第59話 テニパの女子のエステなどに関しての北条さんの許可も取れたよ

 さて、長谷部さんの部屋に連れ込まれた俺は、五月祭でのテニパの模擬店について相談を受け、それに対してメイド軽食喫茶を提案した所、客引きをする女子にエステや美容室にいかせてやってほしいと言われて承諾した。


 しかし、俺が想像していたより参加人数が増えそうで、金も結構掛かるし、北条さんに同席してもらったほうが良いかもしれないな。


「あー、結構金がかかりそうなんで、うちの会社の金庫番である、北条さんを呼びたいんで電話を借りていいですか?」


 俺がそういうと長谷部さんは快諾してくれた。


「ああ、それくらいなら全然構わないよ」


 というわけで長谷部さんの部屋の電話を借りて、北条さんへ電話をする。


『もしもし?』


「あ、もしもし北条さん?」


『ええ、そうですが、なにか御用でしょうか?』


「うん、今長谷部さんの部屋にいて、ちょっと話をしてるから、来てくれるかな?」


『わかりましたわ。

 今行きます』


 というわけで電話を切って、しばらくして北条さんが部屋にやってきた。


「呼び出してごめんね」


 俺がそういうと北条さんは、”はあ”とため息を付いた後、俺達に聞いた。


「男女が二人っきりで一体何の話をしていたのですか?」


 それを聞いた長谷部さんがニヤッと笑っていう。


「おや、気になるのかい?」


「ええ、まあ、気にはなりますわね」


「あー。

 先にいうと別に男女が二人きりだからって艶っぽい話はなにもないよ」


 長谷部さんのその言葉に北条さんは苦笑してうなずく。


「ええ、そうでしょう。

 私の部屋にこの人が来たときも仕事の話ばかりで、私がキスを促してようやくしてくれたくらいですので。

 問題はどの程度お金がかかりそうなお話なのかですわ」


「ああ……まあ、そんな感じだと想像はつくよ。

 話自体は五月祭でのテニパの出し物のアイデアについてだけどね」


 と長谷部さんは今まで俺達が話したことを北条さんへ説明した。


「なるほど、つまりテニパの模擬店でメイド喫茶をやるために女子に対してメイドの衣装やエステや美容室の費用が必要ということですわね」


 北条さんがそう言うので俺はうなずく。


「うん、金は俺の預金から出してもらって良いんだけど、多分そこそこの金額にはなるし、北条さんにも話を聞いてもらった上で承諾しておいてもらったほうが良いかなって」


「まあ、私としてはあなたがそうしたいというのであれば反対はしませんわ。

 それで優秀な東大女子をスカウトできれば儲けものですしね。

 とは言っても幹部候補生として雇うような方以外は継続してエステなどを受けることができるわけでは無いですが」


「まあ、優秀な人はいくらいても困らないよな。

 それは仕方ないだろうな」


「ええ、新宿の本社という新たな拠点の設置もありますし、採用したとしても全員が続くとも限りませんしね」


「ところで男子はスカウト対象外なのかな」


「残念ながら、私が女性であるというだけで、女の下なんかで働けるかという東大男子が多すぎますので無理ですわ」


「ああ、たしかにそういうやつは多そうだな。

 けど、俺なら北条さんみたいな美人で仕事のできる人の下でなら喜んで働くけどな」


「貴方はかなり異常ですから、参考には全くなりませんわ。

 それはともかく長谷部さんにアイデアを出したのなら、私達の理ⅡⅢ文ⅠⅡ合同英語一列G1クラスの模擬店のアイデアもなにか、他のクラスと差別化できるものがほしいのですが」


「うわ、異常ってひどくない?

 まあいいや、英語一列G1クラスって授業中全部英語で会話も筆記もやるんだっけ。

 ならアメリカのフードトラック屋台なんかで出てるメニューで良いんじゃないかな?

 ホットドックや肉系ホットサンドイッチにソフトドリンクの組み合わせとか。

 まあ、ピザとかドーナッツ、チュロスにポップコ-ンなんかでも良いと思うけど、せっかくならいかにもアメリカンな屋台にすれば、日本のお祭りによくある屋台のメニューとは差別化できるんじゃないかな。

 アメリカじゃないけどイギリスの白身魚のフライに、棒状のポテトフライを添えたフィッシュアンドチップスの屋台とかもありかもね」


 俺と北条さんがそんな会話をしていると長谷部さんが会話に割り込んできた。


「あ、そのイギリスの白身魚のフライに、棒状のポテトフライを添えたフィッシュアンドチップスの屋台っていうアイデアはテニパで使わせてもらえないかい?

