第75話 ラブラブライブの声の吹き込みも始まったようだな

 さて、普通の現実世界で過疎に悩む北海道夕張市の学校の女子高校生が学校廃校の危機を乗り越えるため学園アイドルとして活動してデビューするTVアニメの”ラブラブライブ”の脚本・台本も出来上がってきたようだ。


 ちなみに夕張は最盛期は高校が7つあったが、すでに3つは廃校になり、2003年までに3つが廃校になって2020年代まで残るのは一つだけだが、その最後の一つも在籍する生徒数が70人ちょっとまで減ったりもして廃校の危機にさらされていた。


 そして、浅井さんと横山さんはアニメの中で高校生アイドルユニットを組むことになる女子高生のうちの最初に出てくる三人のうち二人で主役級と言ってもいい役らしく、声の吹込みを頑張ってやっているようだ。


「ラブラブライブの放映は7月から2クールの半年間かな?」


 アニメ番組や特撮番組では、4クールで一年間放映される作品が多かったが、これは元々アニメが低年齢層向けでスポンサーの玩具などのプロモーションを主目的として放送されていることが多いためだった。


 しかし最近は玩具の販売不振による打ち切りも増え、オリジナルアニメはOVAで発売されたりや劇場で放映されることも増え、テレビアニメは漫画からのアニメ化などでそもそも玩具を販売するよりも漫画のプロモーションが目的な作品も増えたこともあってか2クールの半年で終わる作品も増えている。


 もっと先になると1クール13話で終わる作品も増えて、話が中途半端に終わることも珍しくなくなるけど。


 俺が二人に聞くと二人はうなずいた。


「ええ、そうなります」


 浅井さんがそう言うと横山さんも言った。


「放送は半年間で7月から来年の1月までだね」


 まあ、本当の主役はらしさを優先して北海道出身の女の子らしいけど、準主役ならすごいことだよな。


 ”前”の80年代のテレビ番組は漫才ブームとともにお笑い番組がブームになり、そのときに有名になった人気漫才師はその後もテレビなどのお笑いを引っ張っていく存在になる。


 そして制作費が安くて視聴率が取れやすいバラエティ番組が増えていくのもこの時期だ。


 また、80年代前半は学園ドラマや時代劇が多かったが、後半はキラキラしたトレンディドラマやドロドロした不倫ドラマが増えていく。


 いずれにしても地方の過疎化や衰退などどこ吹く風で東京の華やかさを描くようなものばかりだったから、地方からは首都圏に憧れて出てくる人間、あるいは進学先や就職先がなくて不本意でも上京せざるを得なかった人間は多くても、首都圏育ちなどでは地方の衰退の実情を知っている人間は殆どなかった。


 ちなみにアニメでは機動戦士ガンガン ジャアの逆襲が3月から映画で上映されたが、かなりのヒットになっている。


 やはり機動戦士ガンガンの主役とライバルには明確に決着をつけてほしかった視聴者が多かったのだと思う。


 この時期はOVAの隆興による日本の劇場アニメの低迷に加えてエイリアンに代表されるような海外のSFX映画の人気で結構博打ではあったようだが、結果としてはスペシャルロボット大戦の常連になる有名な作品になった。


 またスタジオジブチは4月16日にとなりのトロールと蛍の墓を劇場で上映しこれまた大ヒットしていたりもする。


 ガイアックスはトップをねらえ!ガムバスターを製作していて秋には放映されるはずだ。


その他には秋にはグルメ漫画でも有名になった美味しんぼうがアニメ化されるし、4月からはディフォルメロボットアニメのマシン英雄伝ワタルなんかも放映されている。


 そしてバブル景気で日本は経済大国だと浮かれているうちにそれが破裂すると二度と立ち直れなくなるのは、結局バブルの恩恵を受けたのが結局は金融業や商社などを中心とした首都圏の一部の会社や人間だけだったからだと思う。


