第64話 やっぱり東大女子用の住居の確保は急務だな

 さて、東大に対しての地方学生や女子学生の問題点についてだが、まず最初に話題として出たのは東京から離れた場所に住んでいると、基本的に女の子が上京して一人暮らしをするということ自体に両親が難色を示しやすいということ。


 そして、東京・神奈川・埼玉・千葉など比較的東京に近い場所ですら、浪人は許されないということだ。


 浪人ができないことに対しての問題解決は難しいが、女性は大学を出ても働く先がないから大学に行かせる理由がないという事については、俺達ライジングのグループで積極的に女性を採用して行くことで対処していくしかなさそうだ。


 また、佐賀と北海道の帯広に再生工場都市を設置してほしいという話も出たが、それもやることにした。


「東大卒業後の進路の問題はライジングで雇用の受け皿を作りつつ、ライジンググループの幹部候補と東大を卒業した女性で見合い相手も探すなどして対処するしかなさそうかな」


 俺がそういうと北条さんはうなずいた。


「結局はそうなりますわね。

 短大に入学することに比べて東大に入学することが女子にはメリットがないというのであれば、メリットを作り出していけば良いわけですわ。

 そのために私達で多くの業種の買収を進めていたというのも有るのですか?」


 北条さんがそう聞いてくるが俺は苦笑して答える。


「まあ、今後になるべく雇用できる人を増やしたかったのは事実だよ。

 けど、東大女子を幹部候補生として迎え入れるためにとまでは考えてなかったけどね」


「ですが、無駄に歳だけ取っている、内部での派閥争いしか頭にないような、無能な男の経営者はほとんど首にしましたし、幹部候補もそれなりの人数は必要だと思います。

 ですので、ちょうどよかったと思いますわ」


「まあ、そうなんだよな」


 そして篠原さんが再び手を上げて言う。


「それと住む場所の問題はもっと深刻です。

 正確に言えば深刻でした……ですけれど。

 私達は浪人も私大の滑り止めの受験も許されませんし、遠いので予め住む場所の下見をしておくということも難しかったです。

 ですので合格発表の3月10日に合格できたのを確認してから慌てて部屋を探すわけですが、地方に比べると東京は家賃や敷金礼金が高すぎですし、安いところはトイレ共用風呂なしみたいなところばかりでした」


 それには長谷部さんが申し訳無さそうに言う。


「ああ、うちらみたいな学校は推薦入学できれば2月には合格がわかるし、OGから良いマンションやアパートを扱っている不動産の情報も有るし、近場だから下見も簡単だし、卒業する先輩から空いた部屋を譲ってもらえるし、そもそも親が裕福なんで家賃が高くてもなんとかなるしな。

 まあ男ならトイレ共用風呂無しで洗濯機が部屋の外の玄関脇に置くしかないようなアパートでも問題ないんだろうけど」


 二人の言葉に俺はうなずく。


「男の場合は最悪浪人しても東京で部屋を借りて、良い予備校に通うとか滑り止めの私大に入るとかもできるしな。

 それはともかく地方女子が上京して一人暮らしをさせるのが心配っていう話に対しては、セキュリテイのしっかりしていてキレイな女子寮を早急に建てて、ライジングで働けそうであればうちらの寮へ入れる。

 バイトもライジングから斡旋して、水商売とかの怪しいバイトに手を出さないで良いようにするでいいかな?

 もっとも寮に入れられる人数は今は一学年あたり200人で一年生から四年生に加えて大学院生で1000人で考えていたけど、一学年あたり300人にして全学年で1500人にしたほうが良いかな?」


 俺がそういうと篠原さんがうなずいた。


「はい、そのくらい受け入れられる方が良いかと思います。

 あとそれを地方の偏差値上位の高校へ周知させて、学校の生徒の親などが納得できるようにしていくことも大事かと思います」


「たしかにそうだな。

 それも含めて英米の昼ドラソープオペラのような、家族問題や社会問題を織り交ぜ、出演者の入れ替えを繰り返して展開してゆく昼の時間帯のドラマを制作したり、小説なんかを書いていくことも進めようか。

  例えば東大に入学して、綺麗な女子寮に入って、バイトをして接客で笑顔をできるようになり、エステや美容室できれいになって、薬学部を卒業したあと、大きな病院の薬局に入って、仕事を頑張り、若手のホープの内科医に見初められて結婚するみたいな話はどうかな?」


 俺がそういうと北条さんはうなずいた。


「そういったお話であればそこまで現実離れはしていないと思いますし、それなりに受け入れられるとは思いますわ」


「まあ、現実の北条さんをモデルにしたほうが現実離れした話になるだろうしね」


 俺がそういうと斉藤さんが笑いながら言った。


「それはそうよね」


 それを聞いた北条さんが斉藤さんに言う。


「あなたも大概人のことは言えませんわよ。

 それはともかく今のお話を小説なり脚本にすることはできます?」


 褒章さんがそう言うと斉藤さんは困ったような表情で言う。


「それは難しいわね。

 今はファンタジースター2にかかりきりだし」


 それを聞いて手を上げたのは深美さんだ。


「では、それは私に任せていただければと思います」


「深江さんは科類が理Ⅱだし、将来は薬剤師志望かな?」


「はい、なのでおおよそ私が将来の設計図として描いているものと同じになります。

 本当は製薬会社で新薬の研究をしたいのですが……」


 深江さんの言葉を聞いて俺は言う。


「俺達は製薬会社も持ってるからやりたかったら新薬の研究もできるよ。

 実際にHIVウィルスの増殖を止めるための方法を編み出してる実績も有るしね」


「え?!

