第47話 篠原さんと長谷部さんへ部屋の説明をしたがだいぶ驚いているな

 さて、篠原さん達、駒場寮の女の子三人の荷物を梱包したりなどしてまとめ、上杉さんが借りてきてくれた二トントラックへ積み込んで、タクシーで寮へ向かった俺達だが20分ちょっとで新宿の俺達の寮に到着した。


 そして建物を見た篠原さんが驚いた顔で言う。


「こ、ここが私の新しいお部屋のある建物ですか?」


「うん、夢じゃないから安心してくれな」


 そして長谷部さんも言った。


「思っていたよりずっと良い建物だね。

 こりゃ驚いた」


 俺は苦笑しつつ言う。


「まあ、中を見たらもっと驚くと思いますけどね」


 寺西さんや不破さんも驚いているようだな。


 まあ、あの状態の駒場寮からここへ移動するのは流石にギャップもでかいか。


 タクシーの料金は3500円くらいで電車を使うよりかなり高いが、まあ今更金をケチることもない。


 そして、入り口のオートロックの暗証番号を入力して解除し、空いた自動ドアからエントランスに入るとマンションコンシェルジュの人が出迎えてくれた。


「皆様おかえりなさいませ。

 まずこちらが今度ご利用になられる部屋の鍵になります。

 こちらの二本が最上階のの5号室と6号室でこちらの二本が下層階の二部屋のものになります」


「じゃあ俺は最上階の二本をください」


 俺がそういうとマンションコンシェルジュさんは鍵を二本俺に渡してくれた。


「では私にも一本を」


「私も一本お願いします」


 北条さんと斉藤さんが残りの二本のうち一本ずつを受け取る。


「皆様方がトラックでお運びになったお荷物については、一度私達でお預かりして後ほどお部屋に運ぶこともできますが、いかが致しますか?」


「あ、じゃあ最低限すぐ必要になりそうなものは俺達で持っていきますので、それ以外はそちらでお願いします」


 実際みんなかなり疲れているのでその申し出はすごくありがたかった。


「では、どのお荷物がどのお部屋に運ぶものかわかるようにだけお願い致します」


「あ、了解しました」


 というわけで、布団や衣装ケースなどの荷物はコンシェルジュさんに運んでもらうことにした。


 そして北条さんは寺西さんと一緒に、斉藤さんは不破さんと一緒に部屋へ向かっていった。


「じゃあ、私は車を返してきて、そのまま部屋に戻るぞ」


 上杉さんがそう声をかけてきたので、俺はペコッと頭を下げる。


「すみません、よろしくお願いします」


「まあ、借りっぱなしというわけにはいかんからな」


 そういってひらひら手を振って、寮の外へ上杉さんは出ていった。


「じゃあ、ふたりとも部屋へ案内するよ。

 長谷部さんには鍵を渡しますね」


 俺が篠原さんと長谷部さんに声をかけると二人はうなずいた。


「はい、お願いします」


「ああ、頼む」


「ええと、それで確認だけど篠原さん。

 部屋へ持っていくのはダンボールと座卓だけで大丈夫かな?

 それなら俺は座卓を持ってくけど」


「あ、はい。

 とりあえずはそれだけで、後はコンシェルジュさんに持ってきてもらえば大丈夫です」


「ん、じゃ行こうか」


 座卓を俺が持ち、篠原さんはダンボールを抱えてエレベーターへ乗り込む。


「あ、長谷部さん最上階の15階や最上階専用駐車場の地下一階のボタンはボックスを鍵で開けないと押せなくなってるので、開けてもらえますか」


 俺がそういうと長谷部さんはうなずいてボックスを鍵を使って開けた後に感心したように言った。


「入り口もオートロックの上に、エレベーターも鍵がないと最上階には入れないとは厳重すぎるセキュリティを備えてるな。

 この建物は」


「まあ、元々はジャーニーズの事務所の人気アイドルグループ候補の最有力グループを住まわせるために特注したみたいですからね」


「なるほど、それならこの異様なまでのまでのセキュリティの厳重さも、まあ納得もいくな」


「まあ、その分住みやすさも抜群ですよ。

 家賃も本当ならお高いんだろうけど、部屋の構造が特殊すぎてなかなか借り手が見つからなかったようで、実はそこまでバカ高くはないようです」


「ふむ、なんか引っかかる言い方だがまあ見ればわかるか」


 長谷部さんはそう言うが、この建物の最上階あたりが、まあかなり特殊な構造なほは間違いないんだよな。


 というわけで俺達は最上階の15階へエレベーターで向かった。


「ここの建物は地上15階、地下2階建で地下はスタジオルームのような共用設備、駐車場や貯水タンクのスペースなどがある。

 まあ地下とかは見たことないんでわかりませんが。

 寮の最上階フロアに入ってるのは俺と北条さんに、斉藤さん、後二人はあったことがないけど浅井さんってう声優業をやってる女の子だね。

 メゾネット形式で屋上にあるバーベキューなどが可能な屋上庭園やプールも利用でき、最上階の一階下の共用部にはサウナ付大浴場、ハウススタジオ、フィットネスルーム、シアタールームなどもあるって聞くよ。

 まあ、俺はどこも使ったことないけど女の子たちは使ってるんじゃないかな?