「そういえば作品中で夕張は40年前は10万人以上の人口を抱える都市だったと言っていましたけど本当なのでしょうか?」


 浅井さんがそう聞いてくるので俺はうなずいた。


「夕張はかつては石狩炭田の中心都市として栄えたのは事実なんだよ。

 明治21年(1888年)鉱脈が発見されて、多数の炭鉱が拓かれ、国内有数の産炭地として盛況を誇り、昭和35年(1960年)には炭鉱に加えて産業機械製造や化成品製造などの関連産業も発達して、116,908人の人口を抱える大都市になったんだ。

 けど、それ以降は中東で大きな油田が発見されて、原油価格がものすごく下がった上に石油や石炭の輸入自由化もあって、燃料の石油へのシフトが進行するとともに、オーストラリアなんかの海外の安い石炭との競争を強いられた。

 更に100年近く掘ってきたことで炭鉱の奥深くまで掘り下げないといけなくなったことなどもあって事故も多く起こった。

 結果としては70年代から閉山が相次ぎ、今でも稼働してる鉱山は僅かなんだ。

 同様なことは炭鉱で栄えた福島の常磐や長崎の西彼杵にしそのぎや北松、福岡県の三池や筑豊、佐賀の唐津や熊本の天草なんかにも言えるけど」


 俺がそういうと浅井さんは寂しそうに言う。


「そうなんですね」


 そして横山さんも言った。


「アニメの中のセリフはほとんど事実なんだね」


 俺は二人にうなずいた


「そうなんだ。

 しかも夕張は元々炭鉱の開発により山合いに開かれた街だったから、農業に向く平坦地が少なく、石炭産業以外の産業基盤がほぼ無いために、福島がハワイアンセンターで雇用を創出したようなことも出来ず、働き手の若者が札幌や東京へ流出し、人口が激減し街には高齢者だけが残る結果となり、急速に少子高齢化が進んでもいるんだよ。

 まあ夕張メロンが有名なだけ他の炭鉱の町よりは知名度的にはマシだと思うけどね」


  ”前”では最盛期からの夕張市の人口減少率は、全国の自治体でもトップクラスで、2020年代には夕張市の人口は7000人を下回り、人口減少に歯止めがかからない状態だった。


 俺がそういうと浅井さんが質問してきた。


「なので夕張の高校がアニメの舞台なのですか」


「そういうことだね。

 とにかく首都圏の繁栄は地方の若者の流出による過疎化の犠牲の上で成り立っているということを知らせないといけないと思うんだ。

 もっとも今は俺たちがテーマパークやスキー場をぜんぶ買収して、温泉施設なんかも作って、テレビでCMを繰り返し放映した上で、羽田空港から新千歳空港への直行便でのツアーを組んだりして、総合リゾートとして売り出したうえで、老朽化した水力発電所に変わり木質バイオマス発電の発電所に、木材に石炭を混ぜてペレットを作る工場も建設して、それも稼働していて、林業も株式会社化されたこともあってそれぞれに雇用も産まれているはずだから作中の状態よりは少しマシだとは思うけど」


「アニメの中だと高校生アイドルユニットや夕張市に支援する青年実業家が出てきますが……」


 浅井さんがそう言うので苦笑して俺は答える。


「多分モデルは俺だね。

 秘書は北条さんだと思う」


 そして横山さんが言う。


「本当に前田さんは漫画やアニメの登場人物みたいですよね……」


 俺は苦笑しつつ答える。


「まあ、そうかもな」


 学園ドラマは今はあんまり流行りではないが、地方の過疎に悩む学園の実写ドラマも作って、地方の衰退を真剣に受け止めるように警鐘を鳴らしたほうがいいだろうな。


 まあ、これ以上の地方衰退を食い止めるために俺たちで再生工場都市計画や唐津や津軽海峡のハブ港化計画を進めるわけなんだけど。


 あと、炭鉱会社が夕張市に鉱産税61億円を未払いのまま撤退しその他負債を押し付けたことや、炭鉱住宅の建設に際して地元業者優先の随意契約が多く行われ、建設費も適正な価格に比べて相当高くついたケースもあったこともちゃんと報道していくべきだろう。

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