第45話 善は急げと早速篠原さんたちは寮を退去するため引っ越し準備だ
さて、駒場寮についての補修や立て直しについては、これから教養学部上層部や駒場寮管理自治組合との話し合いになるだろうから、一旦さておいて、篠原さんたちは俺達の住んでいる新宿の寮へ移動してもらうことになった。
「篠原さん。
とりあえず同居してる二人を呼んできてくれるかな?
これまでの経緯と引っ越しの準備をしてほしいことを説明したいし」
俺がそういうと篠原さんはうなずいた。
「あ、はい、わかりました。
ちょっとまっててくださいね」
とそう言って篠原さんは駒場寮の中に入っていった後、女の子を二人連れて戻ってきた。
「あ、君たちが篠原さんと同居してる女の子たちかな?
俺は前田健二。
科類は理Ⅰ、初修外国語はドイツ語。
出身高校は千葉県の千葉経済高等学校。
篠原さんとはオリ合宿でバスの席が隣だったことで仲良くなったんだ。
それで、篠原さんたちが駒場寮に住んでることを聞いたのだけど、今の駒場寮は女の子が住めるような場所にはまったく見えない。
なんで篠原さんは俺達の経営している会社の社員になってもらって、俺達が住んでる寮に引っ越してもらう事にしたんだ。
良ければ君たちも一緒に引っ越ししないか?」
そして北条さんが続いて自己紹介する。
「私は北条精華。
科類は文Ⅱ、初修外国語はイタリア語。
出身高校は千葉県の千葉経済高等学校」
俺は北条さんの自己紹介にちょっと付け加える。
「彼女は俺の高校の時のクラスメイトで部活仲間かつ、俺の持ってる会社の総務や経理の最高責任者だよ。
ゲーム制作以外の殆どの業務をこなしてくれてる。
あ、二人も一応自己紹介してくれると助かる」
俺がそういうと二人は顔を見合わせた後、小さくうなずいて一人ずつ自己紹介を始めた。
「青森県の青森県立青森高等学校から来ました
科類は文Ⅲ、初修外国語はスペイン語。
将来は文学部へ進んだ後、国際線の
そのため現在欧米系の言語を中心の諸外国語を勉強しています。
よろしくお願いいたします」
「お、君はマルチリンガルなんだ。
すごいね」
俺がそういうと北条さんが目を輝かせながら言った。
「こ、これは足利さんに変わって諸外国の交渉に入ってもらえる逸材ですわね。
あなたもうちの会社で雇わせていただきますわ」
北条さんがそう言うが寺西さんはよくわかっていないようだ。
「え?」
「どちらにせよ、あのような廃墟にうら若い女子を入居させるつもりはなかったのですが、私達の会社に入社していただければ給与は十分な金額を保証します。
無論どの程度まで上がるかどうかは実績次第ですが」
「は、はあ……」
まあ、いきなり引っ越せだの雇うだの言われても意味分かんないよな。
「北条さん、相手に考える隙を与えないで強引な契約を結ぼうとする悪徳商法のサラリーマンみたいな方法はどうかと思うよ」
「とはいっても、私としては喉から手が出るほどほしいのです。
今は人材が不足し過ぎていますからね」
「ま、まあそれは分からなくもないけど今の状況だと横からかっさらわれたりはしないと思うよ。
特に経営体質が古い会社は女は結婚すればやめるものと決めつけてるからね」
「全く時代錯誤も甚だしいですわね」
「理Ⅰの女の子の少なさはそういった日本の企業や官公庁に対する女性の不信感の現れだと思うよ。
そういったことは俺達で変えていかないとだめだと思うけど」
俺がそういうともうひとりの女の子がうなずきながら言った。
「全くそのとおりです。
私は新潟県の新潟県立新潟高等学校から来ました
科類は寺西ちゃんと同じく文Ⅲ、初修外国語はスペイン語。
なのでクラスも一緒です。
将来は文学部へ進んだ後、海外の絵本や小説の翻訳家になるのが夢です。
そのため現在欧米系の言語を中心の諸外国語を勉強していますが、会話ではなく文章中心なのが寺西ちゃんとちょっと違います」
その自己紹介に食いついたように斉藤さんも自己紹介を始めた。
「私は斉藤千秋。
科類は文Ⅲ、初修外国語はフランス語。
出身高校は千葉県の千葉経済高等学校よ」
俺は斎藤さんの自己紹介にちょっと付け加える。
「彼女も俺の高校の時のクラスメイトで部活仲間かつ、俺の持ってる会社の経営陣の一人だよ。
ゲーム制作ではシナリオ担当で、正体的には出版社とかの経営責任者を任せようと思ってる」
「そ、そうなんですか?」
不破さんもちょっとあっけにとられているな。
「私もあなたを雇いたいわ。
私のペンパルに海外の作家のタマゴの女の子がいるんだけど彼女のお話はとても面白いの。
それを翻訳してくれたら嬉しい」
「え、あはい、それはぜひともやらせていただきたいです」
なんというかさすが東大、優秀な人材が普通に埋もれてるな。
「最後はあたしだね。
あたしは長谷部絵理子。
科類は理Ⅰ、初修外国語はオランダ語。
出身高校は神奈川県のフェリス女学院中学校・高等学校よ。
サークルはテニスのスポーツ愛好会テニスパートに所属してる」
長谷部さんに対して北条さんが言う。
「長谷部さんにも東大内部での情報収集や情報提供以外に私達の会社での交渉事なども手伝っていただきますわ。
あなたがいてくれたら、交渉事全般がだいぶ楽になりそうですし」
それに対して長谷部さんは笑顔で答えた。
「ん、それも面白そうだね」