 その他エントランスにはゲストルーム、入り口には防犯カメラなども設置されている。

 最上階の15階ペントハウスは2LDKが9部屋で、部屋にはそれぞれ玄関やキッチンやバス・トイレ・洗面などがあるよ。

 それからメゾネットの14階の共用施設と屋上をすべて含めた場所が一括借り上げで最上階の住人は自由に使用できるが、下の階の人間は勝手には使えないようになってる。

 まあ、ライジングの社員で13階以下に住んでる人達もいるから呼べば使えるけどね。

 その一人が俺達に専属運転手券グルメコンサルタントの上杉さん」


「ほえー、前田さんには専属運転手までいるんですか」


「篠原さんは明日から俺達と一緒にリムジンでの送迎になると思うよ。

 詰めれば後部座席にも長谷部さんも乗れるかな?

 後部座席が無理なら助手席だけど長谷部さんも一緒ですね」


「お、そりゃ助かるね。

 まあ、電車でもそんなに時間はかからないだろうけど」


「本郷キャパスに対してもそんなに距離はないので通学にも買い物にもなかなか便利ですよ」


 俺がそう言うと苦笑しながら篠原さんが言う。


「でも、新宿の駅って迷路みたいですよね」


「ああ、NR同士ならまだいいけどNRから私鉄とか地下鉄に乗り換えようとすると迷うからね。

 そういう場合は新宿での乗り換えとか出口までの移動に慣れてる人と一緒に行動したほうがいいかもね」


 俺がそういうと長谷部さんが笑いながら言った。


「確かに新宿と横浜はNRから地下鉄に乗り換えようとすると慣れてない人間は迷うからね。

 そういうときはあたしにいいなよ」


 そういう長谷部さんに篠原さんはペコッと頭を下げた後言った。


「あ、はい、そのときはよろしくお願いしますね」


 それから俺は説明を続ける。


「住人にはあんまり関係ないけど建物の入り口前には当然防犯カメラは設置されていて、その他にエントランスやエレベーターの中にもあるから関係ない人間が入り込むのはかなり難しくなってる。

