第68話 来月には遊☆戯☆帝のTCGの発売と週間少年ホップでの新連載が始まるようだ

 さて、俺たちは伊邪那美様に感謝の気持を捧げるため、新宿の新大久保に有る夫婦木神社で伊邪那岐様と伊邪那美様の御札をもらい、神棚などを一式購入して会社に設置してお祈りをした。


 そうしていたら後ろから俺たちに声がかけられた。


「あ、部長!

 こんな所に居たっすか」


 振り返ってみると、そこに居たのは高校時代のゲーム部初期メンバーの一人である明智さんだった。


 そして一緒に朝倉さんや最上さん、千葉さんに足利さん達も居た。


「うわ、懐かしいメンバーだね。

 一体どうしてここへ?」


 俺がそう聞くと明智さんは誇らしげに胸を張りつつドヤ顔で答えた。


「自分は部長に報告したいことが有るからっすよ」


「まあ、俺がゲーム製作部の部長を引退して随分経つんで部長って呼ばれるのはなんか微妙に違和感が……」


「じゃあ、シャチョーサンって呼べばいいっすか」


「そのクラブとかのおねーちゃんから呼ばれるようなイントネーションはなんとかならないのかな?」


「んじゃ、前田取締役社長!」


「あ、うん、じゃあとりあえずそれで。

 で、報告したいことってなんだろう」


  俺がそういうと明智さんはにっと笑っていう


「来月の遊☆戯☆帝のTCGの発売と週間少年ホップでの漫画の新連載、それから袋とじでの紹介が決まったすよ」


「おお、それは間違いなく朗報だね。

 週間少年ホップの影響力はマジででかいし。

 でも、バランス調整には苦労してみたいだけどどうやって解決したんだい?」


「そのあたりは兄貴の知り合いのTRPGとかボードゲームが好きな人たち大勢に声をかけてもらって人数を確保したっす」


「ああ、基本的にTCGはTRPGの戦闘を細かく数値化ルール化したような感じだからね。

 TRPGプレイヤーならなんとなく理解しやすかったんだろうね」


「そうっすね。

 お陰でだいぶ駄目だしされたっすけど」


「実際にTRPGもTCGもバランスをとるのは難しいんだよな。

 まあ、バランス調整が難しいのはアナログゲームに限らないんだけど」


 実際にTCGの公式試合で使用してはならない禁止カードや枚数制限される制限カードなどはなくならなかったしな。


 かく言う俺もジュエルス3のバランス調整には苦労してるしな。


「まあ、それでもそこそこバランスは取れたと思うっす。

 というわけで頑張った自分に美味しいもんでもおごってほしいっすよ」


「もちろんそれは良いけど、わざわざそのために新宿までみんなで来たの?」


「新宿は女子一人で出歩くのは危ないって聞いたっすから」


「まあ、東口の歌舞伎町近辺から新大久保方面は確かに、ホストクラブの客引きやら風俗なんかのスカウトやらなどが声をかけてきたりするし、ナンパ目的の男も声をかけてきたりするって聞くからそれなりの人数で来たのは正解かもな

 まあ、西口は普通のサラリーマンや学生しかほとんど居ないけど」


「そうっすね、案外普通のスーツの人とかしか居なくて拍子抜けしたっす」


 そこで北条さんが俺に言う。


「実際にあなたが任せた仕事をきちっとやり遂げたのですからもっと褒めてあげたり、食事を振る舞ったりしても罰は当たらないと思いますわよ。

 それはともかく丁度よい機会ですし、東大で知り合った面々なども呼んでみんなで飲食会をするとしましょう」


 といって北条さんは会社の電話を使って上杉さん・斉藤さん・浅井さん・長谷部さん・篠原さんを呼び出してライジング本社に呼んだ。


 ついでに店の予約も入れているらしいのはさすがの手際だよな。


「今日は高校時代のゲーム制作部の皆さんが本社に来てくださりましたので、みんなで北京料理でも囲んで飲食を楽しみましょう」


 というわけで皆でタクシーに乗り、南口の高級北京料理店の前で降りる。


 そして店に入って受付で北条さんが言う。


「予約した北条ですが」


「はい、予約承っております。

 こちらへどうぞ」


 と案内されたのは回転式の円形テーブルの有る個室だった。


 俺・北条さん・上杉さん・斉藤さん・長谷部さん・篠原さんの東大組と明智さん・朝倉さん・最上さん・浅井さん・千葉さん・足利さんのゲーム制作部組では面識がないメンバーが多いんでそれぞれを紹介していく。


