産手当への現物給付は廃止され、その後自然分娩に健康保険が適用されることはなかった。


 最終的に2020年代後半には自然分娩も保険適用をしようという話は持ち上がったが、その頃には日本の社会保険制度の崩壊は確実で結局はなし崩しで終わった。


 だが、少子化を進めないようにするならば、妊娠時の検査や出産費用の無償化は進めるべきだろう。


 そのための費用は老人の延命医療の自己負担化か禁止で行けるはずだ。


 胃瘻や点滴のような人工栄養で延命され,病院のベッドで寝たきりになっている高齢者というのはヨーロッパだけでなくアメリカやオーストラリア・ニュージーランドなどにもほとんどいなくなっていった。


 終末期高齢者に人工栄養を行うのは,非倫理的な老人虐待であると考えられているし、とにかく寿命が延びればいいと考えるような医者もいないのだ。


 このあたりはとにかく親や年長者は大切にしないといけないという儒教的考えの強い日本と、そうではないキリスト教的な欧米オセアニアの考えの差もあるだろう。


 また,高齢化と金融危機による医療や高齢者ケア関連予算の削減もあったりする。


 そもそもイギリスや北欧では住民は通常,居住地域内の家庭医とか医療センターと呼ばれる場所でのかりつけ主治医が決められており、医師の診察を希望する際は,まず家庭医とか医療センターと呼ばれる場所に連絡し,予約を取り診察を受けるのだが、かかりつけ医を受診しようにも予約で2〜3週間待たされるケースや、専門医への受診が必要と診断され、紹介状を持って専門医の予約をとっても受診まで数か月単位で待たされることも珍しくない。


 日本と異なり,緊急時を除いて病院に直接行くことはできないし,施設や病院を転々とする事もできない。


 なので対して特に危険な状態でもないのに簡単に病院にかかるということ自体が基本出来ないのだ。


 無論事故や突然倒れて意識がないとかだとかは例外だが。


 イギリスや北米は日本で言えば通常から医療崩壊気味なんだが、それでも普通に国は運営できている。


 アメリカなどは基本的に医療費が高すぎ、保険も基本的に個人で保険に入るしか無いので貧乏だと病院へ行けず、インフルエンザで毎年3万人ほどが死んでいたりするしな。


 たとえ入院しても,短期間で老人介護施設に戻されるし、老人介護施設でも無理な食事介助を行わず,食べられなくなっても人工栄養を行わないので,短期間で亡くなり,寝たきりになることもない。


 そのため,誤嚥性肺炎で死ぬということもほぼなかったりする。


 日本で高齢者を長期入院させるのは老人介護施設の数が圧倒的に足りないのだが、病院の入院用のベッドが過剰であることに加えて、ベッド稼働率向上のために、平均在院日数を意図的に長くしている病院側の事情もある。


 結局の所、老人自己負担が安いので病院としては取りはぐれの可能性が低いわけだ。


 市町村などの自治体立病院の赤字問題が取り上げられているが、一般企業では需要予想をして供給体制を整備するので当然で赤字なら潰れるが、病院などの公共施設は”地域にとって必要だ”という言い訳で赤字を垂れ流して存続していたりする。


 同様に老人の療養型病床のつくりすぎも問題だった。


 だからこそ今すぐに施設整備をし長期療養病院を老人介護施設へ変更しなければならないのだ。


 まあ、療養病床の10万床を老人介護施設に転換すれば、単純計算で約2000人の医師が療養病床から解放され、看護師では約3000人は開放される。


 別の言い方をすればそれだけの医者や看護師が職を失うということでもあるが、日本の人口あたりの医者の数は世界的に見れば少なすぎるくらいだ。


 また入院にかかる費用も療養型病院から老人介護施設に切り替えれば毎年2500億円程度の費用削減にもなるはずである。


 またこの時代でも国民健康保険を悪用する外国人はいるので、国民健康保険の保険証には日本に一年以上在留しているというような制限をつけるべきだろう。


 俺がテレビや新聞で、妊娠時の検査や自然分娩出産を保険適用し、ゆくゆくは無償化すること、老人用の療養型病院から老人介護施設に切り替え、自力での食事ができなくなったら人工栄養での延命治療はやめること、高額医療を年金世代の高齢者や生活保護世帯から外すこと、国民健康保険の保険証には日本に一年以上在留しているというような制限をつけるべきと伝えた所、厚生省の上層部や医療法人の上層部に大病院の医師などが雲隠れしたようだが、療養型病院から老人介護施設に切り替え、高額医療を年金世代の高齢者や生活保護世帯から外すことは話し合われるようになったらしい。


 まあ、これで寝たきり老人の介護で苦しむその子供やら老老介護やらは減ると思うし、社会保険料がばかみたいな割合に上がることもないだろう。


 少なくとも寝たきり高齢者の数は減らすことになると思うが、あとは結婚や出産を増やすにはどうしていくかだよな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る