第55話 東大女子だってエステで奇麗にかわいくなれるんだよな
さて、翌日の日曜日はオリ合宿の時に俺たちの班と仲良くなった、長谷部さんの班の女子たちとエステや美容院、時間があれば衣服も買う予定だ。
俺は朝の7時に起きて、寝汗を流すためにシャワーをあびてから、洗面で歯を磨く。
その後はいつもだと浅井さんか斉藤さんが朝食を作りに来てくれるのだが、今日はみんながやることがあって忙しそうなので、今日は自分で朝食を作るしかないようだ。
まあ、トースターで食パンを焼いている間にフライパンで目玉焼きを作って、皿に乗せ、目玉焼きにケチャップをかけ、野菜室に入っていたレタスを水洗いした後、水を切って適当にちぎってマヨネーズをかけ、焼きあがった食パンにバターを塗りたくれば、一応朝食の出来上がりだ。
あとは冷蔵庫に入っていた冷たい牛乳をコップに入れれば、まあ全体的にはそこそこ栄養バランスはいいんじゃないかな?
もそもそと朝食をとり、皿が空になったら流しで皿やカトラリーを洗って、それらを水切りに乗せて、しばらく放置する。
服を出かけるように着替えたら、およそ水が切れた皿やカトラリーを布巾で拭いて食器棚に戻す。
そんなことをしていたら8時40分を過ぎたので、部屋を出てみると篠原さんはもう部屋の前で待っていた。
「あ、篠原さん、もう待ってたんだ」
「あ、はい、遅れてしまっては失礼ですし」
「といってもまだ9時の20分くらい前だけどね」
「実は昨日の夜、なかなか眠れなくて寝過ごしちゃったらどうしよう。
ってなってたんですよ。
なんで待ち合わせは少し早めに行っておこうと思って」
「ん、篠原さんはエステや美容室は初めてかな?」
「はい、美容室ってお母さんがもじゃもじゃパーマをかけに行く所ってイメージなのですが」
「あー、それはそれで間違ってないかも。
おばさんがパーマをかけるのは加齢に伴って髪の量が減り、さらに髪の毛が細くなることで髪全体のボリュームが減るのをパーマをあてることでボリューム感を補ってるらしいよ。
男ほどには目立たなくても女も年を取ると髪の毛が薄くはなってくるらしいから」
「うう、そういうのは聞きたくなかったです」
「まあ、若い子でも天然パーマで髪の毛がうねる場合があるから逆にストレートパーマをかけたりもするわけだけど、美容室でトリートメントをしてもらったりすれば、髪のダメージも減っておばさんになってもパーマをかけなくても済むはずだよ」
「そ、そういうものですか」
そんな話をしていたら長谷部さんが部屋から出てきた。
「おう、お前らは早いな」
腕時計を見ると9時ぴったりだな。
「普通は少し早めに待ち合わせ場所には来るもんですから」
「そりゃ電車やバスが遅れたりしたら困るからだろ。
あんまり早くに待ち合わせ場所に行っても、かえって邪魔だったり、ナンパで声をかけられてうざいとかもあるからね」
「ああ、奇麗な女性だとそういう問題もあるわけですか」
「じゃまあ新宿経由で渋谷へ向かうか」
長谷部さんの言葉に俺と篠原さんはうなずいて寮を出た。
新宿まで徒歩10分、新宿から渋谷までは山手線で15分ほどなのでまあ、待ち合わせの9時半にはちょうどいい時間だ。
渋谷の西口を出ると、人がたくさんいるが、女性はやはりギャルっぽい女の子が多い気がする。
原宿から渋谷は若者の街だしな。
そこに黒髪+眼鏡+チェックシャツの男子や地味目の化粧っけなし黒髪女子集団が混じってると大体は東大生だったりするんだが、名門進学校四人組もそんな感じだった。
「みんなお待たせ」
俺が声をかけると皆お辞儀して挨拶を返してくる。
「前田さん。
おはようごさいます」
うん、こういう所はみんななんかお嬢様っぽいよな。
「じゃあ長谷部さんおすすめのエステに行きましょう。
案内をお願いしますね」
「ああ、任せなよ」
俺たちは渋谷駅から歩いて10分強、道玄坂を登って行って、閑静な高級住宅街である松濤の一角にあるエステへ到着した。
ヨーロピアンな外観がすごく素敵なのだが、こんな高級感たっぷりな場所とはなぁ……。
扉を開けると、店長らしい笑顔が素敵なエステティシャンさんが出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ!
皆様お待ちしておりました」
エステティシャンの皆さんは、黒髪で肌の白いとても美しい女性ばかりだ。
エステの中は白を基調とした明るく清潔感のある内装にたいして少し可愛らしい感じの調度品、お香が炊かれているようでいいにおいがする。
「あ、男性は施術には立ち会えませんので、ここでお待ちください。
女性の皆さんは奥へどうぞ」
「あ、了解しました。
会計はまとめて俺がこれで払いますので」
とプラチナカードを取り出して見せる。
これにはさすがに店長らしい人の態度も少し丁寧なものに変わった。
「これはあなた名義のものですね」
「ええ、そうですよ」
「本来は未成年で扶養に入っている場合は親権者の同意書が必要なのですが、あなた様が親権者に扶養されていないというのであれば皆さんの同意書も不要とさせていただきます」
「あ、うん、それなら助かる。
今日はどれくらい時間がかかるんだろう?」
「まず、本日はお試しコースを受けて効果を実感していただき、次回以降はお肌とご予算に合わせたコースを決めていただけます」
「別に予算は一人10万とか20万だったら問題ないけど」
「あ、そしてエステの時間自体は60分程度で施術前後のカウンセリングのお時間も含めますと、約90分間となります。
総合的なものをお求めでしたらブライダルエステの施術120分のカウンセリング合わせて150分コースで6万円ほどですがいかがでしょう」
「うん、じゃあそれで」
というわけで俺はサロンの応接でお茶を飲みながら1時間半ほどボケっと待つことになる。
・・・
エステの施術ルームの室内には静かにヒーリングミュージックが流れているだけで、歩いてそう遠くない渋谷の喧騒など外の音は全く聞こえない。
「みなさんはこちらへと着替えてください」
と女子たち皆へエステティシャンが示したのはガウンと紙パンツ。
「えっと、ほかのものは身に着けていたはダメなのですね」
篠原はそう聞くがエステシャンはうなずいた。
「はい、施術において邪魔となりますので」
みなが一糸まとわぬ姿となった後、ガウンと紙パンツを身に着けると、施術台へ腰かける。
「では、手のひらにパラフィンパックを施していきます。
また足はこちらのたらいへ浸してください」
と、容器に入った液体に手を浸すよう促され、各自は容器に手のひらを浸しながら、たらいへ足を浸した。
「あれ、手のほうは水のようだけど違う?
