第57話 週が開けてようやく授業開始だがもう五月祭の準備もしないといけない

 さて、長谷部さん班の女子たちをエステや美容室に連れていき、西武百貨店でインポートブランドやDCブランドの服を買って日曜日は終わった。


 そしてようやく今日から授業開始だな。


 いつものように浅井さんが来てくれたら、おはようのキスとハグをしたあと、作ってくれる朝食を食べ、北条さん、斉藤さん、長谷部さん、篠原さんと一緒に上杉さんの運転するリムジンで東大へ向かう。


 下層階に住んでいる元は駒場寮や三鷹寮に入っていた女の子たちも昨日で家電や家具に雑貨や消耗品の類いなど必要なものを買って電車で通学しているはずだ。


 リムジンの中でウキウキした長谷部さんが上機嫌で言う。


「昨日は本当いい一日を過ごさせてもらったよ」


 そして篠原さんも言う。


「今朝、鏡を見たら自分が自分じゃないみたいでびっくりしちゃいました」


 そして北条さんが言う。


「私達も今週はエステや美容室、それに衣服の買い物に行きますからね」


 続けて斉藤さんも言う。


「そうそう、上杉さんや浅井さん、芦名さん、佐竹さんも一緒にね」


 二人の言葉に俺はうなずく。


「ああ、そのあたりは忘れてないから安心してよ。

 同じ学校出身のみんなにも綺麗になって欲しいしね」


 それを聞いた二人は嬉しそうだった。


「忘れていなければよろしいですわ」


「私達だってあなたの婚約者なんだから、他の女の子には負けたくないわよね」


 最近は婚約者のバーゲンセール気味な気はするが、かわいい女の子に慕われるのはもちろん嫌な気はしない。


 そして篠原さん以外のみんなとは分かれて、上杉さんは寮へ戻っていく。


 そしてクラス教室に到着すると、オリ合宿のときに篠原さんと班が一緒だった女子の村井さん、今枝さん、津田さん、成瀬さんたちが嬉しそうに笑顔で篠原さんに小さく手を振っていた。


「みなさん、おはようございます」


「おはようございます」


 と挨拶する篠原さんに続いて俺も彼女たちに挨拶をする。


「やあ、村井さん、今枝さん、津田さん、成瀬さんおはよう」


 彼女たちから挨拶が戻ってくる。


「前田さんもおはようございます。

 昨日は本当にありがとうございました」


「いやいや、約束だったしね。

 俺は約束を守っただけさ」


 そして大槻くん、横山くん、奥村くんらとも合流する。


「おはよう大槻くん」


 俺が挨拶すると大槻くんは少し面食らったようだ。


「前田くん、なんか唐突にチャラチャラした感じになった?