「長谷部さん・篠原さん。

 こっちのメンバーは俺の高校時代のゲーム制作部の1年生の時からの仲間。

 朝倉さんはゲームの音楽や効果音を担当。

 最上さんは一枚絵を担当。

 浅井さんはキャラボイス担当でアニメの声優とかもやってる。

 明智さんはTRPGとかの非電源なアナログゲーム担当。

 千葉さんは厳密にはゲーム部メンバーじゃないかったけど、班分けが同じで仲良くなったのがきっかけで、ダンスゲームのダンスの動きを担当することになった。

 足利さんは北条さんのサポートで海外との交渉担当とかをしてくれたたんだ。

 ちなみに斉藤さんはシナリオ担当で北条さんはゲーム会社への売り込みなんかの担当」


 俺がそういうと長谷部さんはうなずいて言う。


「なるほどゲームの制作というのは分業で行うのだな。

  メンバーが女子ばかりなのは前田らしいが」


「別に俺が意図的にメンバーを女子ばかりにしたわけでもないんですけどね。

 最初のメンバー集めは北条さんにお願いしましたし」


 俺がそういうと北条さんが言う


「まあ、私達の高校は元は女子校でしたので普通科や商業科は女子の方が多かったというのが大きいのですわ」


 それを聞いて長谷部さんは苦笑しつつ言う。


「なるほどなぁ。

 まあそういう事情ならそうもなるか」


「で、ゲーム製作部のみんな。

 長谷部さんは俺のクラスの一個上の二年生で、篠原さんは俺と同じクラス。

 二人共東大の入学直後のオリエンテーション合宿って言うイベントで仲良くなったんだ」


 そして北条さんが付け加える。


「長谷部さんには東大のことやサークルのことなど色々教わってりますし、篠原さんは私や斉藤さんのかわりに彼と一緒に居てもらって、下心のあるような女が近づけないようにしていただいております」


 それを聞いた朝倉さんがうなずいて言う。


「妥当な判断だと思うです」


「相変わらず朝倉さんは俺に厳しいよな」


 俺がそういうと明智さんも言う。


「自分も妥当な判断と思うっすよ。

 一緒の班になったから仲良くなったってそれだけじゃないっすよね?」


 明智さんの言葉に俺は苦笑しながら答える。


「まあ、バスの席が隣だったのと、その時篠原さんがジャージ姿で荷物も殆ど持ってきてなかったっぽいから色々買ってあげたりしたんだけどね」


 俺がそういうと篠原さん箱を赤くしている。


「うう、恥ずかしいです」


 しかし、浅井さんは真面目な顔でいった。


「なるほど、なんとなく私と似ている気がしましたがそういうことだったのですね」


 そんな話をしていたらまずは前菜からテーブルに乗り始めた。


 クラゲの冷菜にピリ辛のよだれ鷄・カモの燻製だが、よだれ鷄や鴨の燻製はめちゃくちゃ美味かった。


 その次はフカヒレの醤油煮込みでフカヒレは美味しいが、スプーンでほろりと解け少しドロッとしすぎかな?


