第74話 日本はもっと自給自足を目指すべきだ
さて、今度こそ懐かしいメンバーとの飲み会は終わった。
「じゃあ、みんな東大の本郷キャンパスと弥生キャンパスで行われる五月祭にはぜひ来てくれると嬉しい。
俺たちやその関係者がやる屋台とかの詳しい配置場所とかが決まったらまた連絡するよ。
パンフレットも送ったほうがいいかな?」
俺がそういうと明智さんが代表としてなのかうなずいて言う。
「わかったっす。
自分たちもきっと美味しいものを食べられると思うっすから期待してるっす」
その回答には俺は苦笑しつつ答える。
「まあ、期待には答えられると思うぜ」
とりあえず北条さんの抱えている業務をゲーム開発部メンバーや長谷部さん、篠原さんなんかに投げることで、現在お願いしている業務がスムーズに進むようになればいいなと思う。
東大の地方女子もこれからの見極めは必要だとは思うが男子に比べると招待にあぐらをかける状況ではないのもあるし、きっと助力してくれると思うしな。
そして俺は北条さんに小さく言う。
「ああ、それから、藻類バイオマス石油に関しては可能な限り内密に進めるべきだと思う。
基本的にはこれから敷設を進める下水処理場や汚濁の酷い湖沼の浄化のための藻類の研究として表向き進めて行ったほうがいいだろうね」
「それはなぜですか?」
「藻類で石油の類似エネルギーをいくらでも作れるとなればアメリカや中東産油国が何らかのアクションを起こして潰そうとしてくるはずだからね」
「なるほど、確かにそういうことは十分ありえますわね」
「今の80年代では欧米石油メジャーも大きな力を持っているし、サウジアラビアなどの中東の産油国が減産を放棄して一時的に石油をジャブジャブ増産して意図的に原油価格を値崩れさせて、化学合成人造石油などという競合相手を赤字販売に追い込んで、競合相手を潰すと減産してまた石油値上げするという行動を繰り返すのは毎度のことだからな」
長期的には採掘が楽な油田の枯渇とともにドンドン損益分岐点の価格高騰して将来的には1バレル70ドル以上でないと利益が上がらなくなったりすることで自分たちの首を絞めることにもなるのだが、多くの人間は自分の利益や目先の利益しか考えないからな。
人造石油自体は1917年に実用工場がドイツで建設されている。
そして第二次世界大戦期、ナチス・ドイツと大日本帝国は、石炭は自給できたが石油の自給はできなかった。
そこでナチスドイツは国内炭と水から液化石炭による人造石油を石炭を粉砕し溶剤と混合して高温・高圧下で水素と直接反応させる直接液化法のベルギウス法や石炭を一度ガス化(石炭ガス化)し、生成ガスを分離・精製した原料と合成反応させ液化する間接液化法フィッシャー・トロプシュ法によってガソリンや軽油類似の燃料を合成し、かなりの量の軍用燃料を自給することができた。
しかし1943年にアメリカ軍によるタイダルウェーブ作戦でルーマニアのプロイェシュティ油田を失って、さらにイギリス軍とアメリカ軍の爆撃で石炭液化工場が破壊され、またルール炭田やシレジア炭田が連合国に占領されたことで、戦争末期は石油供給が崩壊したことでそもそも戦争継続ができなくなっていた。
一方の日本は、国産の人造石油より、仮想敵国のアメリカに石油を依存した方が安上がりという安易な考えを当時の政府がしていたため人造石油工場の建設着手が遅れ、アメリカに石油だけでなくゴムやくず鉄、鉄鋼石などを禁輸されたことで、人造石油工場の建設に鋼材が充分に配給されず実質的には工場を建てることができずに終戦を迎えたが。
本当日本政府ってのは昔からバカしかいなかったんだな。
まあ、それはともかく1960年代に中東で大油田が開発され、原油価格は1バレルあたり2ドル前後に低下し、石炭液化は、液化用の石炭のほか、プラント加熱用の石炭、水蒸気の還元により水素を製造するための石炭を必要とし、石炭を大量に消費するわりに人造石油はそれほど製造できず、二酸化炭素が大量に発生するため、石炭液化は急速に忘れ去られていった。
これは日本の炭鉱業が衰退する原因にもなったんだけどな。
しかし、1980年代のオイルショックで原油価格が高騰して一バレル50ドルに値上がりしたため、バレル40ドル程度の人造石油もペイするようになって研究が始まったのが、それなりに研究成果が出た所でサウジらOPECが人造石油潰しで1990年代にバレル20ドルに値下げしてしまった。
結局は太平洋戦争のときと同様に日本の権力者は目先しか見ないので人造石油は儲からないと研究を放棄してしまった。
ブラジルのバイオマスエタノールなんかもそうだけど石油の価格が下がると放棄されるんだよな。
そしてその後はバブル崩壊でそれどころじゃなくなったわけだ。
なので、人造石油は化学合成不可能か出来てももの凄く高価で採算に合わないに違いないというのも、マスコミが流布するところに加えて学校教育の賜物でもある。
まあ,火力発電なんかは石油から石炭や天然ガスに原料がシフトしていったりもするので人造石油にそこまでこだわることもないけどもな。
木質バイオマスペレットについても代替エネルギーとして再生工場都市では火力発電に使うし、ペレットストーブも開発して普及させるつもりだがこちらは外国産の輸入材木に押された林業も含めて、地方を支えてきた石炭産業、製炭産業、林業が一気に衰退したことをなんとかしたいというのも大きいし大きく報じていくけどな。
どっちにしろ石油は合成ゴムや化学繊維ビニールやプラスチックに発泡スチロール、更には医薬品やサプリメント類の原材料にもなるから燃料としてだけ代替えがきけばいいというものでもないし。
それはともかく廃車や廃家電などから鉄、銅、アルミを原料として再利用したり、木質ペレットや藻類バイオマスなどでエネルギー関係も可能な限りは自給自足を目指すべきだと思う。
結果として間接的に食料の自給率も上げられる可能性があるしな。
原油や天然ガスの価格なんて産出国の思惑や世界的な景気の動向で乱高下するものだし、外国からの輸入に頼り切りは駄目だと思うぜ。
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