そして北条さんが二人に向けていった。
「ともかく篠原さんにお話を聞かせていただきましたが、みなさんも合格発表の後では住む場所が見つからず仕方なく駒場寮に入ったのでしょう?」
北条さんがそうきくと二人はコクっとうなずいた。
「はい、そうなんです」
「それにもしアパートとかが空いていても高すぎて入れないような場所しかなかったですし」
その言葉に俺はうなずく。
「駒場キャンパスに近くて、駅にも近いとかだと月8万くらいは普通にするしなぁ……地方から出てくる学生だけでなく、近隣県でも通学には時間がかかる学生のためにちゃんと寮は整備してほしいよな」
俺がそういうと北条さんは大きくうなずいた。
「全くですわ。
特に女性向けの寮は整備されていないに等しいのはどうにかさせるべきでしょう。
まあ、それはともかく善は急げと申しますし、上杉さんに電話を入れて連絡がつけば早急に二トントラックをレンタカーで借りてきてもらって引っ越ししてしまいましょう。
連絡がつかなければ電車で一度今日は私達の住んでいる寮に向かいゲスト用の寝具などで過ごしていただきますけども、着替え等の宿泊に必要なものはできれば用意していただきたいですわね」
篠原さん達三人はコクっとうなずいた。
「わかりました。
ちょうど合宿で、洗面とかに必要なものは前田さんに買っていただいたので、着替えとかをリュックに詰め直しますね」
篠原さんがそう言うと北条さんがみんなに言った。
「あと、荷物が少ないなら生協の購買部でダンボールや梱包材、ガムテープにビニール紐や軍手などを購入して、荷物の梱包をしておいてください。
後は退寮の報告も必要ですわね」
そう言ってさろうとする北条さんに篠原さんが言う。
「あ、わたしたちの部屋は一番手前の101ですので」
「わかりました」
北条先輩はそう言い残して公衆電話のある場所へ向かったようだ。
「じゃあ、今から引っ越しの準備しますね」
篠原さんたちはそう答えたが長谷部さんは苦笑いをしつつ言った。
「あたしの住居はここじゃない上に荷物も結構数があるから、引っ越しは自分で手配するよ。
まあ、着替えは新宿なり渋谷なりで買えばどうにかなるし、大学生だと2日続けて同じ服を着てるやつも少なくないしな」
長谷部さんのセリフに俺は思わず聞いてしまった。
「え?
そうなんですか?」
俺がそういうと長谷部さんは笑っていった。
「研究室に入り浸ってるやつなんて自宅へ帰らないわ、着替えも持ってないなんてこともザラだよ。
流石にシャワーとかは浴びてるだろうけどね。
後はうちの大学じゃあんまりないが徹夜で麻雀うってただのも珍しくはないね。
まあ、インカレのサークルコンパで酒を飲んだ勢いでインカレ女をお持ち帰りしてホテルで一晩なんてやつもいないわけじゃないが」
「なるほど、大学生だといちいち家に帰らないってことも結構あるわけですね」
「そういうことさ。
いちいち勘ぐってくる暇なやつもそうそういないしね」
「そのあたりは高校までとだいぶ違いますね」
「まあ、そのかわりなにかあっても自己責任ってことになるけどね。
とりあえず引っ越しに必要なものを買いに行こうか。
購買とかの場所も知らないなら案内するよ」
長谷部さんがそう言うので俺はうなずいて答えた。
「あ、そうしてもらえると助かります」
そして俺達は購買へ向かう。
高校までの購買は大したものは扱っていないのだが、東大の購買部はかなりの品物が置いてある。
文房具や食料品にドリンクなどは高校でも扱われているが、日常生活用品・雑貨・スポーツ用品の他に授業で使用する教材用品の実験ノート、グラフ用紙、白衣等、更には切手・ハガキ・印紙に加えて取り寄せだがOA用品・家電・家具なども扱っている。
下手な総合スーパーよりもずっと豊富な品ぞろえだな。
まあ今は引越に必要そうなものが必要なだけだし、OA用品・家電・家具などは割高なのであまり利用はされてないとも聞くが。
ともかくダンボールや紙のガムテープに養生テープ、気泡緩衝材いわゆる通称”プチプチ”にビニール紐や軍手、ハサミやカッター、ビニール袋に新聞などを購入した。
「こんなもんかな?
駒場寮の部屋にはバス・トイレや流しなんかはないんだよね?」
「あ、はい、そういう施設はないです。
そういった施設は全部共用ですね。
食事は基本食堂で取りますし」
「そういうところを合わせて考えても、女子が住むには向いていないよなぁ……それはともかく液体の調味料や台所洗剤なんかで液体漏れすると困るものがなければそんなにビニールで包んだりしなくても大丈夫かな。
食器とかがあれば新聞紙もあったほうがいいけど、それも食堂で食べるならないか」
「ええ、そうですね」
というわけで引っ越し準備で必要なものを購買で購入してから、篠原さんの部屋の前に向かった。
そして、部屋の前についたとたん篠原さん達、三人はとたんに慌てだした。
「あ、すみません。
皆さん少し部屋の外でで待っていてください。
特に前田さんはお部屋の中を絶対覗いたりしないでくださいね」
俺はコクとうなずいて言った。
「あ、ああ、わかったよ。
外で大人しく待ってるさ」
一体突然どうしたんだろうか?
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