第70話 東シナ海方面のハブ港はやはり佐賀県がいいだろう

 さて、話はまだまだ続く。


「ところでハブ港を作るとして、なぜ佐賀なのですか?」


 北条さんがそう聞いてくるので俺は答える。


「まず東京港・川崎港・横浜港や千葉の港が含まれる東京湾、四日市港・名古屋港などが含まれる伊勢湾、大阪港や神戸港・広島港などが含まれる瀬戸内海の3海域は海上交通が輻輳しているうえ、大きな港がすでに複数存在してるからできればハブ港としては優先したくはないんだよね。

 その点で唐津湾や伊万里湾はそういう制限はないし、昔は石炭の積み出しをやっていたことから、そこそこ港は整備されているけど現在ではあまり使われないからそこまで既得権益でがんじがらめになってないと思うし、港の拡張もしやすいと思うんだよ。

 鉄道とのアクセスもいいから日本国内である程度の距離はコンテナ貨物に載せ替えて走らせれば広島や神戸・大阪なんかはカバーできると思うしね。

 九州内部だとトラック、北海道とかだと小さめのコンテナ船に積み替えて運んだほうが早いかもだけど」


実際にずっと先には唐津港と伊万里港を合わせて西九州港として港湾機能を統合整備する計画は上がっていたしな。


 俺がそういうと北条さんはうなずいた。


「なるほど、九州であれば博多でも良いように思いましたが、既得権益や港そのものの拡張性などを考えると唐津や伊万里のほうが良いかもしれませんね」


 北条さんの言葉のうなずきつつ俺は話を続ける。


「そうだね。

 後、博多湾は水深が航路でも14m程度しかなくて浅すぎるから、メガコンテナ船が湾内に入れないんで、最初からハブ港にするのは無理なんだ。

 あと佐賀県は大型地震の発生確率が最も低いレベルだから他港に⽐べ地震災害に関しては安心安全な港だと言えるっていうのも大きいね。

 まあ、九州は台風は結構来るけどさ。

 それから現状ではあまり使用されていないこともあって安い港湾施設使⽤料に⼯業団地価格というメリットも有るし、静穏で水深も深い天然の良港だから開発が低コストで済むというメリットも有るんだ」


 そこで北条さんが首を傾げながら言った。


「しかし、なぜコンテナ船の大型化が進んでいるのですか?」


「基本的にはコスト削減のためなんだけど、一つは船舶のコンピュータ制御が進んで乗員数が少なくても大型の船を運行できるようになってるからだね。

 コンピュータ制御に関しては距離が長くて障害が少ない航空機や船舶のほうが鉄道や自動車よりすっと進んでるんだ。

 それと船体の大型化によって積めるコンテナの数が増えればコンテナ1個あたりの燃料消費量が低下し、1個あたりの輸送費用が安くなるからでもあるんだけど」


俺がそういうと北条さんはまた聞いてきた。


「では、港湾管理についてもそれに対応して進んでいるのでしょうか?」


 それに対しては俺は苦笑しながら答える。


「それが日本の場合は港湾の方のコンピュータ化や自動化はは全然進んでないんだよね。

 シンガポール港は今年に「CITOS」というコンピューターシステムを開発して、世界でもいち早く港湾業務のコンピュータ化に着手しているし、韓国の釜山港や台湾の高雄港、中国の香港港や上海港なんかもそれに追従してるけど、日本政府はそういう対策を全くしていないんだよね」


「それは困ったものですわね」


「なんで唐津や伊万里に関して大水深化工事を進めて20m岸壁を作りつつ、荷役設備の整備を早急に進めて大規模な物流コンテナターミナルをつくり、港湾荷役作業を24時間365日可能にすることや通関の簡易化、迅速化の仕組みを整え、関税自由地域をつくり、物流全般に関わる作業全般については関税を免除、関税自由地域で事業を行う企業に対して、法人税も減免することによって、海運業者や物流業者や輸出入者にとってメリットが感じられるような、さまざまな取り組みを行っていく必要もあるね。

 優先するべきはまずは唐津だと思うけど。

 他の港でそういうことがまったくと言っていいほど進んでいないのは港湾の管理を行ってるのは都道府県や市区町村のような地方自治体がほとんどだからっていうのと中小企業基本法による零細企業の数の多さが大きいんだけど」


「では唐津の港では私達が積極的に介入して、コンピュータ化や自動化を進めないといけませんわね」


「ああ、その通り。

 問題は太平洋航路なんだよな。

 大水深化工事に加えてコンピュータ化や自動化を早急に進めてくれるなら横浜港でいいんだが、現状で横浜は世界ランキング10位に慢心してそうな気がするんだよな。

 とはいえ頭の硬い地方の役人が俺たちの話を聞くとも思えないのでも有るんだが」


とはいえ最低でも博多港や東京港・横浜港から韓国の釜山港に荷物を運んでいってメガコンテナ船に積み替えてそこから外国へ運んでもらうなんて言う情けないことにはならないようにはしたいものです。


「困ったものですわね」


「そうなんだよな。

 そういう点では内閣の経済政策に現場に詳しい民間人を起用したほうがいいとも思うんだが」


「なかなか簡単にはできそうにありませんわね」


「そうなんだよな」


 もっとも大渕内閣以降日本の経済政策に深く関わっていたパソナカ平蔵の例もあるし、絶対的に不可能ということもない気はするがな。


 しかし、パソナカ平蔵自体はとっとと地獄に落ちてもらいたいと俺は思うけどな。


 アレの存在は日本経済にマイナスしか与えなかった。


 そして、実際にアジアにおける製造業の生産拠点は繊維などについてはとっくに日本から中国や東南アジアに移りつつあって、今後は家電製品や家具などでも同じことが起こっていく。


 そして安く作れるからと何でもかんでも中国や韓国・東南アジア諸国に作らせているうちに日本は製造業の国ではなく成ってしまっていく。


 農業・漁業・林業などもそうだが製造業も日本を守るためには切り捨ててはいけない分野だし日本は島国でもあるのだから海運や空輸についてはもっと大事にしなければいけないことをもっとテレビを通して国民へ知らせていくべきなんだろうな。 

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