 テーブルとイスが必要で、食べ終わるまでのタイムロスがある喫茶だけじゃなく、渡したら立って食べられる物もあると回転が早くなるし助かるからね」


 長谷部さんがそう言うと北条さんはうなずいた。


「たしかにそうですわね。

 こちらの屋台ではアメリカ風で統一したいですから、フィッシュアンドチップスはどうぞそちらで取り扱ってください」


「本当助かるよ。

 前田はビジネスのアイデアを出すことに関しては天才的だな」


 長谷部さんがそう言うと北条さんもうなずいた。


「ええ、私もそう思いますわ。

 まあ、アイデアを実行に移すのは私ですし、プライベートだと結構ポンコツな所も多いですが」


 長谷部さんはそれを聞いてふっと笑った。


「まあ、それはなんとなく分かるし、まああんたらが割れ鍋に綴じ蓋的なお似合い夫婦ってのは確かだな」


 北条さんはそれを聞いて照れながら言う。


「まあ、お似合い夫婦だなんて、照れますわね」


 そこへ俺がツッコミを入れる。


「北条さん。

 プライベートだと結構ポンコツな所も多いですがっていうのも含まれてるし、全面的に褒められてるわけじゃないと思うよ」


 俺の言葉に北条さんは膨れてみせた。


「そ、そんなことはわかってますわ」


「それはともかく、億まではいかないにせよ、エステや美容室にコスチュームで千万単位くらいはかかると思うけど、良いんだよね」


「ええ、私達の会社からの東大女子へのアピールと考えれば高くはありませんし、構いませんわ。

 テレビCMで社員募集を出せば時間帯にもよりますが本来はそれくらいかかりますしね」


「まあ、俺達テレビ局も持ってるから、ゴールデンタイムにCMを流したとしても制作費だけしかかからないどな」


「まあ、確かにそうではありますが、テニパの二年生やあるいは引退した先輩も含めて、優秀な女子を重点的に集められる可能性があるのですから良いではありませんか」


「まあ、そりゃそうだな。

 んじゃあ、長谷部さんそういうことで俺達はテニパの売上アップに協力するんで、その代わり北条さんの仕事を手伝ってくれそうな人がいたら声をかけてくれるかな?


 俺がそういうと長谷部さんはうなずいてくれた。


「ああ、それくらいお安い御用さ。

 というかかかる金額に比べれば本当にそんなことでいいのかい?」


長谷部さんの問いに対して北条さんは言う。


「全く問題ありません。

 お金は優秀な人が増えればいくらでも取り戻せますので。

 ですので必要と思ったらどんどん使うべきですわ。

 それはともかく、長谷部さんにも将来的には日三自動車か、東京四洋電機の経営権や人事権をお渡ししようと思っていますわ」


「ん、それはつまり私が前田の妻の一人になるってことか?」


「ええ、そして女の子が生まれたら、入婿を取ることで代々引き継いでいけるようにしてほしいのですが」


「けど良いのかい、あたしは北条や斉藤、あるいは篠原なんかと違って処女じゃないが」


 長谷部さんがそう言うので俺はきっぱりいう。


「そんなことは全く問題ないですよ。

 あ、今付き合っている彼が居るから無理とかだったら、また話は全然別ですけど」


「今のあたしに付き合っている彼氏が居るように見えるかい?」


 長谷部さんにそう聞かれたので俺は首を横に振る。


「いえ、正直に言えばそうは見えません」


「まあ、その通りさ。

 去年のあたしは中高一貫のフェリスを卒業したての世間知らずの地味な東大女で、ひと足先に大学生活を送り、洗練されているように見える先輩男子にコロっといっちゃったわけさ。

 まあ、オリ合宿のときに履修の時間割の組み方やサークルの選び方とかなんでも教えてくれて、優しくて頼りになるし、お酒も飲めてかっこいいと思ってまあ、うっかり恋に落ちたわけだけど、今思うと相手は世間慣れしてない1年生女子狙いで、ちまちまデートとかして仲良くなった後で7月に肉体関係を持ったら急に冷たくなってさ。

 その理由を聞いたらお前は可愛くないからって言われて随分落ちこんだよ。

 でまあその男は結局インカレの一年の女と付き合い始めたけど、今は本郷に行ったからその女とも別れたんじゃないかな?

 で、まあ可愛くないって言われてしばらくは落ち込んでたけどなら可愛くなってやろうじゃないかって、美容室とかエステとかに行くようにもなったわけさ。

 今思えば可愛くないっていうのは見た目だけじゃなくって性格もだったんだろうけどね」


 そういう長谷部さんに俺は言う。


「ならその男が別れるんじゃなかったって思うくらい、もっと、きれいになって、幸せそうになればいいですよ」


 そうするとにやっと笑って長谷部さんは言う。


「君があたしを綺麗に、幸せにしてくれるのかい?」


「長谷部さんがそう望むならそうするつもりですよ」


 そして長谷部さんはフフと笑った。


「なるほど、君は本当変わってるな。

 まあ、悪くはない気分だし、もっときれいに見えるような化粧の仕方とかもぼちぼち覚えていったほうが良いかもしれないね」


「なら、アイドルとか俳優のメイクアップを担当してるメイクアップアーティストに来てもらって、化粧の仕方とか美容液を使った普段のスキンケアの仕方とかを教わったりとかしたら良いんじゃないかな?」


 それを聞いた北条さんが笑顔で言う。


「それは当然、私や斉藤さん達も同席して良いですわよね?」


「それは当然だよ」


「なら良いですわよ」


 まあ、色々追加になりそうだが、とりあえず話がまとまりそうで良かったかな。


 ドサクサに紛れて長谷部さんが俺の婚約者に加わることになりそうでもあるけど。


「あ、北条さんとかが早くエステに行きたかったら、テニパの女子と行ってきてもいいよ」


俺がそういうと二人は大きくため息を付いた。


「本当に女の扱いは落第点だよな前田は」


長谷部さんがそう言うと北条さんも言う。


「あー、とりあえず上杉さんの所へ行って、今言ったセリフの何が悪かったか聞いて、説教されてきてください」


「あ、う、うん。

 じゃあちょっと上杉さんのところへ行ってくるよ」


 なんか余計なことを言っちまったか、俺。

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