 さらに入り口の自動ドアは強化ガラスでできていて、オートロックは暗証番号式なんで二人にも番号は教えておくね」


「あ、はい、お願いします」


 篠原さんがそう言い苦笑しつつ長谷部さんも言う。


「うっかり暗証番号を忘れたら大変なことになりそうだね」


「まあ、そうなると大変なんで、最初はなにかにメモしておいた方がいいでしょう」


「そうだね。

 そうしておくよ」


「それからさっき説明したけどキーが無いとエレベーターで住居階のボタンが押せないようになってる。

 あと、24時間体制での有人管理体制のコンシェルジュカウンターがあって、宅配便の配送や受け取り、クリーニングは、マンションから外に出なくてもできるよ」


「そこまでしてくれるのですか」


 篠原さんが驚いたように言ったので俺はうなずく。


「まあ、そういうのも家賃のうちだろうけどね

 そしてコンシェルジュが郵便物をすべて受け取ってそれを俺達の部屋に送ってくれる。

 それとは別に防災センターには24時間警備員が常駐して何かあったら呼び出すこともできるよ。

 タクシーやハイヤーの手配や花の宅配の仲介なども頼めるらしい。

 後、俺達には関係ないけど13階以下の居住者の共用施設の利用申し込みもこっちでできる。

 キッズルーム施設や13階の眺望ラウンジが人気だってきくな。

 地下駐車場には最上階専用の頑丈なシャッター付き個別ガレージがあるから車にいたずらされるようなこともないはず」


 俺の説明に篠原さんはぽかんとしてるし、長谷部さんは苦笑してる。


「本当に思ってたより豪華すぎるとこに来ちまったね」


「まあ、その分二人には働いてもらうことになるしね。

 特に長谷部さんはけっこう大変だと思う」


「まあ、それはなんとなく予想はつくけどまあ、頑張るさ」


 やがてエレベーターは15階に到着した。


 廊下に敷き詰められたふかふかをみて篠原さんが目を丸くしている。


「ここ、本当に私なんかが住んでいいような場所なんでしょうか」


「それは全然問題ないよ。

 住むのを許可したのは北条さんだし。

 ちなみに一番奥が俺、その手前が北条さん、その手前が浅井さんで、さらにその手前が斉藤さん。

 その手前に篠原さんが入って、その手前を長谷部さんに使ってもらうつもり。

 まあ、順番は逆でもいいけどね。

 じゃあ、まず篠原さんの部屋に荷物を運ぶついでに、部屋のなかの確認をしもらおうか。

 部屋の中の作りは基本一緒だから」


 俺がそう言いつつ鍵を開けて部屋に入ると、二人はうなずいて続いて部屋に入っていく。


「さっきも言ったけど部屋は2LDKで和室6畳が一部屋、洋室6畳が一部屋、LDKが12畳に洗濯用洗剤やトイレットぺーパーなどを置ける棚やトイレ・脱衣所・洗面共用で、ここにトイレ用仕切りのカーテンはあるよ」


「ふええ、広いしすごくきれいだし……」


 篠原さんは呆然としていて長谷部さんもかなり驚いている。


「ああ、こりゃ予想以上に広いな」


「んでバスルームはその奥で分離、据え付けの食器棚付き、二口ガスコンロを置ける大きさのキッチンにシンクもあるけど洗濯機や炊飯器はないから買わないとな」


 俺がそういうと長谷部さんは少し考えた後言った

 。

「洗濯機は私はあるから、引っ越しのときに持ってくるよ」


 長谷部さんがそう言うので俺はうなずく。


「衣料乾燥機があると結構便利なので必要なら言ってくれればそれも買いますからね。

 それとは別に小さめの物入がいくつかと食料置き場がキッチンスペースの奥にある」


「食料置き場って……」


 篠原さんがそう言うと長谷部さんも呆れたように行った。


「ほんとどれだけ広いんだい」


 俺は苦笑しつつ奥にある和室と洋室も見せていく。


「和室の押し入れに加えて洋室のウォークインクローゼットも結構広いんで、吊るすものはウォークインクローゼットに全部吊るせると思う。

 なんで畳んで入れるようなもののためのチェストがあればいいと思うよ」


「確かに、タンスはいらなそうだね」


「まあ、衣料品が多いようなら、タンスは別に洋室においてもいいと思いますが」


「まあ、それはそうか」


「押し入れにあるゲスト用布団は、うん一式揃ってるんで今日はこれで眠ってもいいかな?」


「うーん、ベッドももしかしたらいらないかな?」


「そのあたりはおまかせします。

 布団じゃなくて洋室にベッドで寝てもいいと思いますし」


「まったくもって贅沢すぎる悩みだね」


 笑いながら長谷部さんはそういう。


「まあ、冬は和室に炬燵を置いてもいいんじゃないかって思いますが」


 リビングダイニングには接客用のソファーとローテーブルに電気ポットと冷蔵庫などがあって最低限の寝泊まりには困らないようにはなっているようだ。


 篠原さんは押し入れから布団を出して手をおいてみている。


「うわあ、すごくフカフカのふわふわです」


「それ多分一式で200万円くらいの真綿の布団じゃないかな」


 俺がそういうと篠原さんは絶句していた。


「に、にひゃくまんえん……」


「あ、でも別に最高級品ってわけでもないからね。

 気にせず使ってよ」


「ううう、値段を聞いたら恐ろしくて使えませんよぉ」


 涙目で言う篠原さんに長谷部さんも同意している。


「全く本当にあんたらの金銭感覚はおかしいね」


「いや、篠原さんや長谷部さんもたくさんお金を稼いだらたくさん使うべきって、北条さんに言われるようになると思うよ」


 俺がそういうと長谷部さんは感心したようにいいった。


「ああ、そういう考えなんだな」


「まあ、山程お金を稼いでも貯め込んでいて使わないとお金が回りませんからね」


「じゃあ、今からあたしたちは服を買いに行くから、少し金を出してくれるかい?」


 長谷場さんが篠原さんへ目配せをしたあとそういうので俺はうなずく。


「じゃあ二人に10万ずつお金を渡すから、必要な服とか靴とかとかを一式買ってきてください」


 通れは長谷部さんに20万を手渡す。


「お、話がわかるね。

 じゃあ行くよ」


 長谷部さんが篠原さんに目配せすると篠原さんはコクコクとうなずいた。


「は、はい!」


「じゃあ、篠原さんにも部屋の鍵を渡しておくね」


「あ、はい」


 というわけで鍵を篠原さんに渡したあと、俺達は部屋を後にしたのだ。

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