 それにそのすっごく可愛い女の子たちは一体誰だよ」


「え、篠原さんに村井さん、今枝さん、津田さん、成瀬さん

 の俺達と一緒にオリ合宿で仲良くしてた女子たちだけど?」


 俺がそう説明すると大槻くんたちは呆然としていた。


「まじか……イメージ変わりすぎだろ。

 先週までは見るからに地味な文学女子っていうか東大女子って感じだったのに、今じゃインカレの女子大・短大の女子にも全く引けを取らない美女たちじゃんか」


「みんな元々綺麗になれる素質はあったんだよ。

 ただそうなる方法を知らなかっただけ。

 まあ、結構金は吹っ飛んだけどな」


「そうか、金をかけたのか。

 でいくら位なんだ?」


「ざっとまとめると100万円ほどかな。

 エステや服が結構金かかったから、そこそこの出費ではあるよ」


「いや100万はそこそこですむ金額じゃないだろ」


「まあ、みんな嬉しそうだしこれくらいはたいしたことないよ。

 ああ、それからまだ予定だけど三鷹寮は取り壊して運動部やスポーツ系サークル用のトレーニングセンターにするよ。

 秋の六大学野球で最低限最下位脱出できるようにしたいから8月までには強化合宿ができるようにするつもり」


「あ、それは助かるな」


「まあ、こっちは何億あるいは何十億かぐらいはかかるけど、これで東大の運動部の成績が良くなれば安いものだしな」


「いや、億とかかかるなら全然安くはないと思うけどな」


 そして今日からは授業が開始される。


 まあ最初の授業では、授業の概要や単位認定・成績評価について説明されることが多く、特に選択教科はそうだ。


 もっとも必修教科は、いきなり授業を開始する場合もあるらしいが。


 そして鬼や仏といった、教員の評判が流布するようにもなるが、オリ合宿でそのあたりは本多さんから聞いていたので、まあ問題ないと思う。


 それから今日は午後からクラスのクラスコンパで三週間後の土日に本郷・弥生キャンパスで開催される東大全体の文化祭である五月祭のクラスの出し物を決めることになる。


 五月祭は2日間累計で14万人と、名実ともに全国最大規模の学園祭で、来客者の評価を元に、五月祭の人気企画を決定する五月祭総選挙やミスコン、ミスターコンもあり、五月祭は模擬店での酒の提供や飲酒も可能。


 まあ、飲酒が可能な模擬店を出せたり、飲酒ができるのは20歳以上つまりは3年生以上に限られるけども。


 また五月祭では学部、学科や院生による研究発表なども多く学術に関わる企画も多いらしい。


 ちなみにクラスだけではなく、部活や学内・インカレにかかわらずサークルの模擬店出店も可能。


 ただ、インカレサークルは抽選会があり、それに当選しないと出店できないんだが。


 ちなみにテニパは毎年牛串の模擬店らしい。


 こういった串焼きは利益率が高く、牛串の場合は仕入れ値は50円前後で販売価格は400円から500円でいけ、調理スピードも早く、立ち食い立ち飲み可能なので回転率も早いと文句なしなので結構儲かるらしい。


 2日で40万くらいは余裕で儲かるらしいからすげえよな。


 ただまあ五月祭の屋台は品目がカブりまくり、とくに利益がたかいとされる牛串や焼き鳥、たこ焼きや焼きそばの屋台は多いので売れる所もあれば売れないところもあったりするようだが。


 テニパは女子がいるし、今年はめちゃめちゃキレイになってるはずだし、そもそも来場者が多いから、それで客引きすれば、結構売れるだろうけどな。


 本来学祭の五原則・二附則で


 〔五原則〕

 ・ 事故・火事・食中毒等の危険性がないこと

 ・ 非営利的であること

 ・ 本学学生が主体であること

 ・ 期間内に終了すること

 ・ 特定の宗教・政党の宣伝活動の禁止


 〔二附則〕

 ・ 公序良俗に反しないこと

 ・ 企業その他諸団体の宣伝につながる行為の禁止


 とはされているんだけど、まあ全部をまじめに守ってるわけでもないわけだ。


 まあ、テニスサークルの運営は金がかかるから少しでも金を稼ぐための努力らしいけどな。


 しかしまあ、特に一年生のクラス企画はありきたりかつ簡単な品目が選ばれがちなんだよな。


 そりゃ入学してからすぐに学園祭があり、出店のための登録準備期間が極めて短いためしかたないが。


 更に模擬店の屋台には保健所からの指導による制限もあり、さらに調理工程が単純な品目に模擬店が集中しがちだが、東大の学園祭は衛生面・安全面に厳しく衛生面を配慮して、調理工程が1工程までで、包丁の使用は禁止という制限があったりする。


