第72話 太平洋の航路のハブ港は青森・函館がいいか
「ところで、太平洋側のハブ港ですが、横浜港などの改革を待つよりも、もっと適した場所に私達で作り上げてしまったほうが良いかと思いますわ」
北条さんがそう言うので俺は聞く。
「もっと適した場所というとどこだろう」
北条さんはふふっと笑った後に言う。
「今年は青函トンネルが開通して、青函連絡船が廃止され、その結果、青森や函館の港にその跡地が残されています。
もちろん青函トンネルは鉄道専用のため車を運ぶためにフェリーなどは走っていますが。
また青函連絡船は船の中に線路を敷き、貨物を貨車ごと積んで走っていたのでNR貨物の管轄でもありました」
北条さんの意見に俺はうなずく。
「なるほど、神戸や横浜なんかとちがって、青森や函館は財閥系倉庫会社やその下で働いてたたヤクザ組織なんかも関わってないだろうし、確かに障害は少なそうだね」
日本は国や業界全体が先細るのを防ぐことよりも、横並びから抜けようとする他人の足を引っ張って儲けることをさせない方が好きだ。
未来ではMMORPGにはじまり、電子書籍サービスやMP3音楽再生、音楽や動画の配信サービスなどに加え検索エンジンやSNSなどもそうだし、港湾も例外ではないだろう。
結局美味しいところは全部外国企業に持っていかれてしまった。
そうならないためにもハブ港は邪魔されないようにやったほうが良さそうだ。
「それに津軽海峡はアメリカ~アジアの太平洋航路の最短距離の大圏航路上だから、ここと唐津を東西のハブとすると神戸と横浜をそのまま代替して日本の東西をつなぐハブとして機能しそうだ。
おまけに瀬戸内海を通すより日本海側の航路のほうが航路も混雑もしないだろうしな。
函館湾は全体的に水深も深いし函館港も深いからメガコンテナ船を接舷できるようにするのはそこまで難しくないだろうしね。
ただし平地の面積はそこまで広くないのが欠点かな。
逆に青森の陸奥湾は砂浜が多くて、港に向いた地形は少ないけど、青森市の青森港やむつ市の大湊港は平地が結構広い。
まあ、函館港ほど水深は今はないけど、そのあたりは大水深化工事でなんとか出来る範囲だと思うしいいんじゃないかな。
首都圏へは鉄道貨物で運べばそこまで時間はかからないし」
俺がそういうと北条さんは首を傾げた。
「ではなぜ、青森や函館の港は発達しなかったのでしょうか?」
そう聞かれたので俺は答える。
「終戦直後から朝鮮戦争のころはそもそ鉄道は非電化でまだ蒸気機関車が走っていたくらいだったんだ。
ディーゼル機関車や電気機関車に比べると蒸気機関車は,熱効率が低いため動力費がかさみ,また給水・給炭作業を比較的頻繁に行う必要があるので長距離走行には不利で,機関車運用効率が悪く折返し時間も長くかかるから貨物輸送にはあんまり向いてなかったし平均的に速度も遅かった。
平坦な場所で時速70キロくらいで、有名なD51で50キロ、平均だと時速30キロなんていうのも普通だったらしい」
「それはたしかに遅いですわね」
「で、その頃はトラックも5トン積みの低速なものがやっと出てきたくらいで、なおかつ高速道路も整備されていなかったから工業地帯で生産した土嚢用麻袋・軍用毛布および綿布などを近くの港から積み出して朝鮮半島の戦地へ運んだほうが都合が良かったんだよね。
でも今は青森まで普通に電化されてるし、大型の10トントラックやコンテナを乗せることが出来るトレーラーもあるし、高速道路もかなり整備されてきたから、必ずしも生産工場の近くの港じゃないといけないことはないし」
「では、青森県や北海道などの地方自治体とも協力しあって、青森や苫小牧の再生工場都市計画に加えて、函館湾や陸奥湾のハブ港計画も進めるとしましょう」
「うん、お願い。
実際青森は再生工場都市だけでなくて、ハブ港もできれば現状の貧しさから抜け出せそうだとも思うし」
実際に青森県は平均賃金が日本最下位で平均労働時間は日本最長、かつ高校・大学への進学率は日本最下位かつ、平均寿命も日本最下位という非常に厳しい状態がずっと続くことになる。
東北が貧しい理由はまず農業的なものでは太平洋側は山背があって冷害がよく起こったこと、日本海側は積雪が深く二毛作などの余裕がなかったことだが、青森は雪が深い上に寒すぎてて米を作れずそもそも農地に向いた土地自他が少なかったというのはでかかったと思う。