 まあ今まで食べたことはないのでこんなもんなのかもしれないけども。


 上海蟹は色鮮やかなオレンジの味噌がめちゃくちゃ美味かった。


 その次はここの店の売りらしい北京ダックだが、皮だけを食べる香港式と異なり、本場の北京ダックで中までじっくり火を通した肉がついている。


 それが花巻に自家製甜麺醤、白髪ネギが一緒に巻かれたものとヤーピンに自家製甜麺醤キュウリ、紅芯大根、サラダ菜を一緒に包んで。皮だけでなく肉も挟まってるのだがうんこれも美味い。


 さらに伊勢海老の香味揚げは少し辛いけど揚げたてで美味しいな。


 さらにワンタンスープと締めのマンゴープリンでもう腹いっぱいだ。


 みんな食べ終わった所で北条さんがおもむろにいいった。


「さて、前田さんが明智さんや三好くん・織田くんなどにゲームの制作を任せているように、私も私が抱えているものを皆さんにおまかせしたいと思っています。

 具体的に言えばまず出版関係及び映画化などを含めたものは斉藤さん・最上さん・千葉に任せます。

 それぞれの担当としては小説などの文芸作品やその実写映画化などは斉藤さん。

 絵本や漫画、そのアニメ化作品などは最上さん。

 雑誌関係は千葉さんに担当していただきます」


 それを聞いて三人は少し考えていたがまずは斉藤さんがうなずいた。


「まあ、妥当なところだと思うし私は構わないわよ」


 そして最上さんが聞く。


「それには海外の絵本などの翻訳なども含まれるのでしょうか?」


 それに対しては北条さんがうなずいて答える。


「ええ、そのあたりはおまかせしますわ。

 ただし翻訳は東大生でやりたい方なども居ますので、そのあたりは心配しなくても大丈夫ですが」


「なるほど、それでしたら私も構いません」


 そして千葉さんだが。


「私がそんな役を任されて良いのかなっって感じもするけど、まあ受けるのは良いよ」


「これで出版関係は任せられますわね。

 それから山田音楽機の楽器などについては朝倉さんにおまかせしたいと思いますがいかがでしょう?」


「まあ、妥当な人選だと思うですしいいですよ」


「浅井さんにはレコード会社や芸能プロダクションなどの差配を頼みますわ」


「えええ……私でできるでしょうか?」


「大丈夫だと思いますわよ。

 アイドル声優も無事できているのですし」


「じゃ、じゃあ頑張ってみます」


「篠原さんには宗教法人事業で、幼稚園や老人ホーム運営、乳児院と児童養護施設の管理をしていただこうと思います」


「わ、私もですか?」


「ええ、これらの施設は利益を出すことではなく入所者と労働者が快適な場所にすることを優先していただきたい二で」


「う、は、はい頑張ってみます」


「長谷部さんは東京四洋電機を任せるということでいいですわね」


「ああ、まあ頑張ってみるさ」


「それから足利さんには海外とのやり取りの補助を任せたいと思います」


「私は今までとあまり変わらないということですね」


「そうですね。

 あと私の学校については妹の麗華に任せる予定です。

 今後も授業を任せられそうな人が見つかり次第権限を移乗しておくつもりですわ。

 まあ、あまりにも経営状態が悪くなったりした時は、首のすげかえをもありますのできちんと経営や人事は行ってください。

 それと上杉さんはリゾートやグルメ関係のとうかつをしていただきますが今現在前田さん位よりの営みについての手ほどきもしていただいています。

 そして、おそらく彼の子供を妊娠しているようです。

 まだ確定ではないのですが。

 そして女の子を産んだ暁には将来優秀な婿養子をとって事業を引き継いでいく予定です。

 これは私や妹も同じようにする予定ですが皆さん位もできれば同じようにしていただきたいと思っていますわ。

 無論無理だというのであれば普通に仕事の出来る方と結婚していただいても構わないのですが、いずれにせよ将来優秀な婿養子をとって事業を引き継いでいくようにはしていただきたいですわね」


 さすがにこの発言にはみんな固まっている。


 しかし長谷部さんはふっと笑っていった。


「まあ、その件も話は聞いてるから私は構わないよ。

 大企業を一つ任させるかわりの条件としてはさほど理不尽という訳でもないしね」


 そして上杉さんも言う。


「まあ、のリかかった船ってやつだし、行き遅れになるよりはずっとマシだからな」


 流石に他の女の子たちは長谷部さんや上杉さんのようにはすぐに納得はできないようだけど、とりあえず話は終わったらしい。

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