 まあ、素人が寿司を握ったり、生クリームを使って食中毒を起こさせたりしたら面倒なことになるので生物禁止とかはわかるし、包丁も結構切創したりするしな。


 というわけで放課後の新宿の居酒屋でのクラスコンパだが、パ長がリーダーシップを取っている。


 そしていつも通り篠原さん達は俺の周りに固まっているが、今日は他の男子が羨ましげに見ているのが、今までとだいぶ違うな。


 彼女達が可愛くなってからそういう目で見ても遅いんだがな。


「取り合えずクラスの出し物は飲食系屋台で行こうと思うが、何が良いだろうか?」


 パ長がみんなに聞いているが、やはりたこ焼きや焼きそば、串焼きといったありきたりなものが多いようだ。


「あー、みんな良いかな。

 俺が高校一年生のときにやった文化祭の喫茶店での飲み物にタピオカやナタデココを出して、蒸した中華まんじゅうや餃子、焼売なんかと合わせて飲茶の店を出したら面白いと思うんだがどうだろう?」


「タピオカにナタデココ?」


「飲茶?」


「ああ、タピオカにナタデココは台湾とかフィリピンで飲まれたり食べられてるデザートだけど、なかなかうまいぜ」


 台湾では1983年にお茶専門カフェでタピオカミルクティーが発売されて、タピオカの日本への輸入自体も既にはじまっているんだけど、需要はいまだごく少数の中華料理店だけだったりするが1992年に大ブームになったし、2008年と2018年にもブームになった。


 ナタデココはフィリピンの特産品で、パフェとかき氷を合わせたようなデザートである「ハロハロ」に入れるのが一般的な食べ方らしいが、1970年代後半には既に日本でもフルーツ缶に入れた物が一応売られているが、まだまだマイナーで1993年に大流行した。


「ふむ、知らない食べ物だし一度皆で試食して決めたほうが良さそうだな」


「まあ、そうだな。

 高校のときも同じようなことを言われたし、一度みんなで食べてみたほうがいいだろ」


 というわけで一度皆で食べてみることになった。


「じゃあ、あんまり時間もないしこの後すぐでいいかな?」


「ああ、良いよ」


 というわけでクラスコンパの帰りに業務用スーパーで、タピオカとナタデココやみかんなどのフルーツの缶詰を買う。


 そしてクラスで集まって実演する。


「タピオカは茹でるのに時間がかかるからまずはナタデココから行こうか」


 カセットボンベ式コンロで大きな鍋にたっぷりのお湯を沸かし沸騰したらタピオカを入れ、ふたをして弱火で60分茹でながらくっつかないようにして、かき氷にカルピスをかけ、その上にみかんやパインなどの各種の果物や缶詰の煮豆、アイスクリーム、ナタデココを乗せた即席のハロハロを作る。


「まずはナタデココのハロハロだ」


 俺はパ長にそれを渡す。


「なるほど、かき氷の甘味なのか。

 あ、これ美味しいな」


 そして他のクラスメイトにも手渡していくが、ナタデココの食感がいいという人もいれば嫌だという人もいるからこれはしょうがない。


 およそ半数は良いという感じなのだが、後はパ長の判断だな。


「うん、これはいけると思う。

 他のクラスともかぶらないと思うしな。

 とりあえずこれは行ってみよう」


「ん、よかったぜ」


 そしてタピオカをココナッツミルクやミルクティ、烏龍茶に入れて食べた感想もほぼ同じように半々で意見が別れた。


「俺はこれで行けると思うし、今年の模擬店は台湾飲茶で行ってみよう」


「ああ、そうしてもらえると嬉しいよ。

 まあそれはそうとして、どうせならウエイトレスをする時に女子にはカラフルなチャイナドレス姿で客引きや接客してもらうとかどうかな?

 あ、女子が嫌なら普通の格好でもいいけど」


 俺がそういうと篠原さんは笑顔で言う。


「前の私でしたらとても無理ですって言っていた所ですけど、今の私は大丈夫です。

 ぜひやらせてください」


 そして村井さん、今枝さん、津田さん、成瀬さんなども目配せし合った後言った。


「勿論私達も大丈夫ですよ」


「ええ、むしろぜひやらせてほしいくらいです」


 ということで俺達のクラスは女子がチャイナ服でお出迎えする、台湾飲茶もどきになった。

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