 そうなのですか?」


「うん、それにこれから高齢者の認知症や寝たきりは大きな問題になるから、それに対応できる薬の開発は急いだ方がいいとも思うから、ぜひやってほしいかな」


 未来でも認知症を治療する薬はないはずだが、ボケの進行を遅らせる薬は有るはずだ。


 そして興味深そうに言う女の子が居た。


「なるほど、ボケを治す、あるいは症状の進行を遅らせる薬ですか」


 そういったのは理Ⅲの多賀さんだ。


「うん、多賀さんは将来は医師志望かな?」


「ええ、そのための理Ⅲです。

 ですが、現状の外科医優遇のなんでも切る医療は正しくないとも思っています。

 実際にアメリカでは、ガンに対して免疫療法や食事療法を取り入れることでガン患者を減らしていると聞きます」


「ああ、免疫療法は患者さんがもともと体内に有している免疫細胞を培養・加工してがんを攻撃する点から、大きな副作用はないし、食事も大事だって聞くな」


「ですのでボケに対する療養にも西洋医薬だけではなく、漢方薬や食事療法、身体的リハビリテーションなども重要になってくるかと私は思っています」


「なるほど、そうしたら深江さんと多賀さんで、まずは薬剤師のドラマを、それが行けたらそれに続く医療ドラマの脚本を書いてもらえるかな?」


 俺がそう言うと二人はうなずいた。


「わかりました」


「ええ、お任せください」


 そして北条さんが言う。


「実際に私達はすでに病院と製薬会社を持っていますし、再生工場都市には大学に付随して大学病院も建設する予定です。

 地方は高齢者が多いはずですから、ボケに対処するのは早いほうが良いでしょうね」


「だな。

 ああ、それと今の話とは直接関係ないんだけど、今現在ソ連は崩壊に向かっていて食糧事情なんかは酷く悪いらしい。

 肉や乳製品は一般人じゃ手に入らないし、野菜はじゃがいも、ニンジン、キャベツ、玉ねぎぐらいしかなくて、それも何時間も待ってようやく手に入る程度って聞く。

 なんで、北海道とかの保存が効くように加工した肉類やバターやチース、ジャガイモや玉ねぎ、小麦やトウモロコシ、あとはビートを加工した砂糖なんかを輸出して食料事情の改善に繋げたい。

 そうすれば日本の農業も促進できるしな。

 肉やチーズは、共産党幹部専用の特別店でしか手に入らない、超高級品だって聞くから良い肉とかなら高く売れるともおもう。

 で、ロシアでテレビやラジオの放送枠を買い取るなどしてライジンググループの食料支援について大々的な宣伝を行い、オリンピックの強豪国であるソ連の選手やコーチを引き抜いて東大に招聘したい。

 陸上・体操・レスリング・重量挙げ・カヌー・バスケットボール・バレーボール・スピードスケートやフィギュアスケート・アイスホッケーなんかでは無類の強さを発揮していたからね。

 野球はパワーと瞬発力が大事だから、そういった競技が強い国には見習うところがあると思う。

 あと、可能ならソ連が商用稼働に成功してる高速増殖炉の設計をした科学者や、いざという時に離島に人を運ぶための軍用ヘリなんかもほしい。

 誰かできないかな?」


 俺がそういうと最初に手を上げたのは松平さんだった。


「で、では私にやらせてください。

 その代わり、牛肉は佐賀の佐賀牛も使っていただければと思います」


「佐賀牛か。

 確かブランドとしては最近だったけど、関西ではかなり評判がいいんだよな」


「は、はい、そうなんです。

 でも、明治以来の歴史のある松阪牛や阿蘇牛と違い、知名度がまだまだですし、美味しさを知って貰う機会がほしいんです」


「なるほど、じゃあ斉藤さんのクラスの牛串に佐賀牛を使ってみるのもありかな。

 今はまだバカ高い値段じゃないだろうし、味が良ければ新宿の牛串屋で継続して仕入れてもいいし」


「は、はいぜひお願いします。

 その代わり頑張りますので」


「野菜や肉、乳製品を輸出すると言うなら私達もだまっていられませんね」


「ええ、北海道だって佐賀には負けない牛肉もあるってことを示さないとね」


 そういうのは北海道出身の大音さんに三田村さんだ。


「んじゃ、二人にも頼もうかな」


「それならば私も」


「私も挑戦したいです」


 そういったのは外務省へ入省したいといっていた山崎さんと、大手商社入社希望の玉井さんだ。


「ん、了解。

 みんなで協力してうまくやって欲しい。

 ロシア語と日本語ができる通訳で、科学者にコネが有る人とかにカネを払うなら、高めに払ってもいいからね」


 こんなふうに外国語を苦にしない優秀な人材がたくさんいるのはありがたい。


 可能なら北方諸島の二島返還だけでも先に進めて、ソ連崩壊時には東欧にも人を派遣したいし、残りの二島も返還させつつ、樺太は独立させ、日本の同盟国とかにもしたいけどな。

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