両方かなりあったかいというか少し熱いくらい?」
「パラフィンパックは蝋のパックです。
あとで簡単に取れるのでご安心ください」
各自は数回容器の中に手のひらを浸けたり、外に出したりした後、ラップのような薄いビニルで手を真空パックされる。
「暖かくて血行が良くなりそう」
「はい、それにお肌がとってもきれいになります。
肌のほかの箇所で気になるところはありますか?」
「ええっと、最近ニキビがちょっと目立って」
「私は毛穴の黒ずみが」
「テニスをしてると日焼けでシミが心配なんだよね」
などと女子が回答するとエスティシャンはうなずいてアロマオイルを用意した。
「これはローズのブレンドオイルです。
女性ホルモンの働きを助け、スキンケア全般に効果があるといわれています。
それでは施術していきますので、ガウンを脱いで施術台へうつ伏せになってください」
皆は指示に従って紙パンツ一枚の姿になって施術台へうつぶせになった。
「では、背中や脇腕のムダ毛処理をした後、お肌クレンジングのためゴマージュをやっていきますね。」
「ゴマージュ?」
「ゴマージュは天然の植物やハーブなどを使ってやさしく汚れを取り除いていくものになります。
それからオイルマッサージに入りますね」
ゴマージュが終わって肌の余分な角質などが取れたところで、肩に蒸しタオルを置いて血行を改善した後、アロマオイルを塗ってのマッサージがはしまった。
肩甲骨付近のリンパを流すだけで肩の緊張による肩こりが取れていき、血流の流れを良くするだけで肌のくすみやむくみも緩和される。
「ん、すごく気持ちいい。
最初にパラフィンパックで手を温めたり、お湯に足を浸したのも血流を良くするためですね」
「はい、その通りです」
施術が終わって皆がぐったりしているとエステシャンから声がかかる。
「皆さん今はされていないようですが、化粧をしたら寝る前にはしっかりとお化粧落としてから寝てくださいね。
お化粧したまま寝るのは肌によくありませんので」
「あ……はい」
そしてみなは服を身に着けて、施術室から出た。
・・・
やがて女性陣が部屋から出てきた。
俺はお茶の飲みすぎでもう腹がタプタプになりかけていたので助かったぜ。
「ん、終わったかな?」
「皆様今回はありがとうございました。
良ければ月に一度は来ていただければと思います」
店長さんがそういうので俺は聞く。
「そのくらいの頻度が一番いいのかな?」
「はい、施術を繰り返すほど体の調子はよくなっていくはずですので」
「ん、じゃあそうするよ。
ほかの女の子もつれてくる予定だからよろしくな」
「はい、こちらこそ」
そして店を出たあと少し放心気味の皆へ俺は声をかける。
「みんなお疲れ」
俺がそういうと篠原さんが笑顔で言う。
「お疲れというか、とっても疲れが取れました」
「ん、みんな一回り顔が小さくなって、姿勢もしゃっきりしてるし、顔の輪郭がシャープになって、鼻の近くの黒ずみとかもきれいに取れてるね。
さすがエステはすごいな」
長谷部さんがフフッと笑って言う。
「今回はブライダルエステ並みの全身フルコースだったしね。
本当助かるよ」
「まあ、これで東大女子だって手間をかければきれいになれるって証明できるしね」
「ああ、これでインカレ女たちをぎゃふんといわせられるよ」
「じゃ、まあ道玄坂の店でランチでも取ってから、美容室に行こうか」
俺の言葉に長谷部さんが言う。
「そうだね。
安めでうまいローストビーフなんかの肉が食べられる店があるから、そこにいこう」
「了解」
というわけで長谷部さんおすすめの洋食店へ向かう。
「いらっしゃいませ、こちらのお席へどうぞ」
と俺たちは大きめのテーブル席へと案内された。
メニューを見るとローストビーフのほかにハンバーグやハラミステーキ、ビーフシチューなどがパンかライスのどちらかとコールスローサラダ、コンソメスープのセットで1000円で食べられるようだ。
「確かに立地を考えるとかなり安いな。
俺はビーフシチューにしてみるか」
俺がそういうと篠原さんは、
「私はハンバーグステーキにしてみます」
そして長谷部さんは、
「あたしはハラミのステーキにするよ」
そして名門進学校四人組はみんな仲良くローストビーフにするようだ。
この店は女性客が多く来ていて、ローストビーフは人気メニューらしい。
出てきたビーフシチューは牛肉と赤ワインの深いコクがめちゃうまだった。
食い終わったら美容室だな。
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