更には北海道のように広い平野があって畜産やコムギ・じゃがいもなどの栽培で代替するというのも難しかったというのもあるだろう。
また東北新幹線は昭和57年(1982年)に開業したが、その最北端の終着駅は長らく盛岡までで、新青森駅が開業したのは2010年ということも影響があったと思う。
さらには青森県の大きめの都市圏は青森・八戸・弘前に分割されていて、岩手の盛岡や宮城の仙台のように一つの場所に人口が集中していないのも大きいかもしれない。
東北新幹線が盛岡止まりになったことで、多くの企業は、北東北支店を盛岡に設置して、それより北に進出する企業はかなり少なかったはずだた。
まあ、新青森駅については国鉄側は新幹線の北海道方面への延伸計画も踏まえて、石江地区が適当と考えているとして石江地区を推進する立場を示したのに対し、青森市や青森市議会、商工会議所などは青森駅併設が適当であるとする立場を崩さなかったことで意見調整が難航したのに加えて国鉄の赤字が膨らんで整備新幹線の建設計画の当面見合わせが閣議決定されたのもあるんで、あるいは自業自得でもあった気もするが。
秋田や山形は豪雪地帯なので裏作は難しいが有名な米どころだったりして農業が盛んだし、福島や北海道は炭鉱で栄えてた事があったが、青森はそういったものもなかった。
なので70年代から80年代には青森県が1次産業以外の産業をつくろうと、東京に本社がある企業を誘致して、特に縫製関係の工場を結構誘致したらしい。
東京の工場も人件費が安いから青森に進出はしたが、例えばオイルショックなどで会社の経営状態が少しおかしくなると、最初に青森の従業員がクビを切られ工場が閉鎖されることになった。
青森の不幸は明治以降から現在に至るまで、なんらかの産業で栄えたことがないことだろう。
それもあって原子力関連施設が非常に多い県でもあるが、まだ幸いなことに青森県は大地震に見舞われたことは殆どないのだけが救いかな。
また青森県内の交通鉄道の利便性が低く、自動車交通に依存している部分が大きいようだ。
なので俺は北条さんへ言う。
「まずは東北新幹線の青森までの延長と現状の上越新幹線である日本海側の東北新幹線の開通も含めて青森・八戸・弘前への移動がスムーズに出来るようにもしていくべきだろうな。
東北新幹線の線路を使った貨物新幹線があったほうが首都圏への貨物輸送にかかる時間も大幅に短縮できるだろうし」
「なるほど、たしかに青森から貨物列車に積み替えて首都圏へ送るにしても、高速な貨物新幹線が使えればその速度は大きく変わりますわね」
「うん、後、八戸には近くに三沢空港があり自衛隊や在日アメリカ軍も利用しているけど、青森から関西より西へ移動する場合は鉄道よりもずっと便利なはずでもあるし、八戸には八戸港もある。
なんで八戸に新幹線が通るのも影響は大きいと思うんだ。
最低でも八戸や新青森へ新幹線を早く通すべきだろう。」
「なるほど、そうかも知れませんわね」
俺と北条さんがそういう話をしていたら明智さんが言った。
「あー、部長と会長がなんか大変そうなことをしようとしてるのはわかったっす。
なんでTCGやTRPGについては安心して任せてほしいっすよ」
明智さんの言葉に同意するように他のみんなもうなずいた。
「うん、みんな頼むよ」
久しぶりに会ったゲーム製作部メンバーだけど、相変わらず頼もしくて助かるな。
「まあ、それでも北条さんの負担は大きいまんまだとは思うから、東大の地方女子をメインに北条さんのバックアップを出来る人には業務を手伝ってもらっていこう」
俺がそういうと長谷部さんが肩をすくめて言う。
「まあ、お手柔らかに頼むよ。
結構優秀な奴がそろってはずとはいえ、あんたらは異常だからな」
長谷部さんの言葉に対して俺は言う。
「まあ北条さんの処理能力は確かに異常だよな」
そして北条さんが言う。
「その異常な処理能力を必要とする仕事を次々考えついて投げてくるあなたのほうが異常ですわ」
それに対して明智さんが言う。
「まあ、お似合い夫婦っすよねぇ」
そして上杉さんも言った。
「全くだな」
なんか酷い言